084「能力・開眼」
新人指導も今日を入れて残り2日。
きっぱりお別れ出来るように頑張ります!
今日は事務所内に人が少ない。
取引先にわが社の社名入りカレンダーを配るせいで、この時期は事務所はがらがらになるんだよね。
2人いる部長は商談をまとめる為に外出、社長は弁護士先生に年末のご挨拶。
営業も年末の挨拶アポを必死に取ってたから直行の人が多い。
……もう年末かあ。
年賀状デザイン、決めたのかな。
今年は絵の上手な朋ちゃんがいたからオリジナルだったんだけど。
新人さんに水を向けたけど、「それ、事務の仕事なんですか?」と聞かれ。
いや、挨拶状は営業さんが一人ずつ相手に合わせて作るのが良いと思うけど。
下地になるようなレイアウト図とか用意ぐらいしてあげるのが良いと思います。
S係長みたいにパソコン苦手な人もいるわけだし。
……これ私に回ってきそう。
言われてからバタバタしないように、今からネットで使えそうな無料画像拾っとこう。
で、午後からやって来たまっスン、私に向かって「ネットで遊んでんの?」と訊いてきた。
違うよ、来年の干支画像探してるんだよ、と画面を見せる。
「あ〜年賀状か。俺の分、これに印刷して」
とまっスンは机の中から分厚い年賀葉書(インクジェット対応)の束を取り出した。
「葉書はまとめて印刷屋さんに頼むって言ったのに! 買うなって言われたの忘れた?」
「ごめん! 郵便局員の押し売りに負けた!」
「すみません、僕も」
「え? 買っちゃダメだった?」
篠PとS係長!
おまえらちゃんと社長の話を聞け! 社長の友達の印刷所に頼むって話だったでしょ!?
わーわーぎゃーぎゃーやってたら、新人さんに本日初の降霊がありました。
私も慣れた。
でも帰社直後だった社長がキレた。
「黙れ!」
久しぶりのマジギレで事務所の時間が止まり、電話応対中の本社事務係長も止まってた。
勿論、新人さんに降りてた霊体も止まった。
しばらくの沈黙後、「あ、えー…… 失礼しました。で、書類のお届けは」と本社事務係長が電話復帰。
私も年賀状で騒いでいた自覚もあるし「申し訳ありません」と頭を下げて仕事に戻る。まっスン、篠Pもぼそぼそ謝り着席。S係長も、てへっ♪ と誤魔化して。
で、私の視界の隅を何かが過ったので、手で顔を庇ったらそれは新人さん(に降りている霊)のグーだった。
続けてペン立てを振りかぶってきたのでそれは避けた。
私の新たな能力がついに目覚めたのかもしれない。




