表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
137/138

番外編19-10

 ミョウコウからのチョコケーキを食べたはずなのに、甘い物は別腹という乙女の法則は健在。

 次の甘味を求めてしまう罪深さだ。

 

「とりあえず開けてみよう。チトセが手作りしてくれたって」

 

 ソネザキはご機嫌で、包装紙を解いていく。

 

 その嬉しそうな顔にアンズは眉根を寄せてしまう。

 

 ソネザキは何とも感じてないようだが、普通こんな物を贈られたら引くのは間違いない。

 

「うわ」

 

 ソネザキが感嘆を漏らした。

 

 ハート形のチョコにはカラーチョコで天使が描かれていた。

 アニメ調のタッチ。

 瞳を閉じ、柔らかな笑み。

 両腕を胸の前で交差させ、背中にある四対の羽が裸身を包み込んでいる。

 

「チトセちゃんって、絵が上手なんだ」

「上手とか言うレベルではないぞ。プロ並みではないか」

 

 コトミとドルフィーナの絶賛を耳に、アンズは衝撃で固まっていた。

 イラストではない。その下に添えられた文字に、だ。

 

 愛しています。

 

 薄ら寒いひと言。

 背筋を冷たい物が駆け下りる。

 

 確かにアンズ自身も歪んだ感情をコトミに対し抱いている。

 だが、それは恥じる想いではないと断言できる。

 しかし、これは別だ。

 なんというか、生々しい気味悪さがあった。

 

「うわぁ。超凄いチョコ」

 

 いつの間にか半透明の少女が天井付近に浮いていた。

 寮の精霊であるアオバだ。

 あの夜以来、コトミ達の前には気軽に姿を見せるようになった。

 流石のソネザキも慣れてしまうくらいに。

 

「チトセ、頑張ってくれたんだな。なんか食べるの勿体ないくらいだよ」

「しかし、食べないのはもっと勿体ないであろ」

「そうだ。写真撮っておこうよ。ボク、カメラ撮ってくるよ」

 

 自室に駆けていくコトミを見送りつつ、アオバが甘えた声を出す。

 

「ね、私もちょっとだけ貰っていい?」

「もちろん。同居人だしね。五等分しよう」

「やったぁ。今日はついてるな。霊だけについてるなんてね」

「笑えない冗談は言わないでよ」

 

 妙に盛り上がるメンバーを置いて、アンズはまだ固まっていた。

 

 その目は一点。やはりイラストの下に添えられたメッセージを凝視している。

 

 愛しています。

 

 狂気じみた薄笑いを浮かべながら、そう書き示すチトセが想像できた。

 

「アンズ、どうかした?」


 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ