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閑話 パルマの胸が痛む

 生きたまま亜空間に収納されるというミラクル体験をしたわたしに、ご主人様は身の振り方を尋ねてきた。


「わたしはご主人様の奴隷ですので、ご一緒します」

「その契約なんだけど、破棄してもいいぞ。あれはいまの生活があってこそ成り立つモノだったからな」


 そんなことはない。

 労働は王都に限る、なんて禁足事項はなかったはずだ。

 だから、わたしの意思は変わらない。

 放逐されない限り、ご主人様の側にいる。


「そうか。でも、これからむかうのはイスペンだぞ」

「イスペンとは……あのイスペンですか!?」

「あのかどうかは知らねえけど、魔族領近くのイスペンだ」


 驚いた。

 あそこは治安が悪く、好んでいくような場所じゃない。

 けど、わたしの決断が揺らぐことはなかった。


「ご一緒します!」

「んじゃ、いくか」


 あっさりと認められ、わたしたちは馬車で王都を後にした。



「なんであのデブは、パルマにこだわったんだろうな?」


 旅の道中、ご主人様がそう漏らした。

 それはわたしも同感だ。

 立場ある者(貴族)が奴隷を娶ることはないし、自分に一〇〇〇万ドンの価値があるとも思えない。

 いや、絶対にない!

 けど、わたしの秘密を知っている者がいたとしたら……話は変わる。

 ご主人様は……どうだろう?


「特技はある?」


 そう訊いてくる時点で、知らないのだと思う。

 本来ならこのタイミングで打ち明けるべきだが、耳ざとい者がいるかもしれない。


「胸を張れるようなモノはありません」


 面倒なことに巻き込まないためにも、わたしはウソをついた。

 チクッと胸が痛む。


(ご主人様には、落ち着いた場所で話そう)


 胸の痛みが大きくなる。

 それが言い訳であると、理解しているからだ。


「ぎゃあああああ」


 馬車が揺れたと思ったら、叫び声まで聞こえてきた。

 ナイトウルフの群れに襲撃されているようだ。

 このまま放置すれば、ご主人様に危害が及ぶかもしれない。


「ご主人様、わたしが参戦してもよろしいですか?」

「えっ!? 戦えるの?」

「わたし自身は素人に毛が生えた程度ですが、ゴーレムを作ることはできます」


 創造魔法は得意分野だ。


「何体作れる?」

「大きさにもよりますが、四、五体はいけます」

「なら、冒険者を助ける人間サイズのモノを二体と、馬車を守る大型のモノを一体頼む」

「ビルド!」


 最も早く完成するアイアンゴーレムを創造した次の瞬間、ご主人様が手にした玉をゴーレムの胸に押し当てた。


「ご主人様なにを……って、ええっ!?」


 信じられないことが起きた。

 アイアンゴーレムが、格闘家とプロレスラーに生まれ変わったのだ。


「こここ、これは一体」

「説明は後でするから、まずは命令を与えてくれ」

「わかりました。創造主パルマ・トーチスが命ずる。魔獣を駆逐し、馬車を守り抜け!」

『了解しました!』


 喋った!

 ありえない現象に呆けるわたしを尻目に、ゴーレムがあっという間にナイトウルフを駆逐していく。


「ありがとう」

「助かった」

「君は命の恩人だ」


 冒険者たちは口々に礼を言うが、相手が違う。

 その言葉は、ご主人様に言うべきなのだ。

 急造のアイアンゴーレムでは五分がいいところで、七、八割の確率で負けていた。

 すべてが上手くいってやっと逃げられる、程度の可能性があっただけで、完勝などありえなかった。

 それが達成されたのは、ご主人様がいたからだ。

 アイアンゴーレムを進化させる(アイテム)を作れる錬金術師など、聞いたことがない。

 ただ本人にとんでもないモノを使用した実感はないらしく、嬉しそうにナイトウルフを解体している。

 その姿を見て、稀代の錬金術師だと認識する者はいないだろう。


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