GMコール
目を開けるとそこには大量のプレイヤー達とNPC、そして西洋風の街並みが広がっていた。
「お〜、すげ〜。ゲームっぽいポリゴン感もないし感覚も滑らか、すごい技術だなこれ」
そう呟いている間も右から左へ、前から後ろへ人が流れるようにして移動していく。全プレイヤー20万人、全てのプレイヤーが同時にログインしていることはないと思うが、それでも大量の人がいる。20万人というとおおよそ東京ドーム4つ分だ。そんな数の人が街に入るのか心配になるが、その必要はない。MOではいくつかのサーバーを同時に稼働させていて必要に応じてシームレスにサーバー間を移動できるようになっているらしい。他にも人の少ないエリアやダンジョンではサーバーは一つになったりしているらしい。
街並みを見ていると違和感があった。なんだか背が低いのだ。
自分が作ったキャラは身長は現実とほぼ同じだったはず。しかし町を見渡すと明らかに自分の身長は他の人と比べて小さかった。視線を落とすと明らかに現実の体長より小さい、小学生低学年くらいだろうか?
「なんだこれ、バグ?GMコールは」
そう思いメニュー欄を探っているとふと違和感を感じた。あるはずのものがない気がするのだ。何がって、そりゃあれに決まってんだろ。
近くの建物の陰に行き探ってみる、ない。ない、ない、ない、ない!上はなぜかある気がしなくもない?つまりこのアバターは女の子だ。おかしいだろ!俺が一週間かけて作ったアバターはどこいった!ふざけんな!
「GMコール、GMコール、あった」
GMコールをメニュー欄から見つけコールする。
「こちらMOサポートセンターとなっております。どのようなご用件でしょうか」
「すみません。設定したアバターと違うんですが」
「え?それは申し訳ございません。少々お待ちください。プレイヤーネームはケイさんでよろしいですね」
「はい」
「確認したところ現在のアバターで決定されているようですが」
「いやサービス開始前から用意していたアバターをそのまま使用しようとしたんですけど、そっちのデータはないんですか?確認してくれれば違いがわかると思うんですけど」
「少々お待ちください。事前登録のアバターに不備があったようですね」
「え?不備って、なにかいけないところがありましたか」
「現実と違う性別は選べないと注意事項に記載していたはずですが、お読みになりませんでしたか」
「いえ、読みました。その上で男性のアバターを作成したはずですが」
「申し訳ないのですが、脳波パターンを計測した結果ケイさんは女性となっているのですが」
「え?俺、男ですよ」
「しかし、脳波パターンの計測で不備が見つかったことはありませんし。まれに性別を偽ろうとする人もいらっしゃるので自己申告で脳波と異なる性別に変更することはできません。現実にどのような影響があるかわかりませんので」
「どうにかできないのですか」
「一応、本社の方に性別確認できる公的書類と使用したVR機器を送っていただいて、後日予定の合う日に本社に来ていただき書類の本人確認とVRの使用者照会を行い認められれば可能です。その際は現在のデータとは違うデータをお使いいただくことになります。該当のVR機器の不具合の可能性も否定できませんので開発部に送ります。別のVR機器をこちらで用意しますのでそれをお使いいただく形となります」
「どのくらいかかるんでしょう」
「およそ一ヶ月、ゲーム内時間で三ヶ月です」
ゲーム内時間で三ヶ月だと、それはデカすぎる。他のプレイヤーに置いてけぼりを食らうだろうし、追加のソフトはまだまだでないので追加プレイヤーとも一緒にやれないだろう。仕方がないこのままやるか、背に腹は代えられん。
「わかりました。でもこのアバターはなんですか、こんなキャラに設定した覚えもないんですが」
「いえ、そちらでそのキャラクターで承認されています。このまま変更はできませんので性別以外の変更なら一旦データを消せばすぐにできますよ」
「ええ、おかしいなぁ」
「では引き続きMidgardOnlineの世界をお楽しみください」
はぁ、まさか初めてやるVRゲームでネカマプレイをすることになるとは。あまりばれないようにしたほうがいいかな、なまじVRなだけに変な目で見られるかもしれん。過度な他プレイヤーとの接触は避けようか。そうだフードをかぶれるんだっけか、かぶっておこう。
ため息を吐きつつなんとなく路地の奥に目を向けると何かが光っていた。
「なんだこれ」と呟きつつ手に取ると
<石ころ>レア度:1
小さな石。
「へぇ。こんなとこにアイテムあるんだ。石ころだけど」
そういいつつ初めてゲットした石ころをカバンにしまう。何気なくしまったが確認したところ、カバンはインベントリと繋がっているようだ。便利だな。
ちなみに初期インベントリは30枠、それにプラスしてカバンの10枠ある感じだ。1枠30個まで入るらしい。
そういえば光っていたのはなんでだ、スキルかな。あるとしたら探索の効果か。そう考えステイタス画面からスキルを選び詳細を確認する。
<探索:1>
「もの探し:Passive」
採取可能なアイテムが見つけやすくなる。
なるほど、やはりこのスキルのようだな。ついでに他スキルも見ておくか。
<錬金術:1>
「錬金術の基本:Passive」
簡単な錬金術を行使できる。
<分解>アイテムを分解しアイテムを作り出す。分解不可のアイテムに使うと塵になる。MPを消費する。
<合成>同アイテムを結合しアイテムを作り出す。MPを消費する。
<最下位錬金>異なるアイテムを錬金しアイテムを作り出す。成功率は高くない。MPを消費する。
<偵察:1>
「イージーステルス」
消費MP4 低レベルなステルス効果を自身に付与する。戦闘行為などを行うと効果は失われる。
「街もそれなりに広いらしいしいろいろ探すか」
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2時間這い回った結果として街中ではイマイチなアイテムが見つかった。
<雑草>レア度:1
そこかしこに生えている雑草。
<汚水>レア度:1
汚れて濁った水。長らく放置されていた飲み水。満腹度を回復できるがHPが減る。
<ウィケストマウスの骨>レア度:1
ウィケストマウスの骨。
まぁ、こんなものだろう。なんせ始まりの街の中だからな。量としては石ころ49、雑草39、汚水28、骨16だ。骨は少しレアかな?知れてるけど。
雑草は違う形の葉でも一纏めだ、鑑定的なスキルがあるのかも。
ステイタスは基本あとがきに記載します。
プレイヤー人数と街の規模についてご意見があったので加筆しました。(17/07/20)
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名前:ケイ 種族:ヒューマン レベル:1
HP 105/105 MP 90/90(+6) 満腹度97% SP:0
STR 10
DEX 10
VIT 11(+1)
AGI 11(+1)
INT 14(+2)
MND 10
LUK 10
スキル(3/3):<錬金術:1>
「錬金の基本:Passive」<分解><合成><最下位錬金>
<偵察:1>
「イージーステルス:4」
<探索:2>
「もの探し:Passive」
装備:右手 :錬金術士見習いの杖
左手 :なし
頭 :錬金術士見習いのフード(胴上のオプション)
胴上 :錬金術士見習いのローブ
胴下 :旅人のズボン(デフォルト)
靴 :偵察者の靴
アクセ1:探索者のカバン
アクセ2:なし
アクセ3:なし
持ち物(8/40):初心者ポーション*5、簡易錬金セット、石ころ*30、石ころ*19、雑草*30、雑草*9、汚水*28、ウィケストマウスの骨*16
所持金:3,000G
所属ギルド:なし