表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/55

閑話 パルマの隠し事

 ご主人様に買われたわたしは、幸運だと思う。


 …………


 まあ、旅の途中で賊に襲われ、奴隷オークションにかけられた時点で不幸とも言えるが、深く追求しなければ問題ない。

 うん。問題ない。

 どうせ遅かれ早かれ、そうなっていたはずだ。

 ……わたしって、不幸なのかしら。

 まあなんにしろ、絶望しかなかった未来に光明が差した。

 そして、その光を当ててくれたご主人様に、精一杯仕えよう。

 と思っていたら、ご主人様の友人であるマシュー様のもとに連れていかれた。

 そして、わたしが望むなら、元の生活に戻ることも可能だと言われた。


(えっ!? マジですか?)


 口から出そうになった言葉を呑み込み、ご主人様を見る。

 ウソは言ってなさそうだ。

 旅人に戻るという選択肢もあるが、わたしはそれを拒否した。

 もし仮にそうなるのだとしても、ご主人様に恩を返してからだ。


「うし。んじゃ、手続きをするか」


 雇用契約書にサインし、わたしは正式にご主人様のメイドになった。



 帰り道に立ち寄ったレストランでの食事はむずかしかった。

 ご主人様は遠慮なく好きな物を注文しろと言ってくれたが、いいのだろうか?

 今のわたしは、とある理由でものすごく食べる。

 下手をしたら、レストランの食材がなくなるかもしれない。


「店の食糧庫を空にしてもいい」


 ご主人様から許可が下りた。

 なら、遠慮はしない。


「シーフードサラダと、メニューに載ってる肉料理をすべてお願いします」


 次々に出てくる料理は、どれも絶品だった。

 量も多くて幸せだ。

 しかも、わたしが満腹になったのと同タイミングで給仕が終わった。

 最高! としか表現できない。



 ただ、それも長くは続かなかった。

 ご主人様のお家はゴミ屋敷で、掃除を頼まれたからだ。

 食事前なら問題なかったが、力が有り余っている今は加減が上手くできない。

 掃除をするはずなのに、家具を壊してしまう始末だ。


「すみません」


 頭を下げるわたしを責めることなく、ご主人様は来客の対応に出られた。


 …………


 戻ってきたご主人様は、わたしの手を引き別室に入った。


「これに詰めるだけ詰めてくれ」


 言われた通り渡されたリュックサックにいそいそと詰め始めたが、すぐに手が止まった。

 どう見ても小ぶりのリュックサックなのに、驚くほど入る。


「ご主人様! これは一体どうなっているのですか!?」

「それは俺が作ったマジックリュックだ。詳しい説明は後でするから、いまは作業を続けてくれ。それと、おれは隣りの書斎に行ってくる」

「わ、わかりました」


 訊きたいことは山ほどあるが、まずは作業を進めよう。


 ……


 信じられない。

 部屋にあった物が、すべてリュックサックに収納された。

 相当な重量であるのは間違いない。

 けど、簡単に背負えてしまう。

 重さをまるで感じない。


 ぞくっ


 背筋が震えるほどの逸品だ。

 その価値を想像したら怖くなり、わたしはリュックを降ろした。


「ただいま」


 世界を一変させる代物を作り出した天才が戻ってきて、風呂敷を床に広げた。

 これが普通の風呂敷であるはずがない。


「んじゃ、リュックを背負ってこの上に乗ってくれ」

「こ、これでよろしいですか?」


 死ぬ覚悟をもって、わたしは正座した。


「うそでしょ!?」


 風呂敷の中は異空間だった。

 ぷかぷかと浮いているような感覚があり、息も吸える。

 まるで母の胎内にいるような心地よさだ。

 なのに、背中が震えた。

 未知の体験に恐怖したのもあるが、稀代の天才と知り合えた幸運に震えている。

 この出会いがわたしの人生を一変させるのは、疑いようがなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ