番外編18-7
「苦味をね、アクセントとして使いたいたくてさ。でも、強くなると酷い事になるじゃん。だからさ、味のバランスに苦労したんだよ。そのかいあって大成功。ね、この微かな苦味がクセになるでしょ?」
キッチンスペースからミョウコウが尋ねた。
何のクセになりますかね? とソネザキは聞き返したくなる。
「あれ? 口に合わない?」
手が止まっているのを見て、ミョウコウの声に不安が混じる。
「ごめん。美味しくないなら、食べなくていいから」
かなりの試行錯誤を繰り返したのだろう。
今までソネザキが見たこともない沈痛な表情だった。
「あ、そんなことないよ。すごく不思議な味だなって思ってさ」
慌ててフォローすると、スプーンでもうすくって口に入れる。
とってもオイリーな油粘土です。
三分後。
食べ終えた頃合いを見計らって、ミョウコウが次の皿を持ってきた。
パスタだった。薄緑のソースが絡み、柔らかな湯気を上げている。
「ハーブをメインに使ったパスタだよ。でも香りがきつくないように色々な野菜のペーストで調整してあるから」
ソネザキはフォークでくるくると巻いて口に。
ミョウコウの言葉通り、香草の柔らかな香りに続いて、様々な野菜の風味が混然一体となって広がる。
全ての味が絶妙な主張を繰り返す味のワンダーランド。
結果、ソネザキは夏のドブ川にハーブを浸けて啜っている気分になった。
重さの増した頭部を両手で支えて、大きく息をつく。
正直、さっきの油粘土よりも強力だ。胃が拒否反応している。
「ゲロぶちまけて死にたくない」
イスズの言葉は嘘でもなんでもなかったなと思う。
それと同時に試作品を食べさせられた三人と、同じように苦境に晒されているチームメイト達に申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
しかし、それを気に病んでいる場合ではない。
ミョウコウの視線を感じる。とにかく黙々と食べ続けしかない。
通常のパスタの四分の一ほどの量だったが、食べきるのにはフルマラソンに近いくらいの精神力を費やした。
無情にも次の皿が置かれる。
ご大層に金属製のドームカバーが掛かっていた。
「クロッシュだなんて、不吉な予感しかしませんわ」
ぼそりとアンズが呟いた。
ソネザキとしては、食べる前からそんな事を言うなよぉ。と喚きたくなる。
ミョウコウがさっとカバーを外した瞬間、ソネザキは椅子を蹴っていた。




