第11話:長篠の戦場と鉄砲の嵐
俺、佐藤太一、18歳。この呪われたトイレに振り回される生活、もう何度目かの「もう無理だろ」って叫びも虚しく、毎回想像を超える試練が襲ってくる。昨日は遊郭で花魁の艶っぽさに翻弄されたし、もう賑やかすぎる場所は勘弁って思ってたけど……今回は命に関わるレベルだ。
今日は朝に食ったコンビニのチーズカレーパンが胃の中で暴れてて、仕方なくトイレに駆け込んだ。ドアを開けた瞬間――。
「うおっ、戦場!?」
目の前には、煙と血の匂いが立ち込める戦国時代の戦場。鉄砲の「ドドーン!」って音が響き、馬が「ヒヒーン!」って嘶いてる。織田信長の鉄砲隊がズラッと並んで、武田勝頼の騎馬軍団にバンバン撃ち込んでる。長篠の戦いだ。歴史の教科書で見たことあるぞ、ここ! で、俺はいつものように便器ごと、その戦場のど真ん中にポツン。
「いや、マジかよ……長篠の戦い中でトイレって、死ぬだろ!」
周りは槍持った足軽が走り回り、鉄砲の弾がビュンビュン飛び交ってる。すぐ横で武田側の武士が「うわっ!」って叫んで倒れた。煙で視界が悪い中、織田側の鉄砲隊が「撃てー!」って号令かけてる。俺、便器に座ってるだけなのに、戦場の空気が重すぎて息が詰まる。
「見えてるのは俺だけで、向こうからは見えない」ってルール、信じたい。でもこの近さ、鉄砲の煙の匂いまでガッツリ届いてくるんだぞ! こんなカオスな場所で用を足すとか、羞恥心より先に「弾に当たったらどうすんだよ」って恐怖が襲ってくる。ルール上は当たらないはずだけど、心臓バクバクだ。
腹の中じゃ、チーズカレーパンがグチャグチャ暴れてる。時間がない。こんな場所でミッションとか、心が戦場以上に混乱してる。鉄砲の「パン! パン!」って音に混じって、俺は必死に腹に力を入れる。
「おっ、おっ、おっ……頼む、出てくれ!」
その時、武田側の騎馬が突撃してきて、俺のすぐ横を馬がドドドって駆け抜けた。やばい、踏まれる!? 俺は慌てて息を止めて固まる。でも馬、俺をスルーして織田の柵に突っ込んでいった。見えてねえよな……よな? でもその瞬間、鉄砲の弾が俺の頭上スレスレを通過。風圧で髪がバサッてなった。
戦場の喊声に紛れて、俺の腹が「ぐぅう」って鳴った。織田の足軽が一瞬「何だ?」って顔した。やばい、音でバレる!?
ぷすっ。
「……ミッションクリアー、通常トイレに戻ります」
光がパッと弾けて、俺はアパートの狭いトイレに帰還。換気扇のブーンって音と便器の安定感が、いつも以上に平和に感じる。汗だくで息を整えながら、俺は呟いた。
「長篠の戦いって……鉄砲と馬のど真ん中でトイレとか、命がいくつあっても足りねえだろ……」
考えてみれば、あの戦場、俺のこと本当に気づいてなかったよな? 弾も馬も俺を避けてたし。でも、あのカオスの中でやった事実は消えねえ。俺のメンタル、もう戦国レベルでボロボロだよ。
「ったく、次はどこだよ……もう戦場みたいなとこは絶対勘弁してくれ」
チーズカレーパンは二度と食わねえと思いながら、俺はトイレのドアをそっと閉めた。でも、次に開けるのがやっぱり怖いんだよな、これ。