47 手配書の謎
「ムシアラ様、要人をお連れしました!」
「すぐ入れ!」
「どうぞ」
扉が開けられ中に入ると、驚いた顔のムシアラと目が合った。
「本当にアンナなのか!?」
「別人に見えるのか?」
「いや、そういうことじゃなくて……」
口ごもるムシアラは、なにが言いたいのだろう。
「先日は大変お世話になりました。おかげさまでポーラド村は平和な時を刻んでおります。アンナ様やパルマ様も、息災でお過ごしでしょうか?」
レアハムが代わりを務めるようだ。
「ああ。見ての通り、みんな元気だ」
「それは喜ばしい限りです。では、これはご存じでしょうか?」
レアハムが引き出しから一枚のポスターを取り出し、俺たちの眼前に広げた。
「マジか!?」
「えっ!?」
「わふっ!?」
信じられないのは、俺だけではないようだ。
パルマも子ナイトウルフも、驚いている。
容疑者―アンナ・クロムハイツ。王都錬金術師ギルド所属の錬金術師。
懸賞金―五〇〇〇万ドン。
目をこすったり、何度まばたきをしても、書かれている文字に変化はなかった。
……間違いない。
俺はお尋ね者になってしまった。
懸賞金も高額だ。
この額なら、賞金稼ぎも放っておかないだろう。
「なんてこったい」
なぜこんなことになってしまったのかは謎だが、王家の印が押されている以上、偽造の可能性は限りなくゼロに近い。
「こんなのおかしいです!」
「わん!」
パルマと子ナイトウルフが抗議する気持ちは、よくわかる。
正直、俺も同じ気持ちだ。
けど、ここでそれをしても意味がない。
まずは、なぜこうなったのかを確認しよう。
…………
??
おかしい。
どこにも罪状が書かれていない。
「なあ!? これって本物なのか?」
偽造は考えられないが、懸賞金の額に対して情報がなさすぎる。
これでわかるのは俺の名前と錬金術師だけで、似顔絵すら書かれていない。
「残念ながら本物です」
「罪状が書かれてない理由は?」
「国家転覆の危機があるからだそうです」
「んじゃ、なにかの間違いだな」
緊迫して重々しい口調のレアハムには悪いが、そんな大事を引き起こす力はない。
できて精々、家をゴミ屋敷にするぐらいだ。
「おれもそうだと思いたい。けど、そう簡単じゃないんだ」
ムシアラが執務机の引き出しから、もう一枚手配書を取り出した。
一見すると同じ物だが、こちらには似顔絵と罪状が記されていた。
結構なイケメンだ。
少し美化されているような気もするが、問題はそこじゃない。
罪状ー使役した魔物による王都襲撃、及び器物破損と内乱画策。
……
まったく記憶にない。
けど、思い当たる節はある。
「これが発布されたのはいつ?」
「四、五日前ぐらいだったような」
「ええ。その辺りだと記憶しています」
時期的に俺たちがイスペン村を出発したころと重なる、ということは、間違いないだろう。
「謎はすべて解けた!」
『謎!?』
「ご主人様、どういうことですか?」
「わふっ?」
ムシアラとレアハムだけでなく、パルマと子ナイトウルフも首をかしげている。
「大丈夫だ。それを今から説明する」
物語の探偵になった気分で、俺はずずいと前に踏み出した。




