9 マーシャ・ハル・ミレーヌ
土日に更新できずすみません。全く筆が進みませんでした。
パーティーの翌日、私たちネーデル家は領地へ戻るため朝早くから馬車に乗っていた。
なぜか客人を乗せて。
「乗せていただき感謝いたしますわ、メアリさん」
「ネーデル領に向かわれるのでしたら断る理由はありませんからね。まさかパーティーからそのまま来るとは思っていませんでしたが⋯」
元々パーティーのあとに、ミレーヌ家がネーデル領に来るというのは決まっていた。
だが今この馬車に乗っているのはマーシャだけなのだ。他のミレーヌ家の人間は一度ミレーヌ領へ戻るんだそうだ。
ミレーヌ領はネーデル領よりも王都に近く、商人などはネーデル領の前にミレーヌ領に寄ることが多い。
マーシャ以外のミレーヌ家も明日にはネーデル領に着くだろう。
「わざわざマーシャさんだけ先にネーデル領に来るのはなぜなんですか?」
「私がそうお願いしたのですわ。ネーデル侯爵も快諾してくださりましたわ」
「そ、そうですか⋯」
今この馬車には私とマーシャしか居ない。お母様とお父様は前を走る馬車に乗っている。
「学園に入る前にはあなたとは仲良くなっておきたいのです」
「はぁ⋯」
別に構わないが⋯何をそんなに急いでいるのか
「少し、私の身の上話をしてもよろしくて?」
「どうぞ」
マーシャが話したのは自身の家での扱いだった。
代々優秀な魔法師を輩出し、魔法師の名家として侯爵にまで上り詰めたミレーヌ家。
そんなミレーヌ家に生まれたマーシャには魔法の才が無かった。
ミレーヌ家の人間がそれを許すはずもなく、マーシャは蔑まれてきたらしい。
魔術学園には見せしめのように入学させられるのだとか。
「私は見返してやりたいのです。そのためにあなたに協力していただきたく思っていますの」
「しかし、明日にはミレーヌ家の方が来ると思いますが⋯」
「問題ありませんわ。私には関心がありませんもの。ネーデル侯爵の屋敷で寝泊まりしても大丈夫ですわ」
うーむ。なるほど⋯⋯
「寝泊まりができるかどうかはお父様に聞くことにしますが⋯しかし協力と言ってもどうやってでしょうか」
「魔法の訓練をつけてほしいのです。あなたはとても強い魔法師でしょう?」
ふむ。まぁ滞在期間もひと月あるからできることは多いか。
だがその前にこっちに対処しないとな。
「お話はわかりました。とりあえず、お受けいたします。細かいことは少し待ってください」
私はそう言いながら馬車のドアを開ける。どうやらお父様とお母様に引き寄せられてるようだ。魔力に寄っていってるのか?
「なななな、何をしていますの!?」
「マーシャさん。魔力に引き寄せられる空の魔物って何かわかりますか?」
「え?その特徴でしたらワイバーンか下等の竜種ですわ」
なるほど。だとしたらこの魔力は竜種だな。
まだ距離があるが⋯あ、お母様がドアを開けた。気づいたのか。
お母様が言ったのか馬車が止まった。
「お母様、私が対処します。マーシャさんをお願いします」
「分かったわ。気をつけてね」
「はい」
ギースにもマーシャを守るように言ったが一応お母様にも頼み、私は森へ駆けた。
竜はまだ距離があるが、音速に近い速度で迫っている。すぐに距離もなくなるだろう。
ここは一つマーシャに目指すべき場所を見せておくか。
普段は一切展開していない魔力領域を一気に広げる。半径5kmを支配した。竜も私の存在に気づいたようだ。こっちに進路を変えた。
だが
「無意味です」
竜というのは翼だけでは空を飛んでおらず、魔力を使って飛んでいる。その魔力には術式と言ったものは無いので、魔力支配してしまえば⋯
ドォン!!
竜の巨体が森に墜落した。私はそれに合わせて浮遊し森の上に出る。
墜落した竜が恨めしそうに私を見据える。
「何もできないでしょう」
竜が口を開ける。ブレスの前行動だ。
口内に魔力が集まる。
「あなたは何もできません。何もできずに死ぬんです」
ブレスの術式を即座に解析し、消す。
竜はブレスが霧散したことに困惑しているようだ。何度も発動しようとするが、そのたびに私が消す。
「時間をかけるとまた野宿する羽目になるので終わりにしましょうか」
雷鳴が轟く。基本五属性だというのに適正者が光よりも少ない属性⋯
「『ライトニング』」
青白い閃光が竜を貫く。
雷属性中級魔法『ライトニング』
「⋯⋯なぜこのような場所に竜が現れたのか。気になりますが今は後回しで良いでしょう」
私は踵を返し馬車に戻る。
馬車の方はすぐに動けるようにされていた。
時間がかかるかもとは微塵も思われていないのか。
「おかえり。すぐだったわね」
「まぁ⋯」
「綺麗な魔法だったわ」
「ありがとうございます」
軽くお母様と会話をし、私の馬車に戻る。
「な、なんですの?あの魔法は⋯」
「何と言われましても⋯雷魔法ですよ」
「ですよじゃありませんわよ!雷魔法を使える人がどれだけ少ないと思っていますの!?」
そう声を上げられてもなぁ。術式さえ理解してしまえば魔法は何だって使える。そういうものだ。
「馬車が動きますよ」
ずっと立っているマーシャに座るように促す。
なんとも言えない表情になりつつも彼女は座った。
「それで⋯話の続きなのですが⋯」
「魔法の訓練は構いませんよ。一ヶ月しか無いのであまりたいそれたことは出来ないと思いますが⋯」
「大丈夫ですわ。それに一ヶ月でもありませんわ」
どういう意味だ⋯
「先程も言いましたが、あの家の者は一部を除いて私には関心がありませんもの。学園までの二年間私が何をしようと何も言われませんわ」
⋯⋯つまり二年間うちにいるとでも言うのか?
それは少し困るな⋯私の時間が減る。
これからの二年を案じていると馬車のドアが叩かれた。
動いているのに叩かれたということは⋯
「どうかしましたか?」
「どうもこの先に商隊が滞留してるみたいでな。さっきの竜と関係があるかもしれないから嬢ちゃんに伝えてくれと夫人から」
ギースは器用に馬車の速度に合わせて並走しながらお母様からの伝言を伝えてきた。
「あの男⋯なんですの?侯爵家の娘になんて言い草⋯」
「私が許可しているんですよ」
普通の貴族ならそういう反応するだろうな。
「私の訓練相手になる予定ですから、これからよく会う人になりますよ」
「あ、あの男はあなたの専属なんですの!?」
「はい」
信じられないといった顔だな。中身が元々貴族じゃないんだから仕方ないだろう。
しばらくすると馬車が速度を落とした。
「滞留している商隊に追いついたんですか?」
「えぇ⋯今ギース殿が先頭まで行き、滞留している原因を探りに行かれましたが⋯」
お母様、この帰り道でギースを好きなように使っているな⋯
ちなみにだがスーザ兄上は急な仕事が舞い込み、ネーデル領に帰れないことが決定した。
お労しや兄上。
しかし街道のこんなところで滞留しているというのも不思議だ。
ネーデル領まであと五時間ほどの場所だ。商隊なら野営せずに領まで行き切るのが普通じゃないだろうか。
「なんだか不安になりますわね⋯」
マーシャがそういう。魔力探知をかなり広範囲にしているが、現状これといったものはない。それに原因も分かった。
何故かこんなところで検問をしている。それもネーデルとは関係のない奴らが、だ。
ギースもちょうど戻ってきてその旨をお母様に伝えている。お母様が元冒険者ということもあり気が合うのだろうか。
「ちょっと私降りてお母様と話してきますね」
完全に渋滞にハマって止まった馬車から降り、お母様の乗る馬車に向かう。
「お母様、どうしますか?」
「あらメアリ。今ギースと一緒にお父さんが行ったわ。それで解決すれば良いのだけど⋯」
街道なので誰の領地というのはないが、強いて言えば国の領地で、検問するには国の許可が要るはずだ。無許可であれば罰せられる。
そうこうしているとお父様達が帰ってきた。検問していたところに居た人を何名か引き連れて。
「どうやらちゃんと許可を得ているみたいでな⋯優先して受けさせてくれることになった」
まぁ⋯それでもいいか
そんなこと思っているとマーシャから無茶苦茶視線が飛んできていた。どうしたのだろうか。
仕方ないので誰にも見えない速度で自分の馬車に戻る。
「どうしたんですか。必死の形相で」
「どうしたじゃありませんわ!あの兵士、ミレーヌ家の兵士ですわ!」
ミレーヌ家の兵士がこんなところで検問?妙だな。
「あなたを捕まえに来た⋯とか?」
「そんなはずありませんわ⋯それに一応私がネーデル領に二年居るつもりなのは伝えていますわ」
だがこんなところでミレーヌ家が検問するなんて明らかにマーシャが目的だとしか思えないが⋯
「仕方ありませんね⋯『インビジブル』」
マーシャに魔法をかける。マーシャがきょとんとしているがこの魔法、使われた側はあまり自覚出来ないのが欠点だ。
「透明化の魔法です。ただし音は消せないので声を出さないように。私は検問の目的を聞いてきます」
マーシャはコクコクと頷いた。
私は馬車から降り、お父様たちの馬車を調べているミレーヌ家の兵士に声をかける。
「すみません、少しよろしいですか?」
「ん?あぁネーデル家のご令嬢でしたか。はい構いませんよ」
「この検問の目的をお伺いしても?」
「実はミレーヌ家がパーティーのため王都へ出払ってる間に家宝が盗まれたんですよ。それでミレーヌ領への街道ももちろん、展開が間に合うだけの全ての街道で検問をしているんです」
最低限の警備とかしていなかったのか?
「そういえばご帯同されているはずのマーシャ様が見えないですが⋯」
「別にマーシャさんを捕まえに来たとかそういったことではないんですね?」
「え?いやいやそんなのではありませんよ」
「そうですか」
マーシャの警戒のし過ぎか。彼は嘘はついていないしな。
馬車に戻りインビジブルを解除する。
「どうやらあなたを捕まえに来たわけではないそうですよ。家宝が盗まれたそうで」
「か、家宝が盗まれた?」
「えぇ。そう言っていました」
そう言うとマーシャはブツブツと考え込み始めた。そんなに変な家宝なのか?
「⋯⋯ありえませんわ」
小さい声でそんなことを言った。ありえないってどういうことなんだ
「ちょっと話を聞いてきますわ!」
マーシャが馬車を飛び出していった。私も後に続くことにした。
ミレーヌ家の家宝というのは剣で、使用者を選ぶんだそうだ。
そのため盗むことはほぼ不可能とのこと。
その剣には大きな力が秘められており、使用可能な者が使えば国一つが滅ぶと言われてるそうだ。
そのためミレーヌ家は必死になって探しているということだ。
正直あまり関係が無いので巻き込まないでくれと思う。
検問はつつがなく終わり、私たちは渋滞する商隊の横を通り抜けた。
「私にはできることがありませんわね⋯」
「一年ぐらいついて来れればあなたが見つけることが可能かもしれませんね」
「え?」
実を言うとその剣らしき魔力は補足している。だが解放されている素振りがないので捕まえる気は無い。
「⋯⋯意地でもついていって見せますわ」
「その意気です」
しっかりとした目標を持っておいたほうが続くだろう。見返してやりたい、というのは目標にするにはいささか漠然的だ。
検問を抜けた後、馬車は速度を上げ、なんとかネーデル領に到着することが出来た。
マーシャは早速お父様と話をつけに行ってしまった。
これから学園入学までの二年間、忙しくなりそうだ。
記憶力が残念なのでもしかしたら矛盾が発生してるかもしれません。
平日はそれなりに更新すると思います。
土日は…わかりません。




