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番外編12-1

【一一月二十六日】


「やっぱり、イメチェンが必要だと思うの」

 

 黒フレームの野暮ったいメガネに、黒髪セミロングの少女が結論を口にした。

 

「そうだよね。このままじゃダメだよね」

 

 向かい合う少女が同意する。丸顔で愛らしい少女である。

 

 ふたりの少女はリビングのテーブル。

 着衣は特徴のないジャンパーに、シンプルなシャツ。スカートも平凡なプリーツ付き。

 なんとも地味な印象が拭えない格好だ。

 

「私達、絶対にクラスで埋没してるって」

 

 メガネの少女、マヤは断言する。

 

「この前、ミユちゃんに名前間違えられたよ」

 

 ぷっくらとした頬を微かに赤らめたのはキヌガサ。 


 ジミー・ザ・カルテットの愛称で親しまれるクラスの地味担当のふたりである。

 

「アブクマとタカコは諦めてるけど。私達は違うよね」

「今からでも遅くないって。アイデンティティを確立できるよ」

「でも、どうやったら目立てるのかな?」

「それは……。そだ、困ったらアドバイスを求める。これだよ」

 

  

                       * * *

 

  

「目立ちたいって言われてもさ」

 

 寮の廊下、部屋の前。

 

 夕食を終えてのんびりしていたところに尋ねてきたふたりの訴えに、ソネザキは当惑せざるを終えない。

 

「大体さ。目立つとか目立たないとか、どうでもいい話じゃん」

「どうでもよくないよ!」

「そうだよ。どうでもよくない!」

 

 当惑が困惑に変わる。

 

「お願いだよ、ソネザキ」

「ソネザキだけが頼りなの」

 

 両手を合わせて頭を下げるふたり、マヤとキヌガサ。

 その真摯な様子に。

 

「解ったよ。何か考えてはみるけどさ」

 

 と返すしかなかった。

 

  

                       * * *

 

  

「前にもこんなことありましたわよね」

 

 夕食の片づけをしながら顛末を聞いたアンズが、呆れを露にする。

 

 ふたりがリビングに戻ると、コトミとドルフィーナは部屋に戻っていた。

 

 当番のアンズだけが残って食器を洗っていたのだ。

 

「ソネザキさんは人が好すぎです。断るということを覚えないと」

「そうは言うけどさ。私でなんとかできることなら、なんとかしてやりたいと思うだろ」

「まあ、そういうところがソネザキさんらしい。と言えばらしいんですけど」

 

 溜息交じりではあるが、好意的な表情を見せる。

 

「アンズ、何かいいアイデアある?」

「ん。定番ですが、イメチェンくらいじゃありません?」

「やっぱり、そうだよな。それ以外ないもんな」

「まあ、正直なところを言わせて頂ければ」

 

 最後の皿を水切りして、水道を止めた。

 

「生まれ変わるしかないと思いますけど」

「それは言いすぎだって」

 

 

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