表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
126/138

番外編18-11

 気力を振り絞って噛む。

 当然ソースが染み出し、新たに味覚を侵食し始める。

 料理というより、計算され尽くした拷問に近い。

 なにより、その恐ろしい所は。

 

 ひと口をようやく飲み込んだ。

 

 涙で視界が霞んでいた。

 心臓がバクバクと音を立て、肺は呼吸すら拒否しているかのよう。

 全身の関節が悲鳴を上げている。

 意識もやや混濁してきた。異常な発汗まである。

 

 両手を挙げて、降伏したいところだが。

 

 ぐっとフォークとナイフを握った。食べなければいけない。

 この拷問の恐ろしいところは、自分自身で口に運ばなければいけないというところだ。

 細かく切って回数を増やすか、大きく頬張って押し込むか。

 どちらが、よりダメージの少ない正解だろう。

 

 こんな事を考えさせる物が料理であってたまるか。

 

 ちらりとコトミを見ると、一気に押し込む方を選んだようだ。

 逆にアンズは肉を木端微塵にしている。

 ドルフィーナは止まっていた。瞳が緑に明滅している。深刻なエラーが発生しているのだ。

 みんなが孤独な戦いを続けている。

 

 萎え掛けていた闘志を漲らせると、ソネザキはフォークを突き刺し、ナイフを走らせた。

 

 

                       * * *

 

 

 トイレから出たソネザキは、ぐったりとリビングの椅子に腰を落とした。

 

「どうだった?」

 

 コトミの問いに力なく笑みを浮かべる。

 

「貧乏ってすごいね。こんなに吐きそうなのに、何ひとつ戻さないんだから」

「一度、胃に入ったら絶対に無駄にしないということですわね」

 

 アンズがふふっと声を漏らす。

 

「わたくしも、いつの間にか立派な貧乏人になったようです」

「明日になれば回復するよ、多分」

「ドルフィーナも、あと五時間くらいでシステムが復旧するみたいだよ」

「ロボットってこういう時いいよね。ボクらみたいに辛い時間が続かなくて。あ、ごめん」

 

 コトミが胸元を押さえながら、ふらふらとトイレに向かう。

 

「そう言えば、プリンを食べた記憶がないんだけど」

 

 というより、いつの間にかミョウコウは帰り、自分達はリビングの床に転がっていた。

 気がついたのは一時間ほど前、日付が変わったくらいだ。

 

「至って普通のプリンでした。卵の風味を生かしたと仰ってましたが、最後の最後で食べられる物が出たという感じでした」

「じゃあ、私も食べてたんだろうな」

「わたくしも他人にまで注意がいきませんでしたが、おそらく」

 

 よろよろとコトミが戻ってきた。

 

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ