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18 出前は美味い

「お待たせしました」


 おかもちを持って現れたのは、パルマだった。


「ご注文の味噌ラーメン大盛、カタヤキソバ、しょうが焼き定食、チャーハン、餃子二皿、油淋鶏、シュウマイ五個、春巻き四本、唐揚げ六個、チンジャオロース、レバニラ炒め、杏仁豆腐、マンゴープリン、月餅、紹興酒二本です」


 オランゲと書かれたデニム生地のエプロンを身につけ、ささっと商品を並べる姿は立派な出前持ちだ。

 にしても……パーティーでも開かれるのだろうか。

 とてもじゃないが、三人で食う量とは思えなかった。


「こんなに頼んでいませんが」

「ご安心ください。ほとんどが当店からのサービスです」

「そうですか。ではありがたく頂戴します」

「マジか!? いくらなんでも多すぎだし、パルマが運んでくる意味もわかんねえぞ」


 ギルドマスターと受付嬢が憐憫の目をむけてくる。

 おかしなことを言ってるつもりはないが、俺がおかしいのだろうか。


「わたしが説明します」


 パルマがドンッと胸を叩いた。

 自信満々のようだし、任せよう。


「こちらのギルドから出前の注文が入ったのは、わたしたちが宿泊している宿の食堂です。本来ならわたしが手伝う必要はありませんが、厨房が大忙しのところに出前注文が入り、お店の方がプチパニックになりました」


 他人事のように言っているが、たぶん原因はパルマだ。

 王都のレストランのときと同様に、ものすごい量を注文したのだろう。

 そこに出前が重なったから、店側はテンパったのだ。


「ギルドからの注文でしたので、ご主人様がいるであろうことも推測できました。好物のしょうが焼きも一助になりました」

「あれ? 俺がしょうが焼き好きって言ったっけ?」

「王都のレストランでのウエイトレスとのやりとりで察しました」


 見事な洞察力だ。

 しかし、それができるなら、今回のことは自分が原因であるとも気づいてほしい。


「店がてんてこ舞いの様子でしたので、わたしが配達を買って出ました」


 その礼とまだ提供していない品を含めて、サービスしてくれたようだ。


「なるほど」


 要はパルマごと追い出したわけだ。

 けど、店を批難するつもりはない。

 あの食べっぷりは、だれであっても脅威だ。


「素晴らしいメイドを雇っているな」

「お褒めにあずかり光栄です。どうぞ皆様、冷めぬうちにご賞味ください」

『いただきます』


 俺たちは食事を開始した。

 白米を左手に持ち、右手に持った箸でしょうが焼きを掴む。

 薄切り肉にソースが絡まり、イイ感じだ。

 それを白米にワンバンさせ、口に放り込んだ。

 ちょっと濃い……というか、塩辛い。

 ハズレだ。

 けど、残したりはしない。

 いただきますは食材の命をいただきますということだから、完食するのが筋である。

 これは決して、俺の貧乏性を隠すための言い訳ではない。

 とはいえ、塩分過多で病気になりそうなのも事実であり……どうしたものか。


(んん!?)


 気づいてしまった。

 付け合わせの野菜の量がハンパない。

 これで中和すれば、ちょうどよくなる気がする。

 行儀は悪いが、すべてを混ぜてもう一口食べた。

 アタリだ。

 すべてがちょうどいい塩梅に落ち着いている。

 箸が止まらない。


「あっ!」


 気づけば、白米がなくなっていた。

 けど、おかずはまだ残っている。


「ご賞味ください」


 パルマがチャーハンを置いた。

 迷う。

 しょうが焼きには圧倒的に白米派なのだが、米も欲しい。


「っていうか、コレを俺が食ってもいいのか?」

「問題ありません」


 パルマの肯定に、ギルドマスターたちがうなずいている。

 言葉を発しないのは、口いっぱいに頬張っているからだ。

 ちなみに、ギルドマスターが味噌ラーメンで、受付嬢がカタヤキソバを食している。


「……いただきます」


 少し迷ったが、俺はチャーハンに手を付けた。

 薄味だが、ニンニクのパンチが効いている。

 しょうが焼きとの相性も悪くない。



「ごちそうさまでした」


 食事を終えた俺の腹は、パンパンだ。


『うううう』


 ギルドマスターも受付嬢も苦しそうだ。

 途中からパルマも加わりなんとか完食したが、死闘だった。


「これも美味しいですね」


 俺は見てるだけで吐きそうだが、パルマは最後の月餅まで舌鼓を打ち続けている。

 苦しそうな様子は微塵もなかった。


「残念。これで終わりですね」


 最後の一口を、しょぼくれた表情で口に放り込んだ。

 見事としか言いようがないが、食費を負担し続けることを思うとゾッとする。

 が、いまはそれより大事な話があった。


「防壁を作るのはやぶさかではないが、報酬はどれだけ出せる?」

「一〇〇ドン」


 まいった。

 その額に見合う物だと、大したものが作れない。

 一時しのぎなら問題ないが、長期の安心には心許ない品になってしまう。


「う~ん」


 どうしたものか。


「ご主人様はなにを悩んでいらっしゃるのですか?」

「いろいろだ」

「それを詳しくお話しいただけませんか? もしかしたら、わたしたちが御助力できるかもしれません」


 パルマの提言に、ギルドマスターと受付嬢もうなずいている。

 まさしくその通りだ。

 一人であれこれ悩むより、みんなで知恵を出し合ったほうがいい考えが浮かぶに決まっている。


ブックマークやリアクション、ありがとうございます。

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