094「大阪の天岩戸」
ちょっと重い足取りで家に帰ったら、甥っ子君しかいなかった。
ダンシングマンは友達と飲みに行く、と出て行ったそうです。
私にも連絡欲しかった。
そこで、本日の晩御飯を作り、甥っ子君と2人で食べながら、甥っ子君に行ってみたい場所や食べたい物がないか訊いてみました。
特にないそうです。
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観光目的でなく、家出してきたんだから当たり前か。
なので、とりあえず明日の夜は2人で一番有名なたこ焼き屋に行くことにしました。後は串カツぐらいご馳走しとけば親戚の叔母(予定)さんとしての面子は立つだろう。
んでダンスの1つでも覚えて帰れば多少成長したことになると見た!
……大人になるっていうのは少しずつ純粋さを失っていくということなんだろうな。
ごめんよ甥っ子君。
叔母(予定)さんは汚れきってしまったようだ。
ご飯を食べた後、地図を見ながら待ち合わせ場所を決め、甥っ子君は部屋へ。
私はだらだらとテレビを見て過ごして、ダンシングマンは日付が変わる頃に帰ってきました。
甥っ子君の生活時間やら、私の睡眠時間を考えて欲しいんだけど。
で、翌朝、事件は起こりました。
甥っ子君、まさかのダンス教室ボイコット。意思を表明するためか、お部屋に閉じこもってしまいました。
まあ、別に踊るの好きなわけじゃないんだろうし、行かなくても、と言う私に、ダンシングマンがキレた。
「そうやって逃げ道用意するから甘えるんだ!」
「頭ごなしに甘えだって言うのはおかしいと思う! 行きたくない理由ぐらい聞いてもええやろ!?」
はい、午前7時から怒鳴り合いでございます。
下の人怒鳴り込んで来るんじゃないか?
ダンシングマンはエキサイトしたまま
「お前も黙ってないで自分の意見言えよ!」
はい、実は甥っ子君用のお部屋の前でケンカしておりました。
たぶん、布団にくるまって聞いてない振りしてるんじゃないかな。
「いきなり怒鳴られたら言いたいことなんか言えへんの! 聞く気があるなら普通に話しぃや!」
ダンシングマン、黙った。
……言い負かしてしまった。
すると、部屋の扉がちょっとだけ開いた。
これは天岩戸か?
「体中痛くて頭も痛いからどこにも行きたくない」
ぼそぼそだけど、ちゃんと言ってくれた。
ダンシングマンは不機嫌だけど「分かった」と言ってくれたので、私は岩戸に向かって
「私の仕事終わったら甥っ子君に連絡するから、その時体調良くなってたらたこ焼き行こうね」
と声を掛けて出勤してきました。
……職場のほうが落ち着くっていうのはどうなんだろうか。




