授業の続きと同化
「さて、ここからが本番じゃ。儂の創作した錬金術<変質>について教えてやろう」
そういって師匠はすこしだけシャッキと立ち直した。
「変質は先ほど説明した術とは根本から違う。合成や分解は言わずもがな、錬金すらも到達できない神秘の奥にある。先ほど説明した術は下位から上位へ、上位から下位へ、もしくは性質を増幅し効果を高めるだけで全く異なるものではなく、ある程度元の性質が残っておる。しかし変質はモノを完全に創り変えてしまう、元の性質も材質も構造も何もかもを無視した変化じゃ、時には完全に反転するときもある。
例えばじゃ、この石ころを変質させるとどうなるか分かるか?」
完全に変化するのならば予想もつかない。俺は質問に対して首を振る。
「まぁそうじゃろうな。儂ですら法則を完全には把握しておらん真の神秘じゃ。驚くが良いぞ、変質!」
師匠が術を唱えた瞬間、魔法陣に乗っていた石ころは黒い光に飲みこまれ脈を打ちながらその形を変えていく。
その不気味な様子を固唾を呑んでみていると、徐々に脈は小さくなり、だがしかし完全には収まらずに別の何かになっていた。それは一言で言うなれば肉塊、石ころより少しだけ大きなそれは小さな触手をウネウネを動かし小さく脈動している。
「どうじゃすごいじゃろ。変質はある程度の規則性を持っておるようじゃ。石ころを変質させると確実にこれになる。この生物の名称は<グラミクス>、儂も見たことがないが鑑定をして分かるということはこの世界のどこかに存在するということじゃ。本物も見つけてみたいものじゃ」
「それで師匠。その生き物、なんなんだ?何かに使えたり?」
「そうじゃのう。見たほうが、いや体験したほうが早いじゃろ」
そう言って師匠はいたずらげな表情を浮かべた。
悪寒が走る。とっさに逃げようとするがすでに師匠は俺の目の前に立っていて、グラミクスを持つ手を俺に近づけ・・口に入れた。
吐こうとしたがグラミクスは俺の口に入るなり物凄い勢いで喉の奥へ侵入し、そして気管に入った。
「がはっ、ぐぇっう。ごぅええ、えぅえぅ」
ゲームの中なのに息苦しく、物凄く痛い。体内にある異物が主気管支のあたりで落ち着いた後痛みは殆ど引き息苦しさもなくなった。しかし異物がある感覚はある、それも少しずつだが薄れているようなきがする。
<称号<宿主>を獲得しました>
「かはっ、はぁはぁ。はぁ、な、何するんですが師匠!」
「ははは、グラミクスは害をなさん。マナを扱う生物の器官に入り込み栄養を吸収する代わりにマナの吸収率を格段に上昇させる生き物じゃ。グラミクスは徐々に肉体と一体化しいずれはその身と同化する。そうなれば栄養を吸収はしなくなりただマナの吸収率が高まるようになるのじゃ」
「げぇ。それってあの気色の悪い生物が俺の一部になるってことですよね。最悪だよ」
「これこれ。錬金術師たるもの手段を選んではならん。マナの吸収率が高まるのじゃぞ?お誂え向きの共生生物ではないか」
確かにMPの回復が早くなるのは嬉しいけど見た目があれだからなぁ・・
「それとこれを飲むのじゃ。グラミクスを素材に錬金した薬品でグラミクスの同化行動を促進させ、あっという間に同化する薬じゃ。空腹になるのは研究の妨げじゃからのう、しっかり対策もあるわい」
そう言って師匠が渡してきた薬はとてもじゃないが飲みたいと思えるものではなかった、グラミクスが素材ってだけである程度予想はできたけど。
色は赤黒く、瓶を傾けてみると粘性が強いことが伺える。若干だけど動いてないかこれ?
「ほれ、何をしておる。くいっと行かんか、くいっと」
ぐぬぬ。男は度胸だ。男、榊原圭逝きます!
ぐえええええ。苦い、臭い、まずい、蠢いてる、最悪だ・・・蠢いてる!?なんで薬品が蠢いてるんですか師匠!無駄にネバネバしていて飲み込みづらいので喋ることができず視線だけで文句を言う。
師匠は次の用意をしているのかこちらを全く気にしていない。ちくせう。
なんとか薬品を飲み込むと主気管支のあたりにいたグラミクスがモゾモゾを動き出た。
体の内側で起こる痛いような、こそばゆいような感覚を歯痒い思いをしながら待っているとグラミクスの感覚が完全に消えた。
<称号<宿主>を更新しました>
<称号<魔蟲の同化者>を獲得しました>
「ん?同化が終わったようじゃの」
「胸のあたりにあった違和感が無くなったな」
「ちょいと指先に力を込めてみるがよい」
「ん?んーと、んんんん」
師匠の言う通りに力を込めてみる。ぐぐぐっと力を込めていると・・触手が生えた。ええっ!?
「グラミラスと同化すると使えるようになる技能じゃ。それなりに使い勝手はよいぞ、どこからでも生やせるしの。攻撃を防いだり、物を取ったり、動かずして生活できる」
ニートの考え方じゃねーか!でも確かにとっさの防御には使えるかもしれない。
そう言って師匠は体のいたるところから赤黒い触手を生やしてみせた。
ほんの少し、本当に少しだけ興味が湧いたので両手の指先から触手が映えるのをイメージして力を込めてみた。今度は明確なイメージがあったからかすぐに赤黒い触手が生えてきた。
「どうやったら引っ込むんだ?」
「引っ込めとか消えろと念じるだけじゃよ。ああそうじゃ、ある程度なら問題ないが大量に展開する場合はマナを消費するのでな、気をつけるのじゃよ」
そう言って師匠は触手を消す。真似てみると触手はあっさり霧散した。
「次で説明は最後にしようかの、融合の説明じゃ」
なんとなくわかると思いますが、テオフラウトゥスの得意な錬金術は闇の錬金術です。闇の錬金術は大きな効果を得られる代わりに痛みや代償を伴います。故に禁忌の術とされています。もちろん痛みや代償を術の使用者以外に肩代わりさせる方法もあります。
テオフラウトゥスは割りと、というかかなりの外道です。まぁ痛みを伴う術を使っても投げ出さない主人公も十分素質がありますけど。
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<ステイタス>
名前:ケイ 種族:ヒューマン レベル:5
ステイタスポイント:0 スキルポイント:3
HP 120/120 MP 190/80(+14)[+12]→197/210 満腹度72%
STR 12(+1)[+5] →18
DEX 10 →10
VIT 13(+17)[+5] →35
AGI 13[+5] →18
INT 17(+33)[+11] →61
MND 10(+16)[+4]→30
LUK 10 →10
スキル(4/4):<錬金術:4>
「錬金の基本:Passive」<分解><合成><最下位錬金>
「錬金初級:Passive」<下位錬金>
「テオフラストゥス:Passive」<変質><融合>
<偵察:1>
「イージーステルス:4」
<探索:4>
「もの探し:Passive」
<火術:1>
「ファイアボール:5」
装備:右手 :錬金術士見習いの杖
左手 :角兎の盾(55/70)
頭 :森狼のマジックハット(100/100)
右腕 :なし
左腕 :なし
胴1 :森狼のマジックローブ(140/140)
胴2 :森狼のマジッククロース(140/140)
靴 :森狼のマジックブーツ(80/80)
アクセ1:探索者のカバン
アクセ2:ゴブリンの首飾り(5/10)
アクセ3:なし
持ち物(28/40):初心者ポーション*5、簡易錬金セット、石ころ*30、石ころ*30、石ころ*12、大きな石*1、雑草*30、雑草*30、雑草*29、汚水*12(5%↑)、ウィケストマウスの骨*16、ウィケストマウスの骨粉*1、ケイの下位回復薬*5、ケイの回復薬*1、ホーンラビットの毛皮*17、ホーンラビットの肉*12、ホーンラビットの串焼き*7(25%↑)、ケイの下位回復薬:失敗*2、ボロ布*4、ビックラットの牙*1、ケイの下位回復薬:失敗*2、錬金術士見習いのローブ*1、偵察者の靴*1、テオフラウトゥスの魔法陣*1、ミスリルの釜*1、ユグドラシルの枝*1、ミスリルの筒*1、採血のナイフ*1
所持金:4,250G
取得可能スキル:なし
称号:<座標同期者><テオフラストゥスの弟子><夜目の魔眼><自己改造><ダークアルケミスト><宿主><魔蟲の同化者>
所属ギルド:冒険者ギルド
クエスト[冒険者ギルド(2/3)]<ゴブリン討伐(0/5)><ビックラット討伐(1/5)>
[Extra]<錬金術士・テオフラストゥス>
[ミドガ暦1年1月5日AM1:00][西暦2161年7月19日PM4:20]