番外編19-01
【〇二月一四日】
我に返ったチトセは自分の所業に戦慄した。
何故、こんな事になったのか?
正直、解らない。ただ熱狂的な衝動に押されていた気がする。
ごくりと喉が鳴った。
どうしょう。
その言葉が喉の奥に引っ掛かる。
ここまで来たら進むしかないとは思う。
だが、その先に待つのは破滅しかないのではないか。
ぶるぶると震えだす肩を抱いた。
蹲りそうになるのを辛うじて堪える。
とにかく動かねば。
こんな所を誰かに、それがチームメイトであっても、親友のキリシマであっても、見られるわけにはいかない。
目の前に置かれていた恐ろしいそれを、用意しておいたトートバックに押し込む。
高鳴る鼓動を胸の上から押さえながら、周囲を一瞥。
寮、自分達のキッチンスペース。
深夜二時という時間もあり、誰もいない。
ほっと安堵しつつ、使った道具類をビニール袋に入れて、とりあえず自室に駆け込んだ。
* * *
「来週のバレンタインだけど、チトセはどうすんの?」
一週間ほど前の放課後、ミユに押しつけられたアンケートの集計をしていた時だった。
対面に座るキリシマが唐突に尋ねたのだ。
「どうって、なにがです?」
「誰かにチョコあげたりする?」
キリシマの問いに、チトセは苦笑いを返す。
「ここは女子校ですよ。あげる相手がいないじゃないですか」
「そうかな。結構、チョコあげてる子多いよ。変な意味じゃなくて、お世話になったあの人に的な感じだけど」
「お世話になった相手に?」
「実際、借りを清算するのにチョコくらいで済めば安上がりでしょ」
「ふふ。趣旨がずれていますね」
チトセは夢見る乙女。
やっぱりバレンタインと言えば、好きな男の子に精一杯の想いを込めてチョコを贈る。
そうであって欲しい。
「ほら。私らってみんなに色々迷惑掛けられているでしょ。きっと、山のようにチョコ貰えるんじゃないかな」
「それはないと思います。そもそも、私達は与えられた役職の仕事をしているだけじゃないですか」
「相変わらずマジメだね」
「そう言えば、ユキナクラスのハルナさんは沢山頂くと仰ってたような」
「あいつが貰うチョコは、なんか違う気がして嫌だな」
露骨に眉を顰めるキリシマを、「そんな言い方しちゃダメですよ」とチトセは優しく窘める。
「ね、チトセ。ソネザキにあげたりしないの?」




