第9話:ヤンデレの部屋と歪んだ視線
俺、佐藤太一、18歳。この呪われたトイレに振り回される生活、もう何度目かの「もう限界だろ」って叫びも虚しく、毎回予想を裏切ってくる。昨日は彩花ちゃんのリビングで心臓止まりそうだったし、もう感情が絡む場所は勘弁って思ってたけど……今回はマジでヤバい。
今日は朝に食ったコンビニのエビマヨパンが胃の中でモヤモヤしてて、仕方なくトイレに駆け込んだ。ドアを開けた瞬間――。
「うおっ、誰かの部屋!?」
目の前には、薄暗い部屋。壁に貼られた無数の写真、机に散らばったメモとハサミ、そしてベッドに座る美少女。黒髪ロングで色白、めっちゃ可愛いけど……その手には俺の写真。で、俺はいつものように便器ごと、その部屋のど真ん中にポツン。
「いや、マジかよ……俺のストーカー!? ヤンデレ美少女の前でトイレって、命が危ねえだろ!」
彼女、名前知らねえけど、俺の写真をニヤニヤしながら眺めてる。「太一くん、今日も可愛いね……」って呟いて、写真に指でなぞってる。壁の写真、全部俺だ。学校の帰り道とか、コンビニとか、どうやって撮ったんだよこれ! しかも「太一くん専用」と書かれた怪しいノートまである。怖すぎる。
「見えてるのは俺だけで、向こうからは見えない」ってルール、信じたい。でもこの距離、彼女の甘い香水の匂いまで届いてくるんだぞ! こんな狂気的な空間で用を足すとか、羞恥心より先に「見つかったら殺されるんじゃね?」って恐怖が襲ってくる。
腹の中じゃ、エビマヨパンがグチャグチャ暴れてる。時間がない。こんな場所でミッションとか、心がパニックで爆発しそう。彼女が「太一くん、私だけでいいよね?」って写真にキスしてる中、俺は必死に腹に力を入れる。
「おっ、おっ、おっ……頼む、出てくれ!」
その時、彼女が立ち上がって、俺の方に近づいてきた。やばい、見つかる!? 俺は慌てて息を止めて固まる。でも彼女、俺をスルーして机からハサミ取って戻った。見えてねえよな……よな? でもそのハサミで写真の周りを切り始めた瞬間、背筋が凍った。
彼女のニヤニヤ顔に紛れて、俺の腹が「ぐぅう」って鳴った。彼女が一瞬「ん?」って顔して、写真から目を離した。やばい、音でバレる!?
ぷすっ。
「……ミッションクリアー、通常トイレに戻ります」
光がパッと弾けて、俺はアパートの狭いトイレに帰還。換気扇のブーンって音と便器の冷たさが、いつも以上に安全地帯に感じる。汗だくで息を整えながら、俺は呟いた。
「ヤンデレの部屋って……俺の写真見ながらニヤつく子の前でトイレとか、ホラーだろ……」
考えてみれば、彼女、俺のこと本当に気づいてなかったよな? ハサミ持っただけだし。でも、あの狂気的な視線の前でやった事実は消えねえ。俺の日常、もう安全じゃねえかも。
「ったく、次はどこだよ……もうストーカー絡みは絶対勘弁してくれ」
エビマヨパンは二度と食わねえと思いながら、俺はトイレのドアをそっと閉めた。でも、次に開けるのがやっぱり怖いんだよな、これ。