表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
93/138

番外編14-6

「モガミお姉さま」

「何してんのよ。こんなところで」

 

 言いながら周囲をキョロキョロ。

 コトミの姿がないのを確認すると、ちっと舌打ちをひとつ。

 

「アンタ達だけなら、声掛けなきゃ良かった」

 

 随分と素直なコメントだ。

 

「わたくし達は、ショッピングですわ。ね、ドルフィーナさん」

「ん。まあ、そんなところだな」

「ふうん。ま、何を隠してるかなんて、アンタ達から聞かなくてもいいし」

 

 アンズ達を押し退け、その先を見やる。

 

「あの子、アンタんとこの無能な泣き虫ちゃんね。随分と気取ったカッコしちゃって。男でも連れ込んでるの? あんな顔してやることだけは、やってるわけね」

「お姉さま、実は……」

「待って。顔を上げたわ。相手が戻ってきたのね。え? マジ?」

 

 嫌悪感を露骨に浮かべた。

 

 そこにやってきたのが、見知った人間。

 ソネザキだったからだ。

 

「あのふたり、まさか。ちょっと! 手繋いで出てったわよ!」

 

 ぞぞっと肩を震わせる。

 

「女子校で変になっちゃう子もいるって聞くけど。まさか、ソネザキが」

 

 そこではっと息を飲んだ。

 

「まずいわ。チームメイトが全員変態だなんて。このままじゃ、コトミに悪い影響が出ちゃうじゃない」

「だ、誰が変態ですの。誰が」

「そうだ。こやつはともかく我は違うぞ」

 

 異議を唱える二人を微塵も意に介さず、「まずいわ。まずいわ」を繰り返しながら、外に向かっていく。

 

「ちょっと、お姉さま!」

 

 呼びかけるアンズの声も届かなかったようだ。

 

「なんか変な方向に勘違いされたではないか」

「仕方ありませんわ。この次会ったら、きちんと説明しておきます」

「モガミ先輩の件はともかく、そろそろ映画の時間だな」

「そうですわね」

 

 アンズが腕時計で時間を確認する。

 

「まさか、館内までついていくとか言わないであろな」

「もちろんですわ」

「それを聞いて安心したぞ。こんな悪趣味な真似は……」

「映画が終わるまで、外で待機しておきますわよ」

「まだ続けるのか」

 

  

                       * * *

 

  

 ぶちゅっと水っぽい音を立てて鮮血が吹き出す。

 

 視線が下りると、真っ赤に染まった体長五センチほどのワームが、次々と腹を食い破って床に落ちた。

 

「ひぃぃ!」


 凄惨な光景にチトセは悲鳴を上げて、隣に座るソネザキの腕にしがみついた。

 

 キリシマがチョイスした映画はスプラッタ系のパニックホラー。

 人間の内臓を食う寄生ワームが、どんどん広がっていくという内容だった。

 

 チトセが恐怖に潤んだ瞳で、すがるようににソネザキを見つめる。

 

 ソネザキは実に平然としていた。

 いつも以上に落ち着いた様子で、スクリーンを凝視している。

 

 私なんかと全然違う。チトセは改めてそう感じた。

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ