42 不満からの好奇心
勢いは弱まったが、依然雨は降り続いている。
ぬかるんだ悪路が馬の脚を鈍くさせ、容赦なく体力を奪っていく。
休憩の回数も増える一方だ。
しかたがない。
と思いつつも、モヤモヤが募る。
俺としては一刻も早く魔檻の森への不干渉を約束してもらい、錬金術の向上に没頭したいのだ。
けど、これではいつ王都に着けるかわからない。
「う~ん。どうしたものか」
「ご主人様。何を悩んでいらっしゃるのですか?」
「移動速度だ」
「ああ、確かに落ちましたね」
「わん」
パルマと子ナイトウルフも不満そうだ。
「大きい声じゃ言えねえけど、なんで一頭立てなんだろうな?」
片道一週間近くかかることを思えば、解せない判断だ。
「本来なら乗せるのはセーバス様だけだったからではないでしょうか」
「でも荷物があるだろ」
「それらは徐々に減っていきます」
「……なるほど」
人数は変わらないが、荷物は距離が進むごとに軽くなるわけだ。
御者の想定としては、これがベストだったのだろう。
けど、それはセーバスが相手のときだ。
客が増えた時点で、馬も増やすべきだったと思う。
「わん」
子ナイトウルフもうなずいている。
「もし仮に不足を感じたら、中継地で補充するでしょう」
そうあってほしいが、いまいち信用できない。
「わんわん」
これにも同意してる。
勝手な解釈かもしれないが、間違っていないと思う。
「う~ん。どうしたものか」
再度言葉にしたところで、どうにもならない。
俺が馬と一緒に引っ張ったところでたかが知れているし、パルマも同様だ。
子ナイトウルフならワンチャンあるかもしれないが、元気すぎて釣り合わないだろう。
というか、馬と同等かそれ以上の力を示した時点で、犬と言い張れなくなってしまう。
そんな本末転倒の結果は、受け入れられない。
「しかたない。ジッとしていよう」
有り余る時間は、子ナイトウルフと遊んだり、錬金するモノの構想に充てればいい。
…………
あれから三日過ぎた。
なのに、中継地の村には着いていない。
降り続いている雨が原因である。
……ダメだ。
このままじゃ、心が保てない。
子ナイトウルフと遊んでいるときはまだいいが、あれやこれやと試作品の案を練っていたこともあり、すごく錬金したい。
今なら、ものすごいモノが作れる気がする。
けど、道具がない。
ストレスだ。
「ご主人様、大丈夫ですか?」
「ダメかもしれない」
「わんわん」
子ナイトウルフを撫でているが、アニマルセラピーも効かなくなりつつある。
「錬金できないのがツライ」
今までの日常がすごく恵まれていたのだと気づき、没頭できるモノがある幸せも覚えた。
だからこそ、それを体現したい。
「ご主人様。代わりになるかどうかはわかりませんが、魔術の特訓をしてみませんか?」
「えっ!? 俺でもできるの?」
時折パルマが行っている瞑想のようなモノを横目で観察していたが、素人にできるとは思えなかった。
「初歩の初歩なら問題ありません。もし万が一暴発しそうになっても、わたしが対処します。ご主人様におケガはさせませんので、ご安心ください」
またとない提案だ。
魔檻の森に施されていた時を止める魔法と、それを永続させる錬金術を追求するためにも、俺が魔法に触れるのはプラスしかない。
新しいことに挑戦するのも、わくわくする。
「んじゃ、ご教授お願いします」
「はい。お任せください!」




