077「個人差が大きい」
山姉さんが、今日はおひとり様で来ました。
差し入れはシュークリーム。凄くおいしいやつ。
コーヒー入れて女2人でコーヒータイム。
「ハルちゃん、同棲どう? うまくいってる?」
初めて2週間目だし、よく分からないんだけど、まあまあです、と答えておいた。
山姉さんは、まあ、そんなもんか、とちょっと笑ってから。
「私、妊娠してるんだよね」
……え?
山姉さん、こないだ彼氏いないし、結婚する気もないって。
一体いつの間に?
「今、2か月と2週間」
相手誰? どんな奴?
出来婚するの?
「先月別れたとこでさ。結婚はしない。相手には何も言ってないし、言う気もないよ」
……えーと。ここから先聞くとしんどくなりそうなんだけど。意を決して。
産むんですかと聞いてみた。
「産む」
キタ━━━(゜∀゜)━━━!!
シングルマザー宣言!
「でさ、ハルちゃんに応援して欲しい」
私で出来ることでしょうか? ち、父親にはなれないですよ!
「私とハルちゃんだったら、私のほうが父親役だと思うけど」
いや、山姉さんのほうが美人だし、話を聞く限り、料理も上手だと思う。ご馳走になったことはないけど。
「じゃなくてね、私は産休と育休とって、すぐに復帰したい。書類とかいっぱい用意しなくちゃいけないでしょ? どうすれば会社に残れるか教えて」
やっぱり!!
でも、私、その手続きの仕方知らないや。
調べておきます。
「あ、具体的に手続き内容分かるまで、会社には内緒にしたいんだけど、いいかな?」
それはたぶん、大丈夫。
たぶん、だけど。
っていうか、手続きを即答出来ない時点で人事関係やってる人間としては失格なんだろうな。
今までは出産を機に退職、って人ばっかりだったから。
営業ってどうしても時間不規則になりがちだし、家庭切り盛りしながら続けるのは難しいイメージあるんだけど。
山姉さんがそうしたいって言うなら、私が止める権利ないし。
いや、それよりも父親は誰?
まさか会社の人じゃ……
「会社の人じゃないからね、言っとくけど」
顔に出てたか。
ごめん、山姉さん。
確か、産休は臨月からだから、まだ半年は猶予がある。
それまでに対応調べて、社長説得しなきゃ。
前例ないことするのは情報と準備と根回しが大切!
全力で山姉さんを応援しま……あれ。
昨日も今日も、コーヒー飲んでるよね? だ、大丈夫なの?
恐る恐る訊いたら、苦笑いしながら、駄目なんだけど今コーヒーとシュークリームの他に食べられる物なくて、と言われてしまった。
しんどそう。
私は手続き関係調べるって約束して、山姉さんは仕事に戻っていった。
考えれば考えるほど、何か大変な話のような気がする。
どうしよう……




