異世界2
不安になったところで、俺は一旦車の中に戻ることにした。ちょうど体も冷えてきたし。
車内に入ると、とりあえずドアをロックし、暖房をつけてHDD付きのカーステで音楽をかけることにした。
曲は俺の大好きなロックバンドの曲。
車でドライブするときは決まってこのアーティストの曲を聴いていた。
激しいテンポの曲に自然と口から歌詞がこぼれる。
少し落ち着いた気がした。
「そうや。ナビつけてみたらどうやろ?」
そう思った俺はHDDのタッチパネルを操作して、カーナビを起動させると現在地の検索を行った。
しばらく画面にロード中を表す表示が点滅を繰り返す。
だがしかし、画面に現れたのは検索不明を表す文字だけだった。
期待していただけに、落胆が大きい。
電話も通じず、ナビも役に立たない。
おまけに日も傾いてきた。
「嘘やろ・・・勘弁してくれよ」
カーステから流れる陽気な声とは裏腹に、俺の気持ちは沈む一方だった。
それから数時間が経った。
さっき分かったことなのだが、スマートフォンや車の時計が事故った時刻、午前1時から全く経ってないのだ。
故障かとも思ったが、スマートフォンはしっかり機能しているし、車もエンジンはかかる。
それに意識を回復したのが昼ぐらいだったので、時間が止まっていることはまずない。
俺には一体どういうことなのか、さっぱり分からなかった。
そうこうしているうちに腹も減ってきた。
これが不幸中の幸いか、ドライブデートする際にパンやお菓子、飲み物を買っており、いくらか残っていたことを俺は思い出して、後部座席からそれらの食料が入ったビニール袋を取り出した。
パンを一口、口にするとまるで何かを思い出したかのように、一心不乱にかじりつく。丸一日何も食べていなかったから、相当腹が空いていたのだろう。
少し落ち着いたところで、ペットボトルの蓋を開けて、お茶を飲む。
「はー。満足満足」
といって俺はドアを開けて外へと出た。タバコを吸う為である。
夜になってから気温がだいぶ下がったようで、ダウンを着ていてもなかなか寒かった。
「夜になってもうたな。・・・これからどうしたらええんやろ」
救助を乞うこともできないし、何よりここがどこかも分からない。
結構ピンチな状況に立たされている。
いわゆる遭難ってやつかもしれない。
タバコをふかしながら、これからの行動について考えてみる俺。
こういう状況は初めてなので、どうしたらいいか分からないが案外落ち着いている自分がいた。
「とりあえず寝るか。明るくなってから行動しよう」
そう結論に至った俺は早速車内に戻り、車に備え付けていた毛布にくるまり、ゆっくり目を閉じた。