番外編18-11
気力を振り絞って噛む。
当然ソースが染み出し、新たに味覚を侵食し始める。
料理というより、計算され尽くした拷問に近い。
なにより、その恐ろしい所は。
ひと口をようやく飲み込んだ。
涙で視界が霞んでいた。
心臓がバクバクと音を立て、肺は呼吸すら拒否しているかのよう。
全身の関節が悲鳴を上げている。
意識もやや混濁してきた。異常な発汗まである。
両手を挙げて、降伏したいところだが。
ぐっとフォークとナイフを握った。食べなければいけない。
この拷問の恐ろしいところは、自分自身で口に運ばなければいけないというところだ。
細かく切って回数を増やすか、大きく頬張って押し込むか。
どちらが、よりダメージの少ない正解だろう。
こんな事を考えさせる物が料理であってたまるか。
ちらりとコトミを見ると、一気に押し込む方を選んだようだ。
逆にアンズは肉を木端微塵にしている。
ドルフィーナは止まっていた。瞳が緑に明滅している。深刻なエラーが発生しているのだ。
みんなが孤独な戦いを続けている。
萎え掛けていた闘志を漲らせると、ソネザキはフォークを突き刺し、ナイフを走らせた。
* * *
トイレから出たソネザキは、ぐったりとリビングの椅子に腰を落とした。
「どうだった?」
コトミの問いに力なく笑みを浮かべる。
「貧乏ってすごいね。こんなに吐きそうなのに、何ひとつ戻さないんだから」
「一度、胃に入ったら絶対に無駄にしないということですわね」
アンズがふふっと声を漏らす。
「わたくしも、いつの間にか立派な貧乏人になったようです」
「明日になれば回復するよ、多分」
「ドルフィーナも、あと五時間くらいでシステムが復旧するみたいだよ」
「ロボットってこういう時いいよね。ボクらみたいに辛い時間が続かなくて。あ、ごめん」
コトミが胸元を押さえながら、ふらふらとトイレに向かう。
「そう言えば、プリンを食べた記憶がないんだけど」
というより、いつの間にかミョウコウは帰り、自分達はリビングの床に転がっていた。
気がついたのは一時間ほど前、日付が変わったくらいだ。
「至って普通のプリンでした。卵の風味を生かしたと仰ってましたが、最後の最後で食べられる物が出たという感じでした」
「じゃあ、私も食べてたんだろうな」
「わたくしも他人にまで注意がいきませんでしたが、おそらく」
よろよろとコトミが戻ってきた。




