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7 奴隷の種類

「アンナが罰せられないのは僕がいるからなんだけど、その話をする前に、奴隷の枠組みについて話をさせてもらうね。まず大前提として、ドワルムント王国で奴隷は違法じゃないよ。むしろ、積極活用を推奨しているよ」

「まあ、合法じゃなかったら、ガンナバルト奴隷商館っていう看板を掲げること自体、おかしいからな」

「アンナの言う通りだね。僕らはドワルムント王国から、正式に許可を得て営業している由緒正しい商会なんだよ」


 マシューが指さす壁には、額縁に納められた王国からの営業許可証ならびに、審査通過証明書が飾られている。


「パルマさんが売られていた場所には、あんなモノ無かったでしょ?」


 首をひねってから、パルマが首肯した。

 即答せず、一度思考を巡らせたのはすばらしい。

 もしかしなくても、掘り出し物だ。


「つまり、パルマさんが売られていた闇オークションと、家で扱っている奴隷はまったくの別物なんだよ。その証拠に、家の奴隷には必ず枕詞が存在するからね」


 マシューが三枚の紙を並べた。

 それぞれが無金奴隷、借金奴隷、戦争奴隷について書かれている。


「文字は読めるよね?」

「はい」


 パルマが目を通す間、俺もおさらいしておこう。


 先の三つの中で一番有名なのは、無金奴隷である。

 罪を犯し、裁判によって労働や奉仕が義務付けられた者たちを、無金奴隷(そう)呼ぶ。

 刑罰であるため、無金奴隷を雇うのに費用はかからないが、だれでも雇えるわけじゃない。

 国が定める一定以上の社会的地位がなければダメだ。

 理由は、逃亡を阻止するために、見張りが必要だから。

 職場への行き帰りや作業中に無金奴隷が姿を消した場合、雇用主も捕まる。

 だからこそ、送り迎えや仕事中の監視も含め、ある程度の人材を雇うだけの金銭的余裕や、人的管理に秀でたものでないとダメなのだ。

 当然、おれも人的管理(そんなこと)をしているヒマはない。

 というより、生活環境の管理をしてほしい人間が、手を出すものじゃない。

 それは庶民の共通認識でもあり、幅広く知られている名称の割に、見かけることが少ない理由でもある。

 けど、認知度は高い。

 それはなぜか。

 外注ができるからだ。


「一か月後に縦二〇センチ、横四〇センチの肩掛けバッグが欲しい」


 というような具体的な注文書を拘置所に持っていけば、割安で作ってもらえる。

 それは拘置所で暮らす無金奴隷たちの食い扶持であると同時に、罪を償った後の社会復帰の一助にするためだ。

 だから、意外と使用している人は多い。

 無金奴隷の職場が拘置所内であるため、監視や護衛の費用が掛からないのもプラスである。


 次に有名なのは、戦争奴隷だ。

 戦時下で捕虜になったり、戦勝時の人的補償で奴隷にされた者たちを指す。

 そのほとんどが元兵士や傭兵であることから、任される仕事も護衛や先兵隊であることが多い。

 ただ、我がドワルムント王国はここ数十年大きな戦争を経験していないので、戦争奴隷を見ることは皆無に等しい。

 有名なのは、戦争奴隷という制度が存在する、という知識として学ぶ側面が大きいからだ。

 そして、戦争奴隷は基本血の気の多い者が多いので、うかつに近づくな、という教えの一因でもある。


 多そうに思えて意外と少ないのが、借金奴隷だ。

 文字通り、借りたお金を返せなくなった者が奴隷にされてしまうのだが、ここまで落ちる者は意外と少ない……わけじゃない。

 ふたを開けて調査すれば、わんさかいる。

 では、なぜ有名じゃないのか。

 理由は簡単だ。

 借金奴隷になるような輩は、大概が破滅するほどのギャンブル好きか、極度の怠け者だからだ。

 そんな奴らを雇用したい変わり者は多くないし、売るのも大変だ。

 だから、借金のカタに奴隷に堕ちた者たちは、役所に突き出される。

 犯罪者なら報奨金が出るし、裁判の結果無金奴隷になり、その一部を補填として受け取ることも可能だ。

 そうすれば衣食住の世話もしなくていいし、逃げることもない。

 難点は借金の返済が長期間になることと、利息が発生しないという点である。


 うん。

 ちゃんと覚えていた。

 胸を撫でおろす俺の横で、パルマも目を通し終わったようだ。


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