第4話:その捏造、私が論破いたします
数日後。ついにエルザが動いた。
王城の小広間、貴族たちが集まる公式な場で、彼女は震える声を芝居がかって響かせた。
「殿下! 信じがたいことですが、リリアーナ様が殿下を呪い、王位を簒奪しようと企んでいる証拠を見つけましたわ!」
広間がざわめく。
エルザの手には、私が昨日拾ったあの「偽造手紙」が握られていた。
(……はい、きました。前世でも見たわ。推しのサインを捏造して『極秘交際発覚!』とかやってたデマサイトの手口そのものね)
アルフレッド殿下は、表情を一切変えずにその手紙を受け取った。
手紙には、私の筆跡に似せた歪な文字で『殿下が失脚すればいい。私が実権を握るのだ』という物騒な内容が記されている。
「リリアーナ、これは君の書いたものか?」
王子の視線が私を射抜く。
エルザが勝ち誇ったように口角を上げた。
「間違いありませんわ! その紙からは禍々しい呪いの魔力さえ感じられます。リリアーナ様、何か言い訳は?」
私は優雅に一歩前へ出た。
言い訳? いいえ、これは**「検証」**の時間よ。
「殿下、その手紙を少し拝見しても? ……ふむ、なるほど。筆跡は確かに私に似ておりますわね」
私は手紙に指を触れ、溜め込んだ「徳」を一気に流し込んだ。
徳積みスキル発動――【真実のフォレンジック(鑑定)】。
「……えっ!? 手紙が、光って……?」
エルザが動揺する。
私の指先から放たれた聖なる光が、手紙の文字を「層」のように分解して宙に浮かび上がらせた。
「皆様、ご覧ください。この手紙には三つの『嘘』が刻まれています。第一に、インク。このインクには私の魔力ではなく、エルザ様が先月購入された限定品の『毒蠍の涙』が混じっていますわ」
「なっ……なぜそれを!?」
「オタク――いえ、淑女たるもの、他家の買い物リスト(公式供給)の把握は基本ですわ。第二に、筆跡。文字のハネが、私の癖ではなく、エルザ様が極度の緊張時に書く癖と完全に一致しています」
私はさらに光を強める。
「そして第三。この手紙に込められた『呪い』ですが……。私の『徳』がそれを反転させ、**『書いた本人の声』**を再生いたしますわ」
その瞬間、手紙からエルザの声が朗々と響き渡った。
『ふふっ、これでリリアーナは終わりよ。殿下は私のもの……。偽造なんて簡単だわ!』
「ひっ……あああああ!!!」
エルザは顔を真っ白にしてへたり込んだ。
前世でボイスレコーダーやスクショでアンチを追い詰めた私に、捏造なんて100年早いのよ。
「……エルザ・フォン・公爵令嬢。君の醜い企みはすべて明らかになった」
王子の声は、氷のように冷たかった。
即座に衛兵がエルザを取り押さえる。彼女は「私は、私は殿下のために……!」と叫びながら連行されていった。
(よし、ざまぁ完了。これで今度こそ、私は『名もなき守護壁』に戻れる……!)
安堵して退出しようとした私の前に、アルフレッド殿下が立ち塞がった。
……あれ? なぜか殿下の顔が、さっきの冷徹さとは打って変わって、熱っぽく上気している。
「リリアーナ。君は……そこまで僕を守ろうとしてくれていたのか。僕の買い物リストや筆跡、癖まで、すべて把握しているほどに……」
(……あ、やばい。ストーカーだと思われた!?)
「い、いえ殿下! これはあくまで、不審な動きを察知するための、健全なリサーチでして!」
「健全……? いや、これほどの執着、愛以外の何物でもないだろう。……リリアーナ、僕は君が怖い。そして、君から目が離せないんだ」
殿下が、私の髪を一房掬い上げ、その先に唇を落とした。
(待って、認知を飛び越えて『推しの激重ファンサ』が直撃したんですけど!?)
私は顔面を林檎のように真っ赤に染め、その場から猛ダッシュで逃亡した。
「捏造ログの公開処刑」いかがでしたか?
前世の恨みも含めて、この世界でのざまぁ完了です!ですが、王子の「重すぎる勘違い」に拍車がかかってしまいました。
次話、ついに物理的な危険が王子を襲います。お楽しみに!




