番外編16-8
「どうにも信じ難い話ですが、貴方が精霊であるという点まで納得しましょう」
アンズは宣言して、先に話を進める。
「ところで最近のお菓子盗難事件は?」
「えっとぉ。それは、ほら、精霊ってこんなじゃん? だから買い物とか行けなくてさ。あ、悪いことだってのは解ってるよ。解ってるんだよ、でも……」
「アンズちゃん、アオバちゃんだって普通の女の子なんだよ。お菓子くらい食べたくなるよ」
普通ではないだろうと思いつつも、アンズは口に出さない。
コトミの主張は自身の意見より優先度が高いのだ。
「まあ、物がお菓子ですから、大仰に騒ぐ必要も感じませんわ。それに翌日には戻しておられるようですし」
「あれはね、父さんがやってくれるの」
「か、家族がいるんですの?」
「うん。ホントの家族じゃないんだけど。若い精霊を教育する制度があってね。私も一人前になったら、親元を去って頑張る事になるみたい。まあでも、私はあんまり向いてないみたいでさ。十年以上掛かりそうって言ってた」
「はあ、そうですの。というか、お菓子騒ぎの犯人も見つかりましたし、どうでもよくなってきました」
ちらりとドルフィーナに目を向ける。
「我は精霊とやらが知覚できんが、アンズやコトミの様子を見る限り害はないのであろ。なら、どうでもいいではないか」
とっても投げ槍な意見。
「アオバちゃんはいい子なんだよ! お菓子を食べるのは良くない事だけど、そんなんで追い出したりしないで欲しいんだ」
コトミは寝ぼけてリビングに出た時に、偶然鉢合わせしたらしい。
誰とでも仲良くできるという才能を発揮してか、既に良好な関係を築きつつある。
「ソネザキさんは、どうですの?」
「どうもこうもないよ。寮にこんな化け物が棲み付いているなんて」
もう七割方泣きそうだ。
「化け物じゃなくて精霊なんだけどなあ。あ、ほら、座敷荒しとか言う妖精がいるじゃん? そんな雰囲気なんだけど」
「座敷を荒したら強盗か空き巣ですわ」
呆れつつも律儀に突っ込むアンズ。
「こんな化け物のいるところなんて、もう住んでられないよぉ」
ソネザキは完全に思考停止状態だ。
「ところでアンズよ。精霊とやらは、普段何をしておるのだ?」
ドルフィーナの質問をアンズがアオバに伝える。
アオバからもドルフィーナは知覚できないらしい。
「私は見習いだから、特に何もしてないかな。でも、父さんと母さんは悪い霊とかが近寄らないようにしてるよ。人間の生活を見守る義務があるとかで」
ぴくんとソネザキが顔を上げた。




