酒場
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ギルドでクエストを完了した後、俺はガドルに案内され酒場に来ていた。
「へぇ。こんな所もあるんだな」
「ああ、ここは情報収集も食事もできるいい場所だ。雰囲気があるからそういうのが好きな人も集まって人が多いからな」
確かに雰囲気がある。室内を照らす暖かな光に、酒を飲みながら騒ぐ奴ら、うるさいほどの騒ぎ声もここじゃテンションの上がるBGMだ。
「なぁ。酒って、あれほんとに酔うのか?」
「いや、少し頭がふわっとするが深く酔うことはない。だから喧嘩なんかになることは殆ど無い、雰囲気によってるんじゃないか?ああ、でもNPCがどうなってるかは分からんな」
「NPCも混ざってるのか」
「混ざってるというか。ここで騒いでたNPCっぽい奴らを見つけた奴がみんなに広めて知れ渡ったんだ。それにNPCとの情報交換も出来るからプレイヤーの知らないことも時には知れるぞ」
「情報交換ねぇ。なんかいい情報持ってたかな」
「情報は騒いでる奴らから効く以外に、マスターなんかからも買えるぞ。あと、酔ってる奴らはテンション上がってるからこっちから出さなくても勝手に喋ってくれる奴もいる」
そう言われ視線を巡らすと、カウンターの方で真剣に話している人たちが居た。
「あの中の髭を生やした白髪の人がマスターだ。後の二人はプレイヤーかNPCだな。マスターは大抵の情報は持っているらしい。だが有益な情報ほど高い値がつくものだ、聞いたところでは今までの最高額は2万Gらしい。まぁNPCや買ったけど値段の言わない奴もいるからもっと高いのもいるだろうがな」
げぇ。2万Gって装備なんか大体揃うだろ。
「2万Gの情報はなかなかいい情報だったらしい。情報を買ったやつはあっという間に2万Gを稼いで元を取り、さらに稼いでるらしいからな」
「それだけの価値があるってことか」
「ああ、まぁ中には情報をうまく使えずに意味を為さない奴もいるらしいが使いようだな」
「ガドルは買ったことはあるのか?」
「ああ、魔法剣の情報はマスターから買ったんだ。そこそこの値段だったな」
「え?じゃあ俺に教えてよかったのか?」
「いいさ。誘いにも乗ってくれたし、ゴーストで苦戦させちまったしな」
「ガドルがいいならいいんだが・・」
「ま、取り敢えず飯食おうぜ。実際に腹は膨れねぇが満腹度の回復になるし、なによりうまい!」
「そんなにうまいのか?それは楽しみだな。オススメは?」
「俺もそこまで知ってるわけじゃねぇが確実なのは、角兎肉とビビ草の炒めものだな。ピリッとした辛さと肉の旨味がマッチしてるんだ、この辛さがリアルじゃないような類のもので癖になる」
「え、ビビ草使ってるのか?」
「ん?なんだ食ったことあるのか?苦手だったか?」
「いや、麻痺薬の材料だから気になってな」
「安心してください。しっかりと処理をしていますので麻痺はしませんよ」
いきなりの声に驚き目を向けると、さっき話題に上がっていたマスターが立っていた。
「ああ、すみませんね。私、この酒場のマスターのミレアンと申します。珍しいお客だったものですから、つい気になりまして。ビビ草のことをお知りということは、調合師か錬金術師といったところでしょうか?」
「あ、はい。まぁそんなところです」
「それはそれは、小さいのにご立派だ。そちらの方が勧めていたように角兎肉とビビ草の炒めものは当店の自慢の品ですのでぜひご注文を」
そう言ってマスター、ミレアンさんはカウンターの方に戻っていった。どうやら他の客が来たようだ。
「なんだかすごい人だな・・」
「結構フレンドリーというか気安い人だぜ。まぁそうでもなきゃ酒場なんて経営できないだろうがな。さて、マスターも自慢って言ってたし炒めもの頼もうぜ」
「そうだな。楽しみだ」
ーーーーー
数分後、店員さんが二人分の炒めものと飲み物を持ってきてくれた。
「あれ?飲み物頼んだっけ?」
「マスターが驚かせたお詫びといってましたよ?」
マスターの方を見てみるとニコリと笑って返された。本当にいい人だな。
そう思いながら炒め物を口にするとピリっとした辛さの後に甘い肉汁が広がってとても美味だった。飲み物も爽やかな柑橘系のものでさっぱりとしていて食欲を増進させてくれた。
「うまいな。ほんとに美味しい」
「だろ?まじでこれはうまい」
「うん。うまい」
語彙が低下するくらい美味しかった。
ーーーーー
「ふぅ。美味かった。それでガドル、この後はどうするんだ?」
「少し情報を集めていこうと思ってる。ゴーストは現状無理だから、ゾンビ以上に効率のいい場所か。もしくは良い素材のものをな」
「じゃあ、俺もついていこうかな」
「おう、そうしろ」
そう言ってガドルはマスターの方へと歩いていく、なので俺も付いて行くことにする。
「マスター今良いか?」
「おや、あなた達ですか。いいですよ、どのような情報をお求めでしょう?」
「罪人の墓場以上の効率的な狩場か、このあたりで有益な素材のあるポイントだ」
「えらくアバウトですね。まぁ良いでしょう、罪人の墓場以上の狩場は実力的には厳しいと言っておきます。その上で狩場のほうが1万G、素材のほうが8千Gで提供させていただきますよ」
「じゃあ、素材の方を頼む」
そう言ってガドルが8千Gを払おうとするので、慌てて声をかける。
「ガドル、俺も出すよ」
「ん?いや大丈夫だ。ちょっと金は多めに持ってるからな」
「でも・・」
「いいからいいから。じゃあ素材の方も手伝ってくれ、それでチャラだ」
「うーん。まぁいいけど」
「じゃあ、そういうことで。マスター8千Gだ」
「確かに。素材の方でしたね。場所は街の北側、<愚者の洞窟>というダンジョンです。そこにある鉱石がおそらくあなた達の手助けになるでしょう。ちなみにあなた達来訪者にこの情報はまだ売っていないので知っている人は少ないと思いますよ」
「愚者の洞窟ねぇ。難易度的には大丈夫なのか?」
「はい。蟲の森よりすこし高いくらいですので大丈夫かと」
「そうか。ありがとう」
「いえいえ。ではまたご贔屓に」
「じゃあ一旦ギルドにクエストもないか見に行くか」
「分かった」
愚者の洞窟、新しいところは少し楽しみだ。
更新!
満腹度:37% → 100%
所持金:2,255G → 3,255G
<ゾンビ討伐(10/10)> → Clear!




