番外編19-05
「はい。ソネザキ、チョコレート」
差し出されたチョコは売店で売られているバレンタイン用のチョコだった。
マヤは可愛い袋でリボン留めされた物。
キヌガサは赤い包装紙で包まれた箱状の分だ。
板チョコの三倍ほどはしたと、ソネザキは記憶している。
「ほら。前にさ、ソネザキにお世話になったでしょ」
「とりあえず、その時のお礼ってことで」
口調の差が相変わらず乏しい。
「いいよ。結局解決しなかったし。自分達で食べてよ」
寮生活はみんな少ないポイントをやりくりして生活している。
寮の外では高が数百円のチョコでも、ここではセレブな嗜好品だ。
「それじゃあ、こっちの気が収まらないし」
「少なくとも水着で登校って罰ゲームは回避されたんだし」
押しつけてくるふたりに、断り切れずに受け取った。
「あはは。ソネザキ、ちょっと照れてる」
「深い意味はないからね」
等と言いながら席に戻っていく。
「しかし、あれだな」
ドルフィーナが気だるそうな瞳で、ソネザキのチョコを眺めながら。
「バレンタインチョコと言うと誰もが想像するやつか。こういうところでも、地味な無個性が発揮されるとは驚きだな」
「酷い言い方してやるなよ」
否定はできないが、とりあえず嗜めておく。
「あのふたりってさぁ。地味以外取り得がないよねぇ」
相変わらず気だるそうにやってきたのはイスズだった。
銃弾を跳ね返すと揶揄されている厚化粧も普段通り健在だ。
「っていうかぁ、ソネザキ、モテモテじゃんかぁ。六つも貰えるなんてぇ、超すげぇって気がしねぇ?」
「六つ?」
板チョコふたつとバレンタイン用のチョコ達を見ながら、訝しげに繰り返す。
「これぇ、ミョウコウからチョコケーキだってぇ」
後ろ手に隠していた紙袋を出しだす。
覗くと箱が入っていた。それなりに大きい。
ケーキだとすると中身は五号くらいだろう。
「チームで食べてってさぁ、試食に付き合ってもらったお礼だってよぉ」
表情を強張らせるソネザキの肩を、イスズがケケケと笑いながら叩く。
「大丈夫だってぇ。今回はチョコケーキ作ろうと思って作ったんだしぃ。着地点が普通の食べ物だったらぁ、ホントに上手なんだよぉ。実際、アタシ達も昨日、試作品食べて美味しかったしぃ」
「それなら安心したよ」
イスズの顔は不調には見えないし、ヤハギとフユツキも健康そうだ。
「でも、なんでイスズが?」




