番外編18-3
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翌朝、教室に入るなりイスズとフユツキ、それにヤハギがやってきた。
「あのさぁ、マジな話だけどぉ。ホントにちゃんと断んないとダメだからねぇ」
顔面塗り壁が嫌な念の押し方をしてくる。
それを支援するかのようにフユツキがこくりと頷いた。
「ホント絶対に断ってよ」
左右にお下げ髪を作ったヤハギが、ずいっと顔を寄せてきた。
「ミョウコウは人に食べさせる時、必ず試作をするの。それを食べさせられるのは私達なんだよ」
白い肌に散ったソバカス。
珍しい青色の瞳が、いつもにない真面目さを浮かべている。
発言を支持するかのようにフユツキが静かに首肯した。
「昨日のコトミ達もそうだけど。なんでそんなに酷く言うかな。チームメイトだろ」
「チームメイトでも命は惜しいの!」
「そうだよぉ。戦場で死ぬならともかくさぁ。寮でゲロぶちまけて死にたくないんだよぉ」
「汚い表現するなよ。女子だろ」
「とにかく! 絶対に断ってよ! 絶対だからね! 断らなかったら子々孫々までウラミハラサデオクベキカだから!」
「意味が解らないんだけど」
「ホントにさぁ、断らないとダメなんだよぉ。情に流されでもしたらぁ。本気で絶交するからねぇ。これさぁ、冗談とかじゃないからさぁ」
「うちのチームの連中もそうだけど。どうにも大袈裟だね。人の厚意にどうして、そこまでケチつけるのやら」
「ソネザキぃ、そういう常識は時と場合によるんだよぉ」
「ちゃんと断らないと、ソネザキも酷い目に遭うんだから!」
「はいはい。ミョウコウにはちゃんと言っておくよ」
心底うんざりした様子で教室に戻るソネザキ。
そんな彼女を見ながら、ヤハギが大きく息をついた。
「もうすぐミョウコウが登校してくるよ。こんだけ言ったんだから大丈夫だよね」
「どうかなぁ、ソネザキってトラブルを引き込む性格なんだよねぇ。どっか抜けてるとこがあるっていうかさぁ」
ふたりのやり取りを聞きながら、フユツキは小さく首を振った。
おそらくソネザキは断られないだろう。
半ば諦めた様子だった。




