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第14話:深海の巨影と冷たい恐怖

俺、佐藤太一、18歳。この呪われたトイレに振り回される生活、もう何度目かの「もう限界だ」って叫びも虚しく、毎回想像を絶する場所に放り込まれる。昨日は幼稚園の運動会で園児の無邪気さに罪悪感マックスだったし、もう可愛すぎる場所は勘弁って思ってたけど……今回は完全に逆方向でヤバい。

今日は昼に食ったコンビニのシーフードカレーが胃の中でモヤモヤしてて、イカの風味がまだ口に残ってる。耐えきれずトイレに駆け込んだ俺は、ドアをガチャッと開けた。瞬間――。

「うおっ、深海!?」

目の前は真っ暗な水の世界。薄い青緑色の光が微かに揺れてて、視界の端で小さなプランクトンがチラチラ漂ってる。耳に届くのは、低い「ゴオオオ……」って水圧の唸りと、時折「ポコッ、ポコッ」と泡が弾ける音。で、俺はいつものように便器ごと、その深海のど真ん中にポツンと浮かんでる。

「いや、マジかよ……大王イカがいる深海でトイレって、怖すぎだろ!」

周りは冷たくて重い水の圧力がビリビリ伝わってくる。便器が微妙に揺れてて、無重力みたいにフワフワしてるのが気持ち悪い。遠くで何か巨大な影が動いた気がして、目を凝らすと――デカい触手がユラユラ揺れてる。大王イカだ。体長10メートルはありそうなその怪物が、赤い目を光らせてこっちをジッと見てる。いや、見えてねえよな?

「見えてるのは俺だけで、向こうからは見えない」ってルール、信じたい。でもこの暗闇、触手がすぐそこまで伸びてきそうな距離だぞ! 水の冷たさが便器越しに尻に伝わってきて、Tシャツが湿気でペタッと張り付いてる。深海の静寂が逆に耳に響いて、心臓の「ドクドク」がうるさいくらいだ。

腹の中じゃ、シーフードカレーのスパイスがグチャグチャ暴れてる。時間がない。こんな不気味な場所で用を足すとか、羞恥心より先に「食われたらどうすんだよ」って恐怖が全身を支配してる。イカの触手がゆっくり近づいてきて、吸盤が「クチュ、クチュ」って音を立ててるのが聞こえる。俺、シーフードカレー食ったばっかだぞ、匂いでバレねえよな!?

「おっ、おっ、おっ……頼む、出てくれ! 早く終わらせて帰りたい!」

その時、大王イカがデカい触手を俺の方に伸ばしてきた。やばい、見つかった!? 俺は慌てて息を止めて固まる。でも触手、俺の頭上スレスレで止まって、何か漂うプランクトンを掴んで引っ込んだ。見えてねえよな……よな? でもその瞬間、水流が「ザバァ!」って動いて、便器がグラッと揺れた。冷たい水が足に触れて、「ひっ!」って声が漏れそうになった。

深海の静寂に紛れて、俺の腹が「ぐぅうう」って鳴った。大王イカの目が一瞬光った気がした。やばい、音でバレる!?

ぷすっ。

「……ミッションクリアー、通常トイレに戻ります」

光がパッと弾けて、俺はアパートの狭いトイレに帰還。換気扇のブーンって音と便器の安定感が、いつも以上に安心する。全身汗だくで、深海の冷たさがまだ肌に残ってる。息を整えながら、俺は呟いた。

「深海って……大王イカの触手が横切る中でトイレとか、恐怖が深すぎだろ……」

考えてみれば、あのイカ、俺のこと本当に気づいてなかったよな? プランクトン掴んだだけだし。でも、あの暗闇と冷たさの中でやった事実は消えねえ。俺のメンタル、もう海底レベルで沈んでるよ。

「ったく、次はどこだよ……もう怖すぎるとこは絶対勘弁してくれ」

シーフードカレーは二度と食わねえと思いながら、俺はトイレのドアをそっと閉めた。でも、次に開けるのがやっぱり怖いんだよな、これ。



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