敗北
どうして、こうなった。燃え上がる軍艦、消化作業に追われる兵士たち。またしても、日本は"大日本帝国"は負けた。必死に努力した。持てる知識を総動員して作戦を練り、敗戦回避に尽力してきた。敗北を避け、正史で死んだものを助け、必死に努力した。しかし、アメリカの物量には敵わなかった。
「提督、指示を!」
俺の艦隊の参謀長、佐伯太次郎が俺を呼ぶ。目を向けると佐伯は「退艦命令を!」と言う。退艦命令、すなわち船を捨てるということ。俺がするか否か決断するのに、時間はかからなかった。
「退艦命令を出せ!一人でも多く生き残らせろ!」
「はっ!」
1946年3月2日、大日本帝国は無条件降伏し、太平洋戦争は終結した。開戦から3年間における日本軍の驚異的な勝利は、誰にも覆すことのできない、白人の敗北を物語った。戦後軍は縮小され、日本は大日本帝国ではなく、日本国として生まれ変わった。
戦後の日本はイギリスやアメリカの支援を得て、またたく間に復興し、戦前以上の発展を遂げた。しかし、日本は多くのものを失った。戦争は多くの火種を生み出し、大切なものを奪っていった。戦勝国も、敗戦国も今までのような体制ではいられなくなってしまった。
世界に冠たる大英帝国や植民地大国フランスはその殆どの植民地を失い、アメリカでは白人至上主義に対する不満が爆発した。ソヴィエト連邦率いる社会主義国でも民主化が叫ばれ始めた。解放された植民地は次々に独立し、連合を組み、かつての支配者たちに牙を向く。そこには敗戦国の物資や技術が用いられ、世界は混沌へと突き進んでいく。
戦後の約束された平和な世界は戦勝国の望んだ世界ではなくなった。戦勝国は自国をまとめるのが精一杯であり、
日本軍の資料から、ある一人の海軍中将の記録を見つけた。彼は陸軍と強い繋がりがあり、五式中戦車の開発や流星の開発に加え、ミッドウェー海戦、珊瑚海海戦の指揮。誰が見ても軍神であり、天才と言うだろう。大戦の動きを見据えた戦略。実戦指揮能力の高さから、彼は世界の海軍軍人から大提督、あるいは軍神九鬼と呼ばれ、後世に残る英雄とうたわれた。