番外編18-4
* * *
「まさか、みんなに置いて行かれるとは思わなかったよ」
始業ぎりぎり。
ソネザキの近くにやってきたミョウコウは、「起きて超びっくりだった」と細い目を更に薄くする。
「あのさ、ミョウコウ。料理を御馳走してくれるって話だけど」
「うん。明日の夜だよね。準備してるから。昨日さ、朝方まで仕込みしててね。それで寝過しちゃって」
「そうなんだ」
ご機嫌な様子に、ソネザキはどうにも言い辛くなる。
しかし。
「あのさ、もしその話を断るとかなったら」
ぴたりとミョウコウの動きが止まる。
細い目を見開き、全身で驚愕を表していた。
「ミョウコウ?」
「え? うん。大丈夫だよ。そりゃ残念だけど、しょうがないよ。そっちの都合もあるしさ。勝手に頼んだこっちが悪いんだし。だから、ほら、むしろこっちが謝らないとダメな感じになるから」
早口で続けるミョウコウ。
その目じりに滲む涙に、ソネザキは胸が締め付けられそうになる。
「ごめんね、ソネザキ。変に気を遣わせちゃって、また機会があったら」
「待って。あのさ……」
* * *
「いいですわ。なんとなくこうなる気はしていましたし」
「お人好しに期待するほど、我らも愚かではない」
「でもさ、断れないのがソネザキのいいところ。そういうところ大好きだよ」
力なくも笑顔を作るコトミ。
当然直後に。
「ちょっとソネザキさん、どういうことですの。まさか、今回の件はコトミさんを誘惑するために仕組んだ……」
「ここまで手の込んだ事するはずないだろ」
「むう。どうにも信用できませんわ」
「信用はともかく危機的状況なのに変わりはないな。まあ、次善の策は用意しておいたが」
ドルフィーナの言葉にアンズとコトミが期待のこもった目を向ける。
「イスズに胃腸薬の調合を頼んでおいた」
「消極的な策ですが、ないよりはマシですわね。ありがとうございます」
「ストックしてある支給薬じゃ、どうにもならないしね。イスズちゃんにお礼を言っとかないと」
期待以上の策ではなかったのだろう。ややガッカリ感が滲む。




