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命の瀬戸際に逆転の兆し

ガルディアとの交渉でリチウムとパラジウムの供給を握り、裏切り貴族クロウを追放した俺、ユート・フォン・アルテア。アルテアの街には笑顔が戻り、国庫も少し潤ってきた。メイドのリアが「ユート様、国民みんな感謝してます!」って笑ってくれるたび、胸が熱くなる。

でも、俺の体はもう限界だ。

「うっ……くそっ、また……!」

夜の自室、鏡の前で鼻血が止まらず、頭がガンガンする。【物質変換】の代償が日に日に重くなってる。昨日、砂をレアアースに変換した時、5分間意識が飛んだ。医者に「このままじゃ長く持たない」って宣告されたけど、国民には言えない。

「俺が止まったら、アルテアが終わる……けど、死にたくねえよ……」

社畜時代、ただ耐えるだけだった俺が、今は国中の命を背負ってる。重すぎる。夜中、枕に顔を埋めて震えてると、リアがそっと入ってきた。

「ユート様、無理しないでください……私、ユート様がそんな顔するの、見てられないです。」

彼女の涙声に、俺の心が締め付けられる。

「リア、ありがと。俺、諦めねえ。絶対、みんなを守る。」

でも、内心は恐怖でいっぱいだ。神様(らしき何か)の声が頭に響く。

「代償を払え。命を差し出せ。」

くそっ、どうすればいいんだ!?


---



朝、宰相が青ざめた顔で飛び込んできた。

「王子殿下! ガルディアが魔導兵器の実験を始めました! アルテア国境近くで、です!」

「魔導兵器!? あの魔導艦の話か!?」

「いえ、新型です! リチウムを動力源にした『魔導砲』……一撃で街を消滅させる威力だと!」

ガルディアの魔術師リゼット、あの女が絡んでるに違いねえ。彼女の「次は甘く見ない」という言葉が頭をよぎる。リチウム供給を握ってる俺を試す気か? それとも、アルテアを潰す気満々か?

「リゼットを呼べ。直接話す。」

数日後、王都の交渉室。リゼットが一人で現れた。黒いローブに鋭い微笑、まるで俺の心を見透かすような目。

「ユート王子、魔導砲の噂、聞いたかしら? リチウムがなければ動かないの。供給を倍にしないと、国境で『実験』しちゃうわよ?」

「脅し? ふざけんな。リチウム止めたら、ガルディアの全兵器が止まるぜ。」

リゼットがクスクス笑う。

「ふふ、頭いいわね。でも、アルテアの貴族がパラジウムの秘密を売ってくれたの。もう、ユート王子がいなくても作れるかも?」

「なっ!? 誰だ!?」

その瞬間、背後から剣の音。振り返ると、騎士団長ガルドが剣を抜いて俺に迫る。

「王子、すまない。ガルディアの金の方が未来がある!」

裏切り者、ガルド!? リアが叫びながら俺をかばう。

「ユート様、逃げて!」

「リア、危ねえ!」

間一髪、宮廷魔術師がバリア魔法でガルドを弾いた。だが、混乱の中、リゼットが不敵に笑う。

「ユート王子、選んで。リチウムを倍にするか、アルテアを灰にするか。」


---



ガルドは拘束したが、状況は最悪だ。ガルディアがパラジウムの秘密を掴んだかもしれない。俺の【物質変換】が唯一の切り札じゃなくなる。しかも、体はもう動くのもキツい。

それでも、諦めるわけにはいかねえ。国民の顔、リアの涙、全部俺の背中にのしかかる。

「リゼット、交渉だ。リチウムは1.5倍。それ以上は無理。代わりに、魔導砲の実験を国境から100キロ離せ。」

「ふーん、強気ね。でも、1.5倍じゃ足りないわ。2倍と、ユート王子の『能力の秘密』を教えなさい。」

「秘密? ハッ、俺の命そのものだよ。教えられるわけねえだろ。」

現代知識をフル回転。ガルディアの魔導兵器はリチウム依存度が高いが、効率が悪いはず。だったら、別の資源で揺さぶれる。

「リゼット、バイオ燃料って知ってるか? リチウムより効率3倍の新素材。アルテアが開発中だ。リチウム2倍よこせってなら、バイオ燃料の取引は他国に持ってくぜ。」

リゼットの目が揺らぐ。よし、ブラフが効いた! バイオ燃料はまだ試作段階だが、現代知識なら本物に見せられる。

「……面白いわ、ユート王子。1.5倍と国境離隔で手を打つ。ただし、バイオ燃料の試作品をよこしなさい。」

「いいぜ。1ヶ月後に持ってく。」

交渉成立。リゼットが去る背中を見ながら、俺は膝から崩れ落ちた。鼻血がドロドロ。リアが泣きながら抱きしめる。

「ユート様、無茶しすぎです! 死んじゃうよ……!」

「ハハ、大丈夫……まだ、死ねねえよ……」


---



その夜、俺は医者から最悪の宣告を受けた。

「王子殿下、このまま【物質変換】を使い続ければ、半年で命が尽きます。」

半年。たった半年。頭が真っ白になった。けど、リアの「ユート様を信じてます」って言葉が、俺を現実に引き戻す。

ガルドの裏切りで、貴族たちの不信もピーク。ガルディアはバイオ燃料を狙ってる。パラジウムの秘密も漏れそう。なのに、俺の体はもう……。

「くそっ、俺一人じゃ無理だ……でも、諦めたら終わりだ!」

現代知識をフル活用。バイオ燃料の試作を急がせ、国民に「資源革命」を呼びかける。すると、街の鍛冶屋、農民、子供までが「王子のために!」と動き出した。

「ユート様、みんなで国を守ります!」

リアの笑顔と、国民の声。俺の心に火が点いた。

「ガルディアも、裏切り者も、全部ぶち抜く。アルテアを大陸一の国にするんだ!」

命はあと半年。それでも、俺はボロ儲けで国を救う!



続く

さいごまで読んでいただきありがとうございました

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