表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/55

45 魔術の基礎

 失敗した……と中継地を出発してから気づいた。

 魔力探しに没頭したせいで、馬車を二頭立てにする交渉を忘れてしまった。

 おかげで、馬車の進みは相変わらず鈍い。

 そのストレスもあってか、魔力の扱いも全然上手くいかない。


「ご主人様。差し出がましいことかもしれませんが、落ち着いてください」

「うるさい!」


 パルマの指摘はもっともだ。

 自分でもイライラしているのがわかるのだから、なにも悪い事なんて言っていない。

 なのに、声を荒げてしまった。


「わん!」

「駄目よ」


 俺にむかって吠えた子ナイトウルフを、パルマが頭を撫でながらたしなめた。

 こんなことをさせてはいけない。

 悪いのは、未熟な俺だ。


「ゴメン。やつ当たりをした」

「大丈夫ですよ。わたしは本当に、何も気にしていません。遠い昔ですが、わたしも同じことを経験しましたので」


 恥ずかしそうに髪を触るパルマは、思い出すのもイヤなのかもしれない。

 長くない髪で顔を隠そうとしているのが、その証拠だ。


「もしかして、お前にもそんな思い出がある?」

「わふぅ~ん」


 モジモジしているから、あるのだろう。

 なら、俺にあるのも当然だ。

 自分だけじゃないと気づいたからか、スッと気持ちが軽くなった。

 胸に渦巻いていたイライラも感じなくなったし、今ならできる気がする。

 目を瞑り、座禅を組んだ。

 パルマのマネだ。

 深く深呼吸を繰り返す。

 何度も何度も何度も。

 ボッ、と灯が点った。

 小さな小さな灯だ。

 それを消さぬように、空気を送り込む。

 ゆっくりゆっくりと。

 呼吸や気持ちの揺らぎに呼応して、灯が大きくなったりしぼんだりを繰り返す。

 不安定だが、たしかに感じる。


(大丈夫。大丈夫。きっとできる)


 思いとは裏腹に、灯がしぼんだ。

 邪念が混じった結果だ。


「わんわん」

「シッ! 駄目よ」


 焦るような子ナイトウルフの鳴き声に反応し、灯の勢いが急激に落ちた。

 けど、消えたわけじゃない。

 立て直すには充分だ。

 二人の反応からして、これが魔力で間違いない。


(うっふっふっふっふ。いざ魔法の神髄へ)


 …………


 ダメだった。

 余計な邪念が入ったせいで、灯は消えてしまった。


「ぅふぁん」


 か細い鳴き声に目を開ければ、子ナイトウルフがうなだれていた。


「これは俺のミスだから、気にするな。単なる力量不足であって、ほかのなにものでもないぞ」

「わっふん」


 かぶりを振られても、認めることはできない。

 まごうことなき真実を、言い訳にしてはいけないのだ。

 技術を習得しようとするなら、なおさらである。


「ご主人様」

「大丈夫だ。今度こそ成功してみせる」


 豪語した以上、やりきらなければいけない。

 できなければ、子ナイトウルフがまた傷ついてしまう。

 負けられない戦いだ。


 ……


 とはいえ、熱くなりすぎてもよろしくない。

 冷静かつ、慎重に挑もう。

 再度目を瞑り、集中した。


(おっ!?)


 すぐに灯を感じた。

 あっさりすぎてビックリだ。

 もしかしたら、さっきでコツをつかんだのかもしれない。

 けど、油断大敵だ。


(慎重に慎重に)


 そう自分に言い聞かせ、ゆっくりと大きくしていこう。

 はやる気持ちを抑えるように息を吸い、静かに吐いた。

 すると不思議なことに、俺の中の灯が一回り大きくなった。

 繰り返すたび、その反応は続く。


「もしかして、できた?」

「はい! 素晴らしい成果です! ご主人様!」

「わんわん!」


 目を開くと同時に、パルマと子ナイトウルフが抱きついてきた。

 我が事のように喜んでくれている。

 嬉しいかぎりだ。

 こうして俺は、魔術の基礎を会得した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ