表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/56

21 シャバシャバはよろしくない

「これは俺が作った特殊な塗料で、市販はされていない。もちろん、製造工程も秘密だ」

「当然だな。こんなもんがあると知れ渡ったら、戦争の引き金になるぞ」

「それは言い過ぎ……でもないが、ここにいる人間が外に漏らさなければ大丈夫だ」

「いや、設置した段階でバレるだろ」


 それは的を射た指摘だが、的外れでもある。


「実はこれな……薄めると強度も落ちるんだ」

「えっ!? じゃあ、駄目じゃないか」

「そんなことはない。王都からの警備隊が着くまでの時間稼ぎなら、充分できる」


 雨風で劣化するとしても、半年は維持できる。


「でも」

「不安なのは理解できるが、(これ)しか現物はねえんだ。村を囲う防御策を塗るとしたら、薄めて使うしかねえだろ」

「作れないのか?」

「作れるけど、簡単じゃない」

「そりゃそうだよな。こんな凄い物が、右から左につくれるわけがないもんな」


 ムシアラは納得しているが、実はそうでもない。

 素材と時間さえあれば、割と簡単に作れる。

 けど、それを言うとややこしくなるので、黙っていよう。


「アンナ様。実際問題として、塗料(これ)はどれほど薄めて使用すればよろしいのですか?」


 ムシアラに代わり、レアハムがそう訊いてきた。


「ナイトウルフ相手なら、極薄で大丈夫だ」


 大事なのは、確実に塗ること。

 それさえ怠らなければ、問題は起きない。

 というのも、先日の錬金術の失敗で家が倒壊しなかったのも、これを壁に塗っていたからだ。

 あの爆発に耐えたのだから、ナイトウルフなど脅威ではない。


「試してもいいか?」

「もちろんだ」

「レアハム。皿と水を用意してくれ」

「了解しました」


 それらはすぐに用意され、刷毛に残った塗料が薄められた。

 シャバシャバだ。

 あまりの薄さに、乳飲料を想起してしまう。


(大丈夫か? これ)

「大丈夫か? これ」


 俺は心中で、ムシアラは声に出して、同じ心配をしていた。

 その違いは、製作者としてのプライドだ。

 声に出さないぐらいの、信頼と自信は持ち合わせている。


「じゃあ、やるぞ」


 さっきとはべつの脚に塗り、ムシアラが剣をかまえた。


「いいぞ。やってくれ」

「はっ!」


 ガンッ!


 さっきより多少いい音がしたが、切断はしていなかった。


「よし!」


 思わずガッツポーズをしてしまった。

 けど、よく見ると刃が入ってる。


「ん~、悪いけど、さっき三獄斬りってやつを試してもらっていいか?」

「いいぞ」


 ガンガンスパッ!


 二撃には耐えたが、三撃目で脚は切断された。


「ダメか。ちなみに、いまの技ってどれぐらいの威力?」

「三獄斬りは三連撃を磨き上げただけだからな。威力は上級冒険者の三連撃(それ)と同じぐらいだな」

「なら、もうちょっと濃くしたほうがいいかもな」

「具体的には?」

「う~ん」


 ある程度濃くはしたいが、残量を考えたら慎重にならざるをえない。


「ご主人様、総量から考えるのがベストだと思います」

「うん? どういうこと?」

「例えば村を囲む防御策が五〇個必要なのだとしたら、予備も含めて八〇~一〇〇は用意すべきです、なら、塗料の濃さはそれらを余すことなく濡れる程度、と考えるのがベストではないでしょうか」


 なるほど。

 間違いなくその通りだ。


「なら、後はムシアラたちで判断してくれ」

「おいおい!? そんな無責任でいいのか?」

「悪いとは思うが、俺たちは二日後にはポーラドを離れるからな。作業を含めた諸々はムシアラたちに任せるしかねえんだ」

「そう……だな。でも出発までの間、手を貸してほしい」

「それは約束する」

「ありがとう」

「ありがとうございます」


 ムシアラとレアハムが深く頭を下げた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ