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63 小さいテントに驚いた

「なんてこったい!?」


 魔檻の森にある家に戻ってきたら、劣化していた。

 壁に穴が散見し、若干傾いているような気もする。


「ご主人様。これは一体、どういうことでしょう?」

「わんわん」


 パルマや子ナイトウルフも驚いているので、俺の見間違いではなさそうだ。


 ……


 一応、目をこすりまばたきを繰り返してみたが、映る光景は一緒だった。


「あらあら。やっぱり、こうなってるわよね」


 嘆息しながら現れたササナは、理由を知っていそうだ。


「これって、必然なのか?」

「前にも言ったけど、この辺一帯には時を停める魔法が展開されているわ。けど、それもアンナの登場で、消失に向かっている」

「それは覚えているけど、数か月は保つ、とも言ってただろ」

「長くても、って注釈はつけたでしょ」

「にしても、早くねえか?」


 俺がここに来てから、まだ二十日ぐらいだ。


「それだけ劣化が進んでいた、ってことね」

「なるほど。んじゃ……しかたねえか」


 いろんなものを呑み込んだ。

 というか、冷静に考えれば、これが当たり前なのだ。

 何十年……いや、何百年かもしれない単位で放置された家が、新品同様の姿を保てるわけがない。


「ん~、でも困ったな」

「そうですね。これでは、ここに住むことはできません」

「それもそうだけど、一番の問題は今晩の寝床だ。ここで寝泊まりするのは、危険すぎるもんな」

「なら、これを貸してあげる」


 パチン、とササナが指を鳴らすと、テントが出現した。

 けど、これでは小さすぎる。

 俺とパルマが並んで寝ることはできるかもしれないが、確実に頭か足が外に出てしまう。


「う~ん」

「唸ってないで、入ってみなさい」

「おいおいおい!? って、なんじゃこりゃ!?」


 ササナに無理やり押し込まれたそこは、驚愕だった。

 見渡すかぎりの地平線が広がる中に、ポツンとテントの入り口だけがある。


「ご主人様!? どうされたのですか!?」

「説明されるより、体験したほうが早いわよ」

「きゃっ! ……って、なんですか!? ここは」


 パルマの目が、零れ落ちそうなぐらいひん剥かれている。

 たぶん俺も、こんな表情をしているだろう。


「スゲェな。これが魔法の神髄か」

「ご主人様。これは魔法ではありません」

「えっ!? 違うの?」

「構成する一つの要素であるのは間違いありませんが、大本は錬金術だと思います」

「マジか!?」


 驚きつつも、それは的を射てるかもしれない。


 ……


 いや、正解だ。

 冷静になればなるほど、この仕組みには覚えがある。


「マジックバックか」

「はい。風呂敷タイプのマジックバックに入ったときと、感覚が似ています」

「似ている、ってことは、同じじゃないのか?」

「ご主人様のマジックバックの中は浮遊感があり、ここのように足が付く感覚はありませんでした」

「なるほど。重力のあるなしか」


 そこになにかしらのエンチャントが組み込まれているのかもしれない。


「アンナ、あまり遠くに行かないほうがいいわよ」


 まるで俺がそうするのがわかっていたかのような静止だ。


「もしかして、外から見えてる?」

「プライバシーは万全よ。今回は好奇心旺盛なアンナなら、そうする気がしただけ」

「んじゃ、悪いんだけど、中に入ってきて説明してくんねえか」

「無理よ」

「なんでだよ」

「それを説明するから、パルマと一緒に出て来なさい」


 首をかしげながら、俺たちはテントを出た。


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