裏切りと新たな圧力
ガルディアとの交渉で関税ゼロと技術提携を勝ち取った俺、ユート・フォン・アルテア。パラジウムの供給で国庫に金が入り、アルテアの国民はようやく食卓にパンが戻った。街には笑顔が溢れ、リアの「ユート様、すごいです!」ってキラキラした目が俺の心をちょっと癒してくれた。
でも、喜びは長く続かなかった。
「うっ……くそっ、またか……!」
自室の鏡の前で、鼻血が止まらない。【物質変換】の代償だ。毎回、体が内側から削られるような激痛。昨日なんて、小石をレアアースに変えたら一瞬意識が飛んだ。
「このままじゃ、マジで死ぬぞ……」
社畜時代は上司の無茶振りに耐えただけだったけど、今は国民全員の命が俺にかかってる。プレッシャーが重すぎる。夜、ベッドで目を閉じても、頭に響くのは神様(らしき何か)の声。
*「代償を払え。命を削れ。」*
「ふざけんなよ……俺、どこまで持つんだ?」
そこへ、ノックの音。メイドのリアが心配そうな顔で入ってきた。
「ユート様、また無理しましたね!? 顔、真っ青ですよ!」
「ハハ、大丈夫だって。ちょっと疲れただけ……」
嘘だ。体はボロボロ、心もギリギリ。リアの優しさが、逆に俺の弱さを突き刺す。彼女や国民のために、俺はまだ戦わなきゃいけないのに。
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翌朝、宰相のジジイが血相を変えて謁見の間に飛び込んできた。
「王子殿下、大変です! ガルディアが新たな要求を!」
「は? またかよ。関税ゼロで手を打っただろ?」
「それが……彼らはパラジウムの全生産権を要求してきました! さもなくば、アルテアの港を封鎖すると!」
港封鎖!? それじゃ輸出も輸入もストップ。アルテアは完全に孤立する。くそっ、ガルディアの貿易卿バルガス、俺を舐めやがって!
「よし、直接交渉だ。バルガスをここに呼べ。」
数日後、王都の謁見の間にバルガスが現れた。相変わらずのニヤケ顔。隣には、ガルディアの女魔術師リゼットがいる。鋭い目つきで俺を値踏みする姿に、背筋がゾクッとした。
「ユート王子、話は簡単だ。パラジウムの全生産権をガルディアに譲れ。さすれば、港封鎖はなしだ。」
バルガスの言葉に、貴族たちがザワつく。だが、俺は冷静に返す。
「全生産権? 笑わせんな。パラジウムは俺が作ってる。ガルディアにそんな権利ねえよ。」
リゼットがクスクス笑う。
「ふふ、面白い王子ね。でも、アルテアの港にガルディアの魔導艦が集結してるのよ。抵抗したら、灰になるだけだけど?」
魔導艦!? 魔法と科学が混ざったガルディアの最新兵器だと!? アルテアのボロい騎士団じゃ歯が立たねえ。
内心ビビりながら、俺は現代知識をフル回転。ガルディアの産業はパラジウムに依存してる。供給を握ってるのは俺だ。
「リゼットさんよ、魔導艦動かす燃料、リチウム使ってるよな? 俺がリチウム供給止めたら、どうなると思う?」
リゼットの目が一瞬揺らぐ。バルガスも「むっ」と唸った。よし、効いてる。
「港封鎖? いいぜ、やってみろ。けど、その前にガルディアの工場が全部止まる。どっちが先に死ぬかな?」
謁見の間が静まり返る。貴族たちはポカン、リアはハラハラした目で俺を見てる。バルガスが渋々口を開く。
「……ふん、ではこうしよう。パラジウムの半分を優先供給。代わりに、港封鎖は見送る。」
「半分は多すぎ。3割だ。それと、ガルディアの魔導技術の基礎資料をよこせ。」
「なに!? 魔導技術だと!?」
「嫌なら交渉決裂。リチウム、明日からゼロな。」
バルガスとリゼットが顔を見合わせ、渋々頷いた。交渉成立。だが、リゼットの「次は甘く見ないわよ」という囁きが耳に残った。くそっ、こいつ、ただの魔術師じゃねえな……。
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交渉を終え、部屋に戻った俺は倒れ込むようにベッドに沈んだ。鼻血がまたドバっと。
「ユート様! 医者を!」
リアが慌てて駆け寄るけど、俺は手を振る。
「いいよ……ちょっと休めば……」
でも、心は休まらねえ。ガルディアの圧力もキツいけど、国内もヤバい。貴族の一人、クロウ伯爵が最近コソコソ動いてる。さっきの謁見でも、俺をチラチラ見てた目が怪しい。
夜、リアが密かに教えてくれた。
「ユート様、クロウ伯爵がガルディアの使者と密会してるって噂が……。パラジウムの秘密を売ろうとしてるかも。」
「マジかよ……裏切り者だと!?」
クロウの野郎、俺が命削って作ったパラジウムで私腹を肥やそうってのか? 怒りが湧くけど、体はガタガタ。変換の代償で、最近はまともに眠れてもいない。
「俺、どこまで耐えられるんだ……? 国民、リア、みんなのために戦いたいけど……死にたくねえよ……」
一人で呟くと、涙がポロっと。社畜時代、誰かのために戦うなんて考えなかった。なのに、今は国中の期待が俺にのしかかる。
リアがそっと手を握ってきた。
「ユート様、一人じゃないです。私も、国民も、みんなユート様を信じてます。無理しないで……でも、絶対諦めないでください。」
その言葉に、胸が熱くなった。
「リア、ありがと。俺、負けねえ。クロウもガルディアも、全部ぶっ潰してやる。」
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翌日、俺はクロウの裏切りを水(見ず)に流したかったけど、放置は危険だ。現代知識を駆使して、クロウの屋敷に「盗聴魔法」を仕掛けるよう、宮廷魔術師に指示。証拠を掴み、クロウを公開裁判で追放した。貴族たちはビビって静かになり、国民の信頼はさらにアップ。
ガルディアとの取引も軌道に乗り、リチウムとパラジウムの供給で経済が回り始めた。けど、俺の体はもう限界ギリギリ。変換のたびに意識が薄れ、鏡には幽霊みたいな顔が映る。
それでも、バルコニーでリアと並んで街を見下ろすと、決意が湧いてきた。
「ガルディアの魔導艦だろうが、貴族の裏切りだろうが、全部ひっくり返してやる。アルテアを大陸一の国にするんだ!」
リアが微笑む。
「ユート様なら、絶対できます。私、信じてます。」
命を削るチート能力、裏切り者の影、ガルディアの策略――全部乗り越えて、俺はボロ儲けで国を救うぜ!
続く
最後まで読んでいただき有難うございます。引き続き次の回を楽しみにお待ちください。