43 魔力の枯渇はよろしくない
「まず最初の確認です。ご主人様は現在、空腹ですか?」
「大丈夫だ。減ってない」
手を当てて確認したが、腹の虫は騒いでいない。
「では、始めましょう」
「ちょっと待った。俺が空腹かどうかは、意味あるのか?」
「今から行うのは、ご主人様の中にある魔力を、ご主人様が感じ取る練習です。しかし、それがスムーズにいくかどうかはわかりません。手こずった結果、魔力が枯渇してしまう可能性もあります。もし仮にそうなった場合、魔力の代替品として、ご主人様の体内エネルギーを消費することになります」
「体内エネルギー?」
「脳みそを動かす力、内臓を動かす力、身体を動かす力。ありていに言えば、生きるために必要な力の総称、と捉えていただけばよろしいかと。そして、それらを消費してしまうと、体に異常をきたすこともあります」
「そりゃそうだろうな」
聞いただけで、大事なモノだと認識できる。
「けど、そこまで恐れるモノでもございません。体内エネルギーが欠けたとしても、日常生活に支障をきたさない場合は、多々あります。ご主人様も一度は確認したことがありますので、ご納得いただけますよね」
??
そんな出来事に遭遇した記憶はない。
もっというなら、魔法使いとの思い出がない。
あったとしても、王宮ですれ違ったくらいだ。
俺が密に接した魔法使いがいるとするなら、パルマが最初だ。
「あっ!?」
「気づかれましたか?」
「もしかして、あの食事の量は、体内エネルギーの枯渇が原因だったのか?」
「正解です」
拍手してくれたが、外れていてほしかった。
あの量を食べなければ回復しない状況下にいた証拠であり、苦境以外のなにものでもない。
「大丈夫なのか?」
「大丈夫です」
満面の笑みと力こぶを作るような仕草は、ウソとは思えなかった。
顔色もいいし、無理もしていなさそうだ。
「ならよかった」
「ありがとうございます。それもこれも、全部ご主人様のおかげです」
「いや、俺はなにもしてないぞ」
「奴隷のわたしを競り落とし、お腹いっぱい食べさせてくださいました。あの食事のおかげで、わたしの魔力は回復したのです」
「そうだったのか」
「正直、野盗に襲われたときも奴隷商の館で監禁されているときも、食事はおろか寝床もひどい有様でした。魔力で肉体を保護しなければ、死んでいたかもしれません」
淡々と話す姿は真実味に溢れているのと同時に、そうなってもよかった、というようにも聞こえる。
「わん」
近寄った子ナイトウルフが、パルマに優しく体をすり合わせた。
「ありがとうございます。けど大丈夫ですよ。わたしは元気に生きていますし、これからもご主人様のために生きますから」
本音は自分本位に生きてほしいが、パルマがそれを選ぶなら文句はない。
大事なのは、人生の満足度だ。
「とはいえ、魔法を使うのは考えものだな」
「大丈夫です。最初に言いましたが、何かあったらわたしがサポートします。けど、万が一体内エネルギーを消費して空腹になった場合、すぐに補給はできませんので」
「なるほど。もし仮に今俺が空腹だったら、より大変なことになるわけだ」
「ええ。わたしがいなければ、最悪死ぬかもしれません」
「わんわん」
子ナイトウルフがかぶりを振っている。
自分もいるし、なにかあったら任せとけ! という意思表示だと思うが、心許ないのも事実であった。
けど、その心意気を無下にしてはいけない。
「なにかあったら頼むな」
「わん!」
真っ直ぐ目を見る俺に、子ナイトウルフが強くうなずいた。




