第2章 壱の試練〜first step〜
〜妹を失った〜
その事だけが、頭の中にある。というかそれしか考えられない...
俺はショックで1週間学校に行ってない。
ーーーー、なぜ、雅なのか…
なぜ、奪われたのが雅だったのか、未だに分からない…
警察は必死になって捜索しているが、1週間たっても見つからないらしい。
俺は心が折れて、どうすることもできなくなってしまった。
「雅…」
俺はポツリと呟く。
しかし、そんな事を言っても雅は戻って来ない。
恨んだ。雅を奪った奴を恨んだ。
なにか手がかりがないかと思い、雅が消えた場所に行こうとしたそのとき…
扉からノックが聞こえた…
母はいつもノックをせずに入って来る。まあ、俺のことを遠慮しているのかもしれないと思い、俺はドアを開けた。
そこに待っていたのは、母ではなく…
ーーーーーーー、誰?
見た目では人間ではないとすぐに分かった。なにせ妖怪みたいな奴が二足歩行で歩いていたからだ。
俺は、
「何の用だ?」と、少し奴から離れ、そう告げた。
「玄武様がお呼びです」
は?なんのことだ?俺はそんな名前の奴なんか聞き覚えがない。
「申し遅れました。私は異世界案内人、『海伊』と申します。あなたの妹君、琴鳴雅様が異世界の住人に誘拐されたと聞き、ここに参りました。その誘拐人は『妖怪魔』といわれ、とても極悪非道な性格でございます。奴は、我々異世界の住人が入れないように自分自身の城に結界を張り、ある企みを目論んでいます。そこで妹君が奪われ、怒り狂っていそうなあなたを異世界に招待したいのです。もちろん、タダでとはいいません。あなたに奴を倒せるほどの力を、私達と一緒に協力して身につけていただこうと思っております。そのためにはまず、玄武様に会っていただきたいのですが、よろしいですか?」
全く話が頭に入って来ない。
「えと…、とりあえず整理すると、雅を奪った奴を倒せるほどの力を俺に与えてくれると…?」
「はい。そうです。あなたほどなら2週間程度で力に目覚めるでしょう」
「それで、雅を助けられるなら、なんだってする」
俺は真剣な目で彼を見つめ、告げた。
「わかりました。では…」
カチッと変な音がした。辺りが急に暗くなった…
「な、なんだこれは?!」俺は慌てて彼に聞いた。
「これは、人間界の時間を止めさせていただきました。あなたまでいなくなったことが知れたら、大変でしょう?」
まあ、そうか、と、俺は思った…
「では、移動しますね」
彼は呪文を唱えると、異世界への扉を作った。
ーーーーーー!!
気付いたら、そこは異世界だった…
「こ、ここが異世界…」
見たことのない植物がたくさんあった。どうやらここは森の中らしい。
「こちらです」
そこには、亀の形をした大きな扉があった。
ギィ…と、古臭い音がなり、扉が開く。
「よお、遠路はるばるようこそ。俺が『玄武』
だ」
銀の甲羅に杖をついて歩いてくる、1人の老人がいた。
「こちらが玄武様です」と、案内人。
「ああ、よろしく」と、俺は軽々と返す。
「では、早速だが時間がないので、すぐに修行に入ってもらおう」
「で、何をすれば?」
「瞑想だ」
…、え?瞑想?全くわけがわからない。
「なんで瞑想だぁ?理由を教えてくれ」
「まあ、そうくるわな。いいか、俺の言った通りに瞑想をすることによって、『勲章』というものができる。それには色々種類があって、
『炎の勲章』
『氷の勲章』
『風の勲章』
『光の勲章』
『闇の勲章』
『力の勲章』
『幻想の勲章』
が、主にあげられる。まあ他にも特殊なものもあるが、最初からそれが出る者は極めて僅かであるのだよ」
「なるほど…。で、俺はどんな瞑想をすればいい?」
「とりあえず、あそこの『開花の台座』に座り、目を閉じて1日ずっと目を瞑るだけで良い。」
「…、たったそんだけか?」俺はキョトンとして呟く。
「ああ。簡単だろ?」
「おう!じゃあ早速始めようか」
こうして、瞑想が始まった…
ーーーーーーー、1日がたった。
何も出ない…?
「おや?1日では出なかったか。よし、もう1日頑張れ」
「まじかよ…」俺は意気消沈モードになる。
でも、妹を、雅を助けられるなら…
その一心で瞑想を続ける。
ーーーーーーー、2日目。
何かが出てきた。色は黒だ。
「おやおや。珍しいね。これは『力の勲章』だよ」
「これが、勲章…」
「ああ。これで私の試練は終わりさ。次の部屋で、その力を磨いてもらおう」
「次の部屋?」
「ああ。次の部屋では、白虎がお待ちだ。ここで1日休んでから行くといい。あいつの修行はしんどいからな…」
「そうか。そうするぜ」
こうして、泰成の『壱の試練』は終わった…
どうも、らぶもうとです。
今回は第2章ということで、初の異世界でした。
次の章では、『白虎』という、とてつもなく恐ろしい奴が出てきます…
少しグロい?かどうかわかりませんが、今までの平和ボケした様ではないのでご注意を…
では…