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番外編12-2

                       * * *

  

 

 翌日、放課後の教室。

 クラスメイト達が下校した頃合を見計らって、三人は隅っこの席に集まった。

 

 ソネザキにマヤとキヌガサである。

 

 マヤは野暮ったいメガネを止めてコンタクトに。

 いつもより明るいリップを塗っている。

 

 キヌガサも髪をアップにまとめ。

 いつもはしないリングとチョーカーを付け、胸元のボタンをふたつ外していた。

 

「誰も気付いてくれなかったよ」

 

 と、マヤ。もう涙目だ。

 

「かなり頑張ったつもりだったのに」

 

 と、キヌガサ。もう鼻声だ。

 

「かなり雰囲気変わったはずなんだけどな」

 

 ソネザキが首を捻る。

 

「コンタクト、すっごい頑張ったのに」

「この格好、かなり抵抗があったのに」

「なんだろうね。魂的なレベルで地味なのかな?」

「た、魂が地味」

 

 マヤとキヌガサが、揃って呟く。

 

「まあ、目立てばいいってもんじゃないしさ。現状維持でいいんじゃない?」

「よくないってば」

 

 申し合わせたように、ふたりが机を小さく叩いた。

 やはりリアクションも地味だ。

 

「あらあら。まだ残っておられたんです?」

 

 甘ったるい声と共に教室に入ってきたのは、担当教官のミユだ。

 

 普段はふわんふわんの髪を、今日はガッチリオールバックに固め、シックなサングラスを掛けている。

 ダークブラウンのパンツスーツに、トレンチコートを羽織り、何故か口にシガレットチョコを咥えている。

 

 今日のテーマはハードボイルドだそうだ。

 

「悩みがあるなら、相談に乗りますよ」

 

 その格好からは縁遠い、トテトテした走り方で寄ってくる。

 

「どうしたんです? ソネザキさんと……」

 

 マヤの方に顔を移して。

 

「えっと……」

「マヤです」

「あ、そうです。マヤさんと……」

 

 キヌガサの顔を見つつ。

 

「カツコさん?」

「キヌガサですけど」

 

 そもそもカツコなんてクラスメイトはいない。

 

「そうそう、マヤさんとキヌガサさんですね。雰囲気が違うので、解りませんでした」

 

 てへっと下を出すミユ。

 

「そんなに雰囲気変わりましたか? 解りますか?」

 

 つい身を乗り出して確認するふたり。

 

「はい。解りますよ。前髪を切ったんですね」

 

 断言するミユに、がっくりと腰を戻す。 

 

「そうだ。折角だしミユ教官にも相談してみたら?」

 

 残酷な展開に同情しつつも、ソネザキは話題を転がす。

 

「ふふふ。話を聞かなくても大体は解りますよ」

 

 サングラスをくいっと上げると、シガレットチョコを指に挟んで、ふうっと大きく息を吐いた。

 

 なんの儀式だろうと疑問符を浮かべる三人に向かって不敵な表情を作る。

 

「愛の伝道師たるソネザキさんに相談ともなれば、もう恋愛関係しかありませんよね。いいですねぇ。若者が青春しやがりやがって」

 

 後半、微妙に妬みの含んだ口調になった。

 

「愛の伝道師?」

 

 マヤとキヌガサが怪しい単語を噛み締める。

 

 一方のソネザキは苦々しい顔つきになってしまう。

 

「ででで、相手はどんな方です?」

 

 ソネザキの隣に座ったミユが尋常ならざる食い付きを見せる。

 

「どこで知り合ったんです? 告白はまだ? 早くしちゃいましょう!」

「違うんですよ、ミユ教官」

 

 ソネザキが遮った。

 空気を読もうとしないミユのペースに引き込まれたら、出口のない異次元迷宮に放り込まれるのと同じだ。

 

「あ、違うんですか。しょんぼり」

 

 律義に擬音を口にして、肩を落とした。

 

「あの、ミユ教官、ふたりの相談なんですけど……」

 

 


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