番外編16-1
【一二月一三日】
「ほら、ケンカするほど仲が良いって言うじゃんさぁ」
相も変わらず気だるい話し方をするのはイスズ。
放課後、教室での事だ。
「だからぁ、適当にケンカしてぇ。適当に仲直りすればいいわけよぉ」
いつも通りの特盛りメイクの顔に不満を滲ませた。
「っていうかぁ、なんでアタシがぁ、こんな話しないといけないわけさぁ」
「別に、こっちだって顔面塗り壁と喋りたくなんてないよ」
対面に座っていたアカネが口を尖らせる。
「でさぁ、ケンカの原因ってなんなのぉ?」
「アオイがウチのプリンを勝手に食べた」
「うぉっと。こいつぁ、また随分とお約束だねぇ」
半ば呆れつつも納得はできた。
いつの世でも食べ物の恨みは根深い。
あれこれ制限が強い寮生活では、その傾向は顕著だ。
「アタシからアオイにさぁ、謝るように言ってあげるからぁ」
「ウチはプリンが惜しくて言ってんじゃないんだ! 勝手に食べたくせに、知らんぷりしてるのが許せないんだよ!」
ドンと机を叩くアオイに。
「解るよぉ解る解るぅ。そういうのって気持ちが大事だもんねぇ」
イスズは適当な相槌を打った。
* * *
「ふうん。プリンが原因でケンカねえ」
愚痴に近いイスズの話を聞き終えたソネザキが、苦笑交じりに述べた。
「まあ、食いもんの恨みって怖いもんだけどねぇ」
帰宅中。
ばったり会ったソネザキに、イスズは放課後の顛末を話したのだ。
「確かにアカネは不機嫌そうだったけどさ。アオイはいつも通りだったんじゃない?」
「ん、だよねぇ。だから誤解とか勘違いかもしんないねぇ」
「で、イスズはどうするのさ?」
「とりあえずアオイに話してみるさぁ。どっちにしろ下んないケンカしてるよりはマシじゃね?」
それを聞いたソネザキは頬を緩める。
「なんのかんのってさ。イスズもお人好しだよね」
「あはは。どうだろうねぇ。実んとこさぁ、双子のケンカなんてどうでもいいんだよねぇ。所詮は他人事だしぃ。面倒になったら途中で捨てるしぃ」
「口ではそう言ってもさ」
「ソネザキ、アタシはねぇ、アンタと違うんだなぁ。他人は他人。どうでもいいのぉ。善意っぽいのを見せるのも、ただの自己満足の範囲だけだよぉ」
イスズらしい意見を続ける。




