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9 街の明かり

「これで手続きは終了だよ」

「助かった。んで、いくら?」

「これに関してはいらないよ」

「書類代とか手続き費用もか?」

「ああ。諸々含めて、税制優遇が受けられる案件だからね」


 秘書もうなずいている。

 滅多に表情を変えない男がホクホク顔を隠せないのだから、いい案件なのだろう。


「んじゃ、お言葉に甘えて、帰るとするか」

「はい」


 俺とパルマは、マシューの屋敷を後にした。



「にぎやかな街ですね」


 夕方が近いこともあり、夕飯の買い物をする主婦や、家路を急ぐ子供たちでごった返している。

 どこにでもある光景に思えるが、ニコニコしているパルマには幸せの象徴のように映っているようだ。

 普通を喜べるということは、それが当たり前でないと知っている証拠でもある。

 もしかしなくとも、波乱万丈な人生を送ってきたのだろう。

 旅に出た理由もポジティブではなさそうだし、苦労してきたのだと思う。

 それに加えて、旅の途中で奴隷に身を落としたのだ。


(不幸は重なるっていうけど、その見本だな)


 けど、それを前面に出さない強さも持ち合わせている。

 なんてことない街の明るさに、瞳を輝かせる純粋さも好感だ。


「ふふふ」


 子供に手を振られ笑顔で振り返すあたり、寝首を掻かれる心配もないだろう。


(楽しそうだし、もうちょっと歩くか)


 これから住む街を知っておいて損はない。


「あそこの店は、俺がよく利用する雑貨屋だ」

「かわいいモノが多いですね」


 パルマの感想通り、店内はオシャレな品が大半だ。

 けど奥の片隅で、錬金術に適した強度の強い品々も取り扱っている。


「で、あそこが素材屋だ。向こうにある素材屋より値は張るけど、その分上質なモノを取り扱っているぞ」


 昼間ダメにした素材も、ここで仕入れた物だ。

 買い物をして帰りたいが、今日はやめておこう。

 後日、明るいときにまた来ればいい。


「あそこの鍛冶屋は注意しろ。店主が頑固一徹で、気に入らなければ国王ですら相手にしないんだ」

「国王様の依頼を断るのですか?」

「ああ。それが許される凄腕だ」

「失礼ですが、そのような方が住んでおられるとは思えませんね」

「まあな」


 いまにも吹き飛びそうなあばら家だが、住み慣れたあそこがいいらしい。


「衛生面が心配です」


 この発言が出るということは、ハウスキーパーとしても期待ができそうだ。

 見せるのに勇気はいるが、あの汚い家を劇的にビフォーアフターしてくれるに違いない。


 ぐううううううう


 腹の虫が鳴った。

 けど、俺じゃない。

 音は隣りのパルマからした。


「すみません」


 腹を押さえて恥ずかしそうにしているが、謝る必要などない。

 むしろ、食事を失念していた俺のほうがダメだ。


「そういえば夕飯時だな。なんか食べたい物ある?」

「食べたい物ですか? 特にありません」

「んじゃ、好きな物は?」

「強いて言うなら、お肉です」


 ちょうど目の前に、お気に入りのレストランがある。


「よし。んじゃ、あそこで食事にしよう」

「えっ!? えっ!? ええっ!?」


 困惑するパルマの手を引き、俺は入店した。


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