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101/109

101「いくつになっても好奇心があるのは良いことかと」

ダンシングマン実家から、ダンシングマンのおばあちゃんと、義兄さんがいらっしゃいました。


目的は甥っ子君の奪還で間違いないだろうけど。


やって来た義兄さんにダンシングマンは

「今からみんなで水族館行くんだけど」

と平然と言い放ち。


「ジンベイザメ水族館? 一度行ってみたかった」

と言外に一緒に行きたいと示唆するおばあちゃん。


この人達についていける気がしない。


ですが5人で行くことになりました!

見事な呉越同舟です。頑張ります!


行き道では無言で移動しましたが、水族館の中では目の前の魚をネタに話も弾みます。

特に甥っ子君と義兄さん。

甥っ子君は義兄さんに愛想良くはないですが、話し掛けられればちゃんと答えていました。


私は、おばあちゃんの車椅子(水族館が貸してくれた)を押しているダンシングマンと一緒にゆっくり見て周りました。


おばあちゃん、行きたがったわりには静かに見ています。

いや、はしゃぎ回ってても怖いけど。

やがておばあちゃんがポツリと「カミサンに報告に行かんと」と呟きました。


「ジンベイザメ見たことを?」


ダンシングマンが訊くと「阿呆」と容赦ないツッコミがおばあちゃんから入ります。


「ハルさん、ちゃんと挨拶してへんやろ」


おばあちゃん、お見通しです。


「え? こないだ行ったのに?」


ダンシングマンが眉間に皺を寄せています。


確かにダンシングマンの実家に挨拶に行った時、おばあちゃんの忠告通り、神社にお参りしたのですが、私、家族になります、とか、結婚します、とか報告していないのです。


ただ『ダンシングマンがちゃんと幸せになれる選択を出来ますように』とお祈りしたのです。


誰にも言ってないのに!

なんでおばあちゃん、分かっちゃうかな。


じ、神通力か? 実は神様?


「カミサン待ってはるから早よおいでや」


年内には必ずご挨拶に伺います、と私から言いました。

さすがに神様は待っていらっしゃらないでしょうけど。


「早いほうがええ」


おばあちゃんは呟いて、後は黙って魚を見ていました。


ダンシングマンを見ると、ニコニコしていたので、今の受け答えで間違いなかったようです。


何と言うか、ダンシングマンの実家や家系が神様に守られているのではなくて、このおばあちゃんが神様に守られているのではないかと思ってしまいます。

神がかり的な気配を感じる。(零感の癖に)


でもおばあちゃんはお嫁さんとしてダンシングマンの家に入られたらしいので、単に信心深いだけかもしれません。


お昼を少し回ったところで水族館を出て、みんなでお昼を食べ、男性陣が腹ごなしに海沿いを散策している間、私とおばあちゃんは喫茶店でコーヒーを飲みながら私の仕事の話や、おばあちゃんの子供の頃やら若い頃やらの話をして時間を過ごしました。


で、3時頃、義兄さんがそろそろ帰る、と言い出したので、乗り換えの分かりやすい駅まで送ろう、と皆で移動。


すると、甥っ子君が「俺も一緒に帰る」と言いました。


荷物は後で送るよ、と私が言いましたら、甥っ子君、首を横に振ります。


「俺の緊急避難用に置いといて」


なかなか図太い甥っ子です。

将来、大物になるか、ただの図太い人になるか楽しみです。


義兄さんは苦笑しながらその様子を見守っていました。


ホームまで見送りました。

義兄さんはダンシングマンに、何度もお礼を言っていました。

おばあちゃんも甥っ子君も義兄さんも、笑顔で帰って行きました。


ほっとしたのもあるけど、ちょっと寂しいな、とも思って複雑。


何か甘い物を食べて帰りたいというダンシングマンと、喫茶店でぜんざいを食べました。


ダンシングマンに、どうやって甥っ子君を説得したのか訊きました。


ダンシングマンは、義兄さんに、絶対に甥っ子君に「一緒に帰ろう」と言わないように言ったそうです。

それから、甥っ子君の主張に耳を傾け、必ず最後まで聞くこと、遮らないことを心掛けたそうな。


「ハルみたいにする作戦がうまくいった」


ダンシングマンがニヤニヤしています。

私? 何かしましたか?


「なんであいつがハルにばっかり懐くのか、観察して分かった」


ダンシングマン、得意気です。

しかし懐かれていたとは驚きです。


甥っ子君にとって何が良かったのかはっきりとは分かりませんが、ちょっと離れたところにいる大人の話し相手が必要だったのかもしれません。


ダンシングマンは、男子たるもの甘えはいかん、と言う厳しい理念に基づいているのですが、私、それは甥っ子君にとってはもう少し先の話だと思うのです。


甘えられた・目一杯甘えた、という満足感があって、初めて人は厳しさに耐えることが出来るのではないか、と。

甥っ子君は甘えたい時期に甘えてこなかった、遠慮してしまったような気がしました。

今回の家出で、逃げたり甘えたり戦ったりして経験を積むことが出来たのではないかと思うので、ゆっくりで良いから耐えることも学んでいって欲しいと思いました。


あと、どう考えてもカッコ悪い大人に囲まれて過ごしたので、家ではカッコ良い大人を見て欲しいです。


不機嫌な私とか、土下座するダンシングマンとか、お手本にしてほしくない。かなり本気で。

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