33 ラウルが迎えに来た
「もしかして、ずっとここで待っていてくださったのですか?」
「皆様が日暮れまでに戻らなければ、捜索隊を派遣するよう、ラウル様より言付かっておりましたので」
出発前に言ってくれれば断った……からこそ、セーバスは告げなかったのだろう。
自分たちの都合で、俺の行動に制限をかけたくないのだ。
セーフティーネットが用意されていたのはありがたいが、そこまでしてもらっていいのだろうか。
イスペン村に貢献したのは先祖であって、俺ではない。
とはいえ、アレコレ訊きたいのも事実であった。
ここは、先祖の功績に甘えさせてもらおう。
「目的の家を伺ったのですが、あいにく留守でした。家主はどんな方かご存じですか?」
「魔檻の森に居住されている人間は、長いこといらっしゃいません」
「えっ!? ずいぶんと手入れが行き届いた住居のように見えましたけど……」
「もしかしたら、冒険者が使用したのかもしれませんね」
なんらかの目的で魔檻の森に入った冒険者が、一時避難や夜を明かすために侵入した、という主張なんだとしたら、それはない。
というか、結界に阻まれて近寄れないはずだ。
いや、俺が知らないだけで、出入りする方法があるのかもしれない。
「一つ確認したいのですが、セーバスさんはこの先にある結界をご存じですか?」
「話には聞いておりますが、実際この目で確認したことはございません」
「では、そこを通り抜ける方法は?」
「存じ上げません」
「揚げ足を取るようで申し訳ありませんが、先ほど冒険者が使用していたんじゃないかとおっしゃられた家屋は、結界の内側にあります」
「これは大変失礼いたしました。私、件の家は結界の外にあるもの、と早合点しておりました」
目を見開き、頭を下げるセーバスを責める気はない。
現場を見ていない彼が誤解しても、しかたがないことだ。
けど、腑に落ちない。
村長の右腕っぽいセーバスが、村にほど近い場所を知らない、なんてことがあるのだろうか。
「嘘ではございませんよ」
俺の疑念を否定したのは、護衛らしき冒険者を数人引き連れたラウルだった。
やたらいいタイミングでの登場だ。
「これはこれは。坊ちゃん自らお越しとは、いかがなされました」
「クロムハイツ様との面会を希望される客人が訪ねてきたので、迎えに来たんだ」
「俺に面会……ですか?」
「ええ。直接ご指名を受けたので、間違いありません」
全く身に覚えがないし、訪ねてくる知り合いもいない。
「ご主人様、お気を付けください」
パルマの耳打ちは聞こえていないと思うが、ラウルが苦笑した。
「警戒されるお気持ちは理解できます。しかし、我々に他意はありません。こうしてお迎えにあがれたのも、客人がそうしろと助言してくださったからです」
「よくわかりませんが、その客人は俺が魔檻の森から出てくることを知っておられたのですか?」
「断定は出来かねますが、そうだと思います。それと、詳しい話は本人より直接お聞きください」
「その当人はどこにいるんですか?」
「我が家で優雅にお茶を楽しんでいらっしゃいます。皆さんの分もご用意してますので、どうぞいらっしゃってください」
会わない、という選択肢はないようだ。
それならそれでかまわない。
俺の中にある疑念や疑問を、盛大にぶつけさせてもらおう。




