番外編14-1
【一〇月二八日】
丁寧に髪を整え、薄いながらもきちんとメイクを施した。
細めのスラックスとシックなジャケットを選び、インナーは少し明るい色の物。
首にはゆったりしたマフラーを巻く。
普段よりめかし込んだソネザキに、驚きを見せたルームメイトの三人だったが、お世辞を差し引いても上々の点数を付けた。
照れつつも気を良くしたソネザキは、足取りも軽くモールの一階。
待ち合わせ場所の飲食店エリアに向かった。
到着は約束の十分前。
ショーウインドウに移る自分の、あまりにらしくない様に苦笑しつつ待つ。
五分ほどが経過した頃だった。
「あの」
遠慮がちな声に顔を向ける。
ゆったりしたオレンジのハーフコートに、ココアブラウンのロングスカート。
胸元から除く純白のセーターが清楚な雰囲気を強めていた。
リップも頬も淡い色が乗り、控え目ではあるが十二分に愛らしい雰囲気がある。
「ごめんなさい。その、待たせてしまって」
どことなくオドオドした話し方は、いつも通りのチトセだった。
「ううん。今、来たところだし。っていうか、チトセも時間より前に来たんだから謝らないでよ」
「でも」
「なんかすごく可愛い格好だね。びっくりしちゃったよ」
ソネザキのひと言に、チトセの顔が真っ赤に染まった。
「あ、ごめん。変な意味じゃないから」
「いえ、あの、その。ソネザキさんも、その、あの、とっても素敵です」
俯きながらゴニョゴニョと告げるが、独り言よりも小さなボリュームになってしまう。
「え? なに?」
「あ、いえ、なんでもないです」
両手を振って前言を散らした。
「で、どうしよっか。映画まで時間あるし。どっかで小物でも見る?」
チトセがこくりと頷くのを確認してから、「じゃあ、行こうか」と踵を返したところで止まった。
「ん、なんて言うかさ」
微かに頬を染めながら。
「一応はデートってことだし。ほら、その、手とか繋いだ方がいいのかな?」
遠慮がちに右手を出す。
一瞬、戸惑いを浮かべたチトセだったが、そっと左手を重ねた。
「なんか、ちょっと照れるよ」
「そうですね。変な感じです」
照れくさい笑みを交換すると、並んで歩き出した。
* * *
一週間前の深夜。チトセの部屋。
「どうして描き直しなんですか?」
バンっとデスクを叩き、語気を強めた。
いつものチトセからは想像できない口調。
瞳には憤りに近い感情が浮かんでいる。
「いや、それがですね」
小型通信端末に映っている青年が、困り顔になった。
「ちゃんと注文通り、二人のデートシーンを描きました。構図も確認した通りのはずです。ちゃんと綺麗に仕上げました。理由を聞かないと納得できません!」
デスクの上に置かれたイラストは、仲睦まじく歩く少年と少女を描いた物。
淡く丁寧に彩色され、細かな背景に柔らかな効果が入れてある。
次作品のノベルのラストシーンだった。
「非常に言い難いんですが、クオリティの問題なんです」




