41 旅の仲間が増えた
ぱかぱかぱかと、馬車はゆっくり進んでいる。
本音はもう少し急いでほしいが、一頭立ての馬車だから無理はいえない。
……
早々に手持ちぶさたになってしまった。
なにをして時間を潰そうか考えていると、
「バウバウ」
子ナイトウルフが馬車に飛び込んできた。
「バウバウバウ」
身体を摺り寄せ、抗議するように吠えている。
「連れて行ってほしいのか?」
「バウ!」
うなずいているので、そういうことなのだろう。
連れていくのはやぶさかではないが……
「ご主人様」
パルマの不安そうな表情も理解できる。
犬っぽいが、ナイトウルフは立派な魔獣だ。
ビーストテイマーが同行しているなら無害を主張できるが、いない現状ではむずかしい。
なにかあった場合、最悪討伐される可能性だってある。
そんな光景は、俺もパルマも見たくない。
「はっはっはっ。立派な犬ですね。でもこんな所まで追いかけてくるなんて、ずいぶん寂しがりやじゃないですか」
(んん!?)
御者には、ナイトウルフが犬に見えているのだろうか。
「立派な面構えをしてますが、極度の甘えん坊さんですね」
「この子、犬に見えてる?」
「質問の意味がわかりませんが、犬以外の何者でもないですよ。まさか、実はナイトウルフでした、なんていう気じゃないでしょうね? だとしたら、ギャグセンスないですよ」
「ヒ、ヒ、ヒ、ヒ、ヒン」
御者だけでなく、馬にも笑われた。
若干腹立つが、ここはポジティブに捉えよう。
詳しく説明しなければ、子ナイトウルフは成犬でイケるのだ。
「犬のフリできるか?」
「バウ」
かぶりを振られた。
その仕草や表情から、断固とした拒否が伝わる。
プライドが許さないようだ。
「なら、魔檻の森に帰るんだ」
「バウバウ」
「ワガママをいってもダメだ。帰りなさい!」
身体を押し、馬車の外に追いやろうとするが、必死に踏ん張っている。
「バ~ウ」
「パルマの陰に隠れてもダメだ。帰りなさい!」
「ご主人様、少しお待ちください」
俺を手で制し、パルマが子ナイトウルフに向き合った。
「バウバウ」
「ご主人様はお前を邪魔者扱いしているわけじゃなく、お前の安全を考えておられるのよ」
「バウ?」
「お前は魔獣だから、冒険者に遭遇したら殺されてしまうの。ご主人様はそれがイヤだから、お前に犬のフリをしてほしいの」
…………
「わん」
パルマが目線を合わせて真摯に説得したかいもあり、子ナイトウルフは成犬となることを了承した。
「本当にいいのか?」
「わん!」
俺の最終確認にも、しっかりうなずいている。
これなら大丈夫だ。
「ペットの追加って大丈夫?」
「お代をいただけるなら、問題ありませんよ」
「いくら?」
「五〇ドンです」
「すぐに支払おう」
「いえ、後でお願いします。それと、少し停車しますね」
路肩に馬車を停め、御者が荷物から取り出したフード付きのローブをあわてて羽織った。
雨でも降るのだろうか?
空は明るくそんな気配はないが……ポツンッと水滴が落ちてきた。
一滴、二滴、三滴……雨が降り始めた。
「濡れないよう、奥に入っていてください」
すぐに雨足が強くなり、荷台のホロの出入り口が塞がれた。
ゴロゴロゴロと、雷の音も聞こえる。
「スゲェな。濡れなかったお前は、ラッキーだぞ」
「わん」
旅の同行者が増えたのと同時に、馬車の速度がぐんと落ちた。




