必要性の見えないプロローグ
目の前にある鍋を覗き込む。
グツグツと煮えたった汁の中に海産物系の具が揺らめいている。
「今日は私が主人公だからな。私の指示に従ってもらうぞ」
俺の右隣に座っているポニーテールが特徴の女の子が、箸でこちらを指しながら瞳を輝かせていた。
行儀が悪い……。
さて、どうでもいいことだが、まずは現在の状況を説明しておいた方がいだろう。
ここは学校にある部室棟の一室、言わずもなが我が部の部室だ。
さらに言うなら部室は火気厳禁、飲食厳禁。バレたらかなり厳しく指導されるのは間違いない。
それなのになぜ俺等がこうして一堂に会しているのかというと、先ほどの女の子の誕生日だからだ。
誕生日だからってなぜこんな場所で祝うのか、他の場所があったんじゃないのか、むしろその子の家で祝うべきだったんじゃないのか。考えればツッコミどころが満載な訳だが、もうここまで事態が進行している以上仕方のない事と割り切るしかない。
それに、一応顧問の先生もいることだしバレてもそいつを売ればなんとかなるだろうという打算もある。
ふと、鍋の方を見るとすでに4分の3ほど具が消えていた。おそらくすでに皆の腹の中だろう。
「おい、少しは残しておいてくれよ」
俺がそうメンバーに不平を洩らすが
「ぼうっとしてる奴が悪い」
「だな、ナニ想像してんだか」
「な、ナニって……。ちーちゃんエッチですね」
「その発想に至るお前らの方が断然エロいわ!」
「きゃー、ちーちゃん大激怒~」
いつものように、騒ぎ出す。バレたら危険なことも忘れて大声で……。
『雑談部』それは日々を怠惰に過ごす集団の集まりである。
部員は全部で六人。俺と顧問も入れて六人だ。
活動内容と言えば、ゲームや読書、たまに文芸部もどきの活動をしている。
部長曰く、友達関係がよろしくない連中の集まりなんだそうだ。正直落ち込むような話だが事実である以上仕方がない。
まぁ、俺以外は気にしていないようなので、どうでもいいような事なのかもしれないが。
この部の創立者は何を考えてこの部を創ったのだろうか
きっと、今の俺達みたいにただただ無意味に話せる、居心地のいい空間を作りたかったのだろう。
これは俺達『雑談部』の他愛のない雑談集。くだらない、実にくだらない日常の物語である。
つい最近言った一言
『いい国作ろう不如帰』