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絶望の底、転生の代償

第一章:絶望の底、転生の代償


佐藤悠斗、29歳、元社畜。過労で倒れた次の瞬間、目を開けたら異世界の弱小国アルテアの王子、ユート・フォン・アルテアになってた。

「王子殿下! ガルディア帝国が鉄鉱石の関税を5倍に引き上げました! 輸出が止まり、国庫はあと1ヶ月で底をつきます!」

宰相の老人が脂汗を浮かべて叫ぶ。アルテアは鉄鉱石の輸出で食ってる国なのに、ガルディアの貿易圧力で経済は瀕死。国民は飢え、貴族は俺を「無能王子」と蔑む。内政はキツキツどころか、完全に詰み状態。

「はぁ……なんで俺がこんな目に?」

転生時に神様(らしき何か)から【物質変換】の能力を貰ったけど、使うたびに頭に響く警告が不気味だ。

*「変換には代償を。命を削る覚悟はあるか?」*

命を削る? 冗談だろ? でも、この国を救うにはこれしかねえ。試すしかねえよな……。


---



城の裏庭で、震える手で石ころを握る。イメージは高価なレアメタル、パラジウム。現代知識なら、これがガルディアでもバカ売れするのは知ってる。

「【物質変換】――パラジウム!」

光が弾け、石が白銀の塊に変わった。やった! でもその瞬間、胸を抉る激痛と目眩。鼻血がドバっと流れ、膝から崩れ落ちる。

「くそっ……なんだ、この痛み……!」

頭に響く声。*「代償だ。変換の規模に比例して、命を削る。」*

試しにもう一個変換したら、意識がブラックアウト。気付いたらメイドのリアに介抱されてた。

「王子殿下! 死ぬかと思いました! 何なんですか、この血!?」

リアの泣きそうな顔に、俺は無理やり笑う。

「大丈夫……これ、パラジウム。売れば国庫が助かる……はず。」

でも、心の底では恐怖が渦巻いてた。この能力、使いすぎたらマジで死ぬ。どうする? 国民の命と俺の命、天秤にかけるのか? 社畜時代だって、こんなプレッシャーなかったぞ。


---


数日後、俺が変換したパラジウムを市場に流すと、ガルディアの商人が飛びついてきた。国庫に金が入り、食料を買い込んで一時的に飢えをしのげた。

だが、ガルディアは黙っちゃいない。使者が王都に乗り込んできた。

「アルテア王子、ユート殿下。パラジウムの独占供給を要求する。さもなければ、関税を10倍に引き上げる。」

使者の男、ガルディアの貿易卿バルガスは、ニヤニヤしながら高圧的に迫る。くそっ、こいつの態度、ムカつく! でも、関税10倍じゃ鉄鉱石輸出は完全に死ぬ。国が終わる。

「独占供給? ふざけんな。パラジウムは俺が作ったんだ。値をつり上げてやるよ。」

内心ビビりながら、俺は強気に返す。バルガスが目を細める。

「ほう、小国の王子が生意気だな。ガルディアの軍事力を思い知らせてやろうか?」

その言葉に、俺の心臓がバクバク。軍事力? マジかよ、戦争まで仕掛けてくる気か? でも、ここで引いたらアルテアは奴隷国家だ。

「……いいぜ、交渉しよう。パラジウムを安く売る代わりに、鉄鉱石の関税をゼロにしろ。」

バルガスが一瞬たじろぐ。よし、こいつ動揺してる。現代知識をフル活用だ。ガルディアの産業はパラジウム依存度が高い。こっちが供給を握れば、交渉の主導権は俺にある。

「ふん、関税ゼロは無理だ。せいぜい半分だな。」

「じゃあパラジウムも半分な。次の供給は3ヶ月後でいいか?」

「なっ!? 3ヶ月だと!? ガルディアの工場が止まるぞ!」

「知らねえよ。関税ゼロ、プラス技術提携。アルテアにガルディアの精錬技術を教えろ。それなら毎月供給してやる。」

バルガスは顔を真っ赤にして黙り込んだ。俺も冷や汗ダラダラ。能力の代償で体はボロボロだし、こんな交渉、社畜時代じゃ考えられねえ。

「……わかった。関税ゼロと技術提携を検討しよう。だが、供給量は倍だ。」

「1.5倍ならいいぜ。契約書、用意しろよ。」

交渉成立。バルガスが渋々退室するのを見ながら、俺は椅子にへたり込んだ。リアが心配そうに駆け寄る。

「ユート様、無茶しすぎです! 体が……!」

「ハハ、大丈夫……多分。」

鼻血がまたポタポタ。くそっ、こんな体でどこまで戦えるんだ?


---



その夜、俺は自室で頭を抱えた。パラジウムの供給で国庫は少し回復したが、能力の代償で体は限界寸前。変換のたびに意識が薄れ、鏡を見れば顔は真っ青。貴族たちは「もっと金を!」と圧力をかけ、国民は「王子様、頼むよ」と期待を寄せる。

「俺、ほんとにこの国救えるのか……? 死ぬんじゃねえか……?」

社畜時代、俺は上司の無茶振りに耐えるだけだった。誰かを救うなんて考えたこともねえ。なのに、今は国民全員の命が俺にかかってる。重すぎる。

そこへ、リアがそっと入ってきた。

「ユート様、国民はあなたを信じています。私もです。でも……無理して死なないでください。私、ユート様がいない世界なんて嫌です。」

その言葉に、胸が締め付けられた。社畜時代、誰も俺を気遣ってくれなかった。なのに、この子は……。

「リア、ありがと。俺、諦めねえよ。けど、死なねえように頑張る。」

俺は決めた。【物質変換】の代償はキツいけど、現代知識と交渉で補う。ゴミからバイオ燃料、砂からレアアースを作り、ガルディアとの取引を有利に進める。貴族の陰謀やスパイの動きも出てきたけど、全部ぶっ潰してやる。

「ガルディアがどんな圧力をかけてきても、俺がこの国を守る。ボロ儲けして、みんなを笑顔にするんだ。」


---



数ヶ月後、アルテアは変わり始めた。パラジウムと新素材の取引で経済が回り、ガルディアとの交渉で関税ゼロを勝ち取った。国民の食卓に笑顔が戻り、リアの笑顔も輝いてる。

でも、俺の体はボロボロ。変換の代償で寿命が削れてる気がする。それでも、バルコニーでパラジウムの輝きを見ながら、俺は拳を握った。

「まだ終わらねえ。ガルディアを経済でひっくり返して、アルテアを大陸一の国にする!」

このチート人生、簡単じゃねえ。でも、リアや国民のために、俺は戦い続ける。



続く



最後まで読んでいただき有難うございます。次は第二章を楽しみにお待ちください。

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