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MidgardOnline~錬金術を極めるもの~  作者: あおりんご
蟲の森攻略編(前)
28/30

罪人の墓場

 ゾンビの見た目は強烈だ。腐った肉に裂けた隙間から見える骨、目はこぼれ落ち謎の汁を滴らせている。個体によって損傷具合が違うのは凝っているというかなんというか・・。

 そんなことを考えながら崩れかけの顔面に杖を叩きつけることで初めてのゾンビとの戦闘は終わった。


<<腐った肉>がドロップしました>

<<汚れた服>がドロップしました>

<<汚れた服>がドロップしました>


「最悪の見た目だったな」


「だな。ケイは泣いて喚くかもと思ってたんだが、外れたな」


「ガドルこそ、ママに泣きつきたくなってきたんじゃないのか?「助けてママー」ってな」


「言うじゃねぇか。まぁ、あの見た目の御蔭で夜は人が少ないんだけどな」


「なるほど。どおりで戦闘音が少ないないわけだ」


「ま。昼間も数は多くはないがPOPするからそこそこ人もいるんだが、そろそろ皆帰り始める時間だしな」


「好き好んで夜中にゾンビ退治はしないってわけね」


「その通り」


「それにしてもひどいドロップアイテムだな」


<腐った肉>レア度:1

 腐敗が進行した肉。食用の価値は皆無。金銭的価値も皆無。満腹度を10%回復できるが異常状態<食中毒><猛毒>が発生。


<汚れた服>レア度:1

 適正レベル:1 必要ステイタス<なし> VIT+1 耐久値10/10

 謎の汚れがついた服。劣化が激しく服としての機能はほぼ皆無。


「まぁ、ゴミアイテムだな」


 そうガドルは言うが、あんな見た目のモンスターを倒してドロップするアイテムがゴミとか。


「最悪の運営だな」


「激しく同意する」


 だとするとガドルがここに来た理由が気になる。


「なら、なんでここに来たんだ」


「経験値の入りが良いらしい」


「そうなのか?それならこんな場所でも人は来そうだが」


「まだ完全な噂なんだよ。感覚的にこっちで戦った方がレベルアップが早かったってな。大半の人はここの最悪なモンスターと戦わせたい奴らがふざけて言ってることだと思ってる」


「それをガドルは信じたのか?」


「信じたわけじゃねぇ。ただ些細な情報でもアドバンテージが取れるなら試してみるべきだと思ったんだ」


「なるほど。まぁ、いいんじゃないか?」


「そう言ってくれると助かるな。帰っちゃうかと思ったぜ」


「つれて来といてよく言うぜ・・」


「はは、そう言うな。っと、ゾンビさんのお出ましだ」


 仮想ウィンドウに落としていた目を上げれば、確かにゾンビ共が団体さんで来ていた。


「8体か・・。まぁ、やれるだろ」


「勇ましいじゃねぇか。なんか策でもあるのか?それともその杖でぶん殴る?」


「策か・・。そうだな、特別に錬金術の新技見せてやるよ」


「お、そいつは嬉しいねぇ」


 俺はカバンからファイアボールの石ころを3つ取り出した。


「石?そんなもんで倒せるのか?」


「まぁ見てな」


 そう言ってゾンビ共の真ん中あたりに石を投げつけた。

 3つの石が地面やゾンビに当たった瞬間、ファイアボールが炸裂しゾンビどもは炎に飲まれた。運悪く3つ全てのダメージが当たったやつは今ので死んだらしい。ゾンビ相手に死ぬっていうのもあれだが、そうとしか言いようがない。


「こいつぁ、イカれてんな。だが最高だ」


「同じ場所に複数投げたのは初めてだけど、思ったよりいけたな」


 残っているゾンビは4体、半数が先程の爆発で吹き飛んだ計算だ。


「それじゃあ残りを片づけるか。俺も新技見せてやるよ」


 そう言ってガドルは前に出た。そして大きく息を吸い込む動作をすると。


「ウォークライ!」


 そう叫んだ瞬間、ゾンビ共の動きが止まった。


「威嚇技だ。今のうちに奴らを殺るぞ」


 ゾンビに威嚇が効くとはおかしな話だが、それもゲーム故のものだろう。


「了解」


 そう言ってゾンビ共に突っ込んでいく。

 一番に俺が相手をするのは爆発で右腕がふっとんだと思われる個体だ。ガドルの威嚇で動けず、残っている片目だけをこちらに向けている。その哀れなゾンビの眉間を杖で叩き割る。


 このゲームは人型に限りクリティカルポイントが分かりやすい。眉間、首筋、鳩尾、股間、人間の急所と同じ位置を攻撃すれば殆どの場合クリティカルになるらしい。まぁ大抵の防具はそういった箇所を守るように出来ているのでPvPではほぼ使えない知識だがゾンビ相手では違う。奴らに防具なんてものは存在しないので急所を簡単に狙えるのだ。


 その急所である眉間を思いっきり殴られたゾンビはガラス音と共に消えていった。ちらりと横を見ると、どうやらガドルもゾンビを叩き切り1体目を倒したようだ。

 2体目に目を向けるとすでに威嚇が解け始めているのか、普段よりさらに遅くだが動き出していた。

 完全に動く前に、と一気に距離を詰める。ゾンビのゆっくりとした薙ぎ払いを避け杖を鳩尾に突き刺す。が、一撃では倒れなかったようで勢い良く後ろに倒れた。動きの鈍いゾンビに立つ暇など与えるはずもなく、その頭にフルスイングの杖を叩きつけHPを削りきった。

 どうやらガドルも同じようなタイミングで2体目を倒したらしい。


<<汚れた服>がドロップしました>

<<蠢死の骨>がドロップしました>

<<蠢死の脳味噌>がドロップしました>

<<腐った肉>がドロップしました>

<<腐った肉>がドロップしました>

<<蠢死の骨>がドロップしました>

<<腐った肉>がドロップしました>

<<汚れた服>がドロップしました>

<<蠢死の骨>がドロップしました>

<レベルがアップしました>


 お、レベルが上ったな。やっとか・・といった気持ちだ。


「ガドル、俺は早速レベルが上ったぞ」


「お、まじかよ。今、何レベなんだ?」


「7だな」


「すげぇな。俺は昨日の午後からの用事のせいでまだ5だ。威嚇スキルも5レベになってから取ったからレベルも低いしな」


「このゲーム、レベルの上がりが遅いからなぁ」


 そう呟きながらポイントを振っていく。


「ステイタスによるゴリ押しじゃなく、スキルと戦術による戦闘が開発者の理想らしいぜ」


 はは。装備で大幅に底上げしてる俺は完全に理想に反した存在ってわけね。


「まぁ、開発陣の中でも色々と意見が割れたそうだがな」


「パワーによるゴリ押しか、戦術による駆け引きか、どちらも一長一短だな」


「そうだな。で、これからどうする?この辺りで狩るか、奥に行くか」


「奥に行こう。ゾンビに負ける気はしないし、ゴーストも見ておきたいからな」


「じゃあ奥に行くか。だが油断は最大の敵だぞ、ケイ」


「慎重すぎるのも考えものだぜ、ガドル。死んでも戻るだけだ、ある程度は冒険してみたくならないか?」


「ふっ、同感だ」


 そんなことを話しながら墓地の奥へと足を向けた。

更新!

レベル:6 → 7

スキルポイント:4 → 5

HP:+2 120 → 130

MP:+2 215 → 225

STR:18 → 19

石ころ(ファイアボール)*7 → 石ころ(ファイアボール)*4

腐った肉*4 new!

汚れた服*4 new!

蠢死の骨*3 new!

蠢死の脳味噌*1 new!

<ゾンビ討伐(0/10)> → <ゾンビ討伐(10/10)>

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