表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/59

35 魔檻の森の家を貰う

「単刀直入に訊くわ。アンナは魔檻の森に、なにをしに来たの?」

「錬金術の神髄に触れるために」

「それを後押ししたのは誰?」

「ご先祖さんかな」


 ルシファーに手紙を見せた。


「これをどこで?」

「ん~と、ちょっと待ってな…………おっ、あったあった」


 マジックリュックをゴソゴソ漁り、一冊の本を取り出した。

 これは先祖が遺した錬金術の指南書であり、件の手紙はこれに挟まれていたモノだ。


「驚いた。その本、まだあったのね。あたしも正確な時期は知らないけど、数百年以上前に書かれたモノよ」

「マジか!?」

「ええ。間違いないわ」

「にしては、キレイすぎねえか?」


 大事なモノではあるが、あのゴミ屋敷(いえ)で保管していたのだ。

 経年劣化は加速している。


(うん。間違いないな)


 よく観察しなくても、変色や表紙にある小さな擦り傷が目立つ。

 けど、装丁はしっかりしているし、破れもない。


「ご主人様、これが数百年の本とは思えません」

「あたしも同意見だけど、錬金術の神髄の一つ、と考えればどうかしら」

「なるほど。だとしたら、ご先祖さんはスゲェな」


 どうやったらこれほどのモノができるのか、俺には想像もできない。

 けど、現物がそこにある。

 なら、研鑽の先に辿るつける境地なのだろう。

 そこに到達できるかはわからないが、挑戦すべき高みであり、わくわくが止まらない。


「好奇心が抑えられないのは、ご先祖様そっくりね」

「えっ!? 知ってるの?」

「お会いしたことはないけど、お婆様から思い出話をよく聞かされたわ」

「お婆さんはご健在?」


 ルシファーがかぶりを振った。

 残念だ。

 元気なら、俺も話を聞かせてもらいたかった。


「それはそうと、アンナたちはこれからどうするつもりなの?」

「さっきも言ったけど、錬金術の神髄に触れたい」

「違うわ。あたしが訊いてるのは、どこに住んでどう生きていくつもりなのか、ってことよ」

「その辺は、あんま深く考えてなかったな」


 突然の国外退去処分を受けての行動だっただけに、計画は皆無だ。


「なら、魔檻の森にある家は、アンナの自由にしていいわよ」

「えっ!? いいの?」

「もちろんよ。けど、いくつか条件を出させてちょうだい。まず第一に、争いを持ち込まないこと」

「当然だな。平和な日常ほど、尊いものはねえからな」

「第二に、魔族領と取引してちょうだい」

「その商談、我らも一口噛ませていただけませんか?」


 ラウルの申し出は一向にかまわないが、ルシファーはどうだろうか。

 大丈夫そうだ。

 俺の目配せに気づき、うなずいている。


「んじゃ、魔族との窓口がルシファーで、人間との窓口がラウル……って言いたいところだけど、ドワルムントに確認してからだな」


 一応王国と専属契約を結んでいるから、勝手なことはできない。


「では、それは私たちがいたしましょう」


 せっかく来たのに舞い戻るのも面倒臭かったので、ありがたい申し出だ。


「お願いします」

「お任せください」


 胸を張るラウルは、非常に頼もしかった。


「残念だけど、本契約は先になりそうね。けど、交渉はしてもいいわよね」

「もちろん」


 渡りに船だ。

 現金の余裕はまだあるが、先々を考えれば収入を確保しておきたい俺にとって、いいことしかない。

 それに、詰めの交渉だけにしておけば、すべてがスムーズに運ぶ。


「じゃあ、場所を変えましょう」


 ルシファーが席を立った。

 交渉において、第三者(ラウル)の耳に入れたくない話もあるのだろう。

 まあなんにせよ、俺に異論はなかった。


「んじゃ、魔檻の森にある家にしよう。あそこなら、ラウルたちとも連絡をつけやすいだろ」

「ご配慮感謝します」


 ラウルが頭を下げるが、そんなことはしなくていい。

 むしろ、そうしなければならないのは、世話になる俺の方だ。


「いろいろありがとう。これからもよろしくお願いします」

「こちらこそお願いします」


 俺とラウルは固い握手を交わした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ