番外編19-02
チトセが握っていたシャーペンの芯がぺちっと折れた。
「なななななんでそんなこと言うんですか」
顔はおろか耳まで真っ赤になっていた。
「いやだってさ」
解りやすい反応に、口元を緩めながら。
「去年は色々と迷惑掛けたでしょ。嘘デートに付き合ってもらったり。いじけた時に助けてもらったり」
「そ、それは、その、そうですけど。でも、バレンタインチョコとか。そんなの」
「だから、世話になった分を返すって意味だけど」
「そんなことしません!」
ぷっと頬を膨らませて、視線を外す。
「そっかなぁ。ソネザキチームは万年貧乏だから喜ぶと思うけどな」
「そんな事より、早く仕事を片付けてしまいましょう」
強引な軌道修正に、キリシマはそれ以上の言及を避けた。
* * *
キリシマはチトセの性格を把握している人間だ。
どんな言い方をすれば、チトセがどう動くか、おおよその見当がついていた。
加えてチトセはとても素直。
そんな話があった週末に、売店で特売の板チョコレートを大量購入してしまった。
とりあえず買うだけ、と自分に言い聞かせながら。
買ってしまったのなら、捨てるのは勿体ない。
これだけの量を、ひとりで食べきるのは無理。となれば、湯煎するのは仕方ない事だ。
溶かしてしまえば固めるしかない。
とりあえず作ってみるだけ、と自分に弁解しながら。
固めてしまったのならしょうがない。
トッピングのひとつもないと、あまりに不格好ではないか。
ホワイトチョコで文字を入れ、カラーチョコで愛らしい天使のイラストを添えた。
とりあえず体裁を整えるだけ、と自分に説明しながら。
体裁が整ったら、そのまま放置しておくわけにもいかない。
ラップでコーティングしてから、赤い包装紙とリボンで丁寧にラッピングしてみた。
とりあえず汚れないようにする為と、自分を納得させながら。
そして気がつけばバレンタイン用のチョコが完成。
ご丁寧にトートバックまで準備して、持っていく気も満々だった。
ここではっと冷静さが戻った。
バレンタインのチョコ。
普段、甘えている自分を鑑みれば、お礼としてはおかしくないだろう。
それが手作りだったとしても、そんなに問題はないはず。
形がハート型であっても、きっと他意はないと思ってくれるはずだ。
しかし。
ごくりと喉を鳴らす。




