第1話:推しの幸せを願って徳を積んだ結果、死にました
私は、いわゆる「強火」のアイドルオタクだった。
応援しているのは、アイドルグループ『STAR LIGHT』の最強マンネ、KAITO。
「KAITOくんの笑顔こそが、この世の正解」
推しの幸せを願い、毎日こつこつと「徳」を積む。それが私の聖戦だ。
道に落ちているゴミを拾い、電車では光の速さで席を譲り、コンビニの募金箱には小銭を全投入する。
すべてはただ一つ――神席を当選させ、推しに健やかなファンがいると証明するため。
「推しには、ただ幸せでいてほしい。恋愛感情? 恐れ多い。私は客席の隅で光る棒を振る『壁』になれればそれでいい」
だが、世の中には私の美学を汚す存在がいた。
通称、粘着アンチの『STL運営ウォッチ★元KAITO担』。
「元ファン」を自称し、自分の歪んだ主観でKAITOくんのデマを撒き散らす厄介者だ。
『KAITOって実は性格悪いよw』『今日のライブ、やる気なさすぎて幻滅』
……黙れ小僧。
私は即座に、公式のデータと愛ある言葉でタイムラインを浄化する。
汚い中傷が一つ描かれるなら、私はその千倍の「愛」を叫ぶ。
それが私の、アンチに対する真っ向勝負だった。
そんなある日、ついに奇跡が起きた。
第一希望・最前列当選。
「徳」がカンストした瞬間だった。
「ありがとう……世界。……これで、死んでも――」
フラグだった。
喜びの絶頂で膝から崩れ落ちた帰り道。暴走トラックから子供を突き飛ばし、私の意識は白く弾けた。
最後に思ったのは、「血まみれの私をKAITOくんに見せずに済んで良かった」ということ。
……次に目を覚ましたとき。
私は、豪奢な天蓋付きベッドの上にいた。
「リリアーナ様! お目覚めですね!」
鏡を覗き込めば、そこには金髪碧眼の超絶美少女。
どうやら私は、前世で積みまくった「徳」のボーナスとして、高スペックな伯爵令嬢に転生したらしい。
だが、推しのいない世界なんて、酸素のない宇宙と同じだ。
そう絶望していた私だったが、王城の夜会で“その人”を見た瞬間、心臓が爆ぜた。
「……っ!?」
凛とした眉、涼やかな目元、そして少し寂しげな微笑み。
そこにいたのは、前世の推し・KAITOと瓜二つの第一王子、アルフレッド殿下だった。
無理。尊い。顔面が世界遺産。
あの一歩引いた佇まい、KAITOくんが「自信がない」とこぼしていたあの夜の横顔そっくりじゃない……!
感極まってその場に四つん這いになりたい衝動を、伯爵令嬢の矜持で抑え込む。
よし、決めた。この世界でも私は「壁」になる。
匿名(名もなき令嬢)として、彼の幸せを全力で守り抜く――!
そう決意した直後だった。
王子の隣にしなだれかかる一人の令嬢を見て、私の全細胞が警鐘を鳴らした。
「殿下、私だけは分かっております。皆様、殿下の努力を理解していないのですわ……」
その、耳障りな甘ったるい声。
自分の主観をさも真実のように語り、相手を精神的に依存させる手口。
魂の形が、あの最悪のアンチ『STL運営ウォッチ★元KAITO担』と完全に一致した。
(お前……この世界でも、推しに粘着するつもりか……!?)
冗談じゃない。
今度の推しは、王宮という閉鎖空間で逃げ場がないんだ。
あんな毒虫に、これ以上KAITO(王子)の心を削らせてたまるか。
私は扇で口元を隠し、冷徹な令嬢の笑みを浮かべる。
前世で積み上げた「徳」が、私の体内で膨大な魔力へと変換されるのを感じた。
「……そこをどきなさい、泥棒猫。そこはあなたの居座る場所じゃないわ」
推しの幸せ(メンタル)は、私が守る。
強火オタクvs最凶アンチ、異世界の第二ラウンド。
――まずは、その汚い口を封じさせてもらうわね?
最後までお読みいただきありがとうございます!
推しへの愛(徳)を積みに積んだ結果、異世界へ飛ばされてしまった美咲。
次話、ついに**「推しソックリな王子」と最悪の再会を果たした「前世のアンチ」**が登場します!
オタクの知識と徳の魔力で、不浄なノイズをどうなぎ倒していくのか――。
「面白そう!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、**ブックマークや評価(☆☆☆☆☆→★★★★★)**で応援いただけると、執筆の『徳』が溜まって更新が早まります!
次回の更新もぜひお楽しみに!




