6 野営
できる限り更新頻度は高くしていきたいと思っております。第6話投稿です
「殿下が来られる。準備するんだ。」
野営のため街道から外れて五分、王家一行も到着したらしい。
一行といっても第二王子殿下しかいないが。
「ネーデル侯爵、野営の誘いを受けてくれて感謝する。私は初めてだから不安でな。」
「いえ、むしろお誘い頂けて光栄です。殿下のご助力となるならば誇らしいことです。」
王族を相手にするというのは面倒なのだ。あまり関わりたくない。跪いてはいるが。
「皆さん顔を上げてほしい。公の場ではないのだ。堅苦しいことはなしにしよう。」
殿下のその言葉でお父様も姿勢を崩す。
「街道での一件は聞いている。あとで詳細を聞かせてほしい。それと、我々からも見えたのだが、あの無数の魔法陣を展開したのは誰だろうか。ネーデル侯爵がそのような懐刀を持っているとは知らなかった。興味がある。」
威圧のために無駄に多く大きくしたのが仇になった。見えていたらしい。
お父様が非常に答えにくいといった顔をしている。自分の子供に戦わせたというのは聞こえが悪い。
私から申し出たほうがいいな。
「殿下、お初にお目にかかります。ネーデル侯爵の娘、メアリ・ハル・ネーデルです。殿下のおっしゃった魔法陣は私が出したものです。」
カーテシーをして殿下に挨拶をする。
「君がメアリ嬢か。ネーデル侯爵からよく聞いているよ。君があれを出したのか⋯私と同い年だと言うのにすごいものだ。」
「大したことではありません。9割方見た目だけのものですから。」
嘘ではない。9割方は見た目だけで魔法を発動することのできない状態だった。
「それでもだろう。あれだけの数の陣の展開は規格外だ。」
この世界、多重展開の概念はあるが多くて4つぐらいだ。
「私の娘は天才です。それぐらいは朝飯前でしょう。」
「ははっ。変わらないな侯爵殿は。」
朝飯前なのは否定しないが過度な期待はやめてほしいものだ。
「じきに日も暮れる。野営の準備を進めよう。」
殿下がそう言いお父様もお母様も野営の準備に取り掛かり始めた。
「そうだメアリ嬢。紹介が遅れたが私はルーク・ハル・マーラカルトだ。ルークで構わない。二年後には学友となるのだからな。」
「わかりましたルーク殿下。」
そう返し、私はお母様の手伝いをすることにした。
野営慣れしている兵士も居るため準備は滞りなく完了した。
魔法が使えるし水でも出すかと思っていたら、兵士に先を越されていて仕事がなくなった。
「なるほど⋯本来は私を狙っていたと」
襲撃について、ギース本人から計画を話してもらった。
「⋯ギース、君に余罪があるのかどうかわからないが、もし君が誰からの依頼なのかを教えてくれれば、多少なりとも罪は軽くなるだろう。」
「⋯⋯⋯⋯⋯」
依頼者が居るのは間違いない。だがギースは答えないだろう。
「⋯殿下、よろしいでしょうか。」
「メアリ嬢、なにか?」
「裏に今回の件の糸を引いている人物が居るのは間違いありませんが、ギースがそれに答えることはないでしょう。」
「なにか事情がある、と。」
「はい」
たとえば大事な人を人質にされている、とか。
「殿下、ギースの処遇についてなのですが⋯」
殿下とギースの処遇について話した後、私はネーデル家の天幕に戻っていた。
「それにしてもメアリ、すごい戦いだったわね。」
お母様がそういう。見ていたのか。
「馬車の中から覗いていたのだけど、まるで瞬間移動みたいなことをしたり、魔法を同時に8つも出したり⋯すごかったわ。」
お母様は若い頃、魔法職で冒険者をしていた。だから8つ同時が規格外な事は知っている。
「時々、思うの。メアリは本当に私たちの子供なのかって。親としてはこんなこと思ってしまうのはだめなのだけれど。」
間違ってはいない。私が二人の子供かと言われたら否、だが⋯
「お母様、私はお父様とお母様の子供です。二人の子供で良かったと思っています。」
「メアリ⋯」
二人の才からすれば私は突然変異どころでは無いのだが、それでも私としてはこの二人の子供だ。
「そうね。あなたは私たちの大事な娘。それ以上でもそれ以下でもないわ。」
お母様とそんな会話をしていると外が騒がしい。魔物でも来たか?そう思い魔力探知をしてみると、何人かの兵士に囲まれた覚えのある魔力があった。
「なにか揉めてるみたいですね」
「なにかしら?見に行きましょうか」
お母様と一緒に天幕から出て、揉めているところに向かう。
対応しているのは第二王子の近衛だった。それならば仕方ないか。殿下とお父様は少し離れたところに居る。
「だからー僕はネーデル家の人間だってー!」
「それを証明するものがないのにそう言われても困る」
ニーシャ兄上の声が聞こえた。何やってるんだ⋯
「行きましょうか、お母様」
「そうね⋯」
お母様は苦笑いする。
「あー!お母様!メアリ!」
ニーシャ兄上に見つかった。いきなり大声を出すから近衛がびっくりしている。
「すみませんね近衛の皆さん⋯」
「御子息で?」
「はい。三男のニーシャです。」
「そうでしたか⋯では隣にいるもう一人の男も?」
近衛が邪魔で見えていなかったがニーシャ兄上とは別にもう一人いる。
「スーザじゃない。あの子も証明できるものを持ってなかったのですか?」
「はい⋯」
「あらあら⋯」
さすがのお母様も少し呆れている。
「あとは大丈夫ですから、近衛の皆さんはお仕事を続けてください。」
「それでは。」
集まっていた近衛はすぐに定位置に戻った。
「ニーシャ、スーザ、あなた達何やってるのよ⋯」
「ご、ごめんなさい。急いで出てきたから忘れてきちゃった。」
「スーザ、あなたも?」
「⋯⋯すぐに見つからず⋯ニーシャに引きずられた」
「そう⋯」
おそらく予定の時間に王都に着かなかったから心配で飛び出してきたんだろう。でもなんでスーザ兄上まで引きずられてきたのか。
「スーザと一緒に出迎えようとしてたんだけど、なかなか来ないからなにかあったんじゃないかと思って飛び出してきちゃった。」
「⋯⋯一緒に居たから引きずられるようにここまで」
おいたわしやスーザ兄上。
「それで、こんなところで野営ということは森でなにかあったんだよね?」
ニーシャ兄上とスーザ兄上に森で受けた襲撃について話した。
「それで?そのギースとかいうやつはどこ?」
「落ち着いてくださいニーシャ兄上。そうやって怒ってくださるのは嬉しいですが、今ここでギースに死なれるわけにはいかないんですから。」
「⋯⋯ニーシャ、気持ちは分かる。が、メアリが雇うと言っているし、処遇を決めるのは王家だろう。俺達が手を下せばそれは私刑でしかない。」
「そのとおりよ。王都に使いは出したから、王都に着けばすぐに処遇は決まると思うわ。」
今にも飛び出しそうなニーシャ兄上を三人で止める。
「⋯⋯メアリ」
「はい、なんでしょうかスーザ兄上」
「⋯⋯久しぶり、だな。大きくなったな。」
「はい、お久しぶりです。六年も経てば大きくなりますよ」
「⋯⋯六年、か。そんなに経ってたのか」
スーザ兄上、ずっと研究塔に籠もってるのか?
「研究もいいけれど、たまには家に帰ってきてくれると嬉しいわ」
「⋯⋯今回のパーティー、それが終わったら帰りの馬車に便乗しようと思っている。」
領地へ帰るときにはスーザ兄上と一緒ということか。
「今晩はここで夜を明かしますか?」
「そうしようかな。」
「⋯⋯そうさせてもらいたい」
なんか賑やかな野営になったものだ。他の世界での野営でもここまで賑やかな野営はなかったな。
兄上たちは殿下へ挨拶をしてくるというので、私たちは天幕へ戻ることにした。
夜も更けつつあるので、明日に備え眠ることにした。
「こうやって隣り合って寝るのは初めてね」
お母様がそういう。確かに初めてかもしれない。
「あなたは小さい頃からどこか大人びていて、一人でも問題なく過ごせたから⋯」
まぁ本当は──歳だからな。
「少し、寂しかったのよ。あ、別にあなたが悪いわけじゃないのよ?ちょっとした私のわがままよ。」
「⋯王都に住むようになったら、たまに一緒に寝ますか?」
学園に入学する二年後からは王都で暮らすことになっている。お母様も私と共に王都で暮す予定だ。
「あなたがいいのなら⋯お願いしちゃおうかしら。普通逆ね」
私からしたら圧倒的年下だから別に何も思わない。
「今日はあなたも疲れたでしょう。おやすみ、メアリ」
「はい、おやすみなさい。お母様」
野営したために明日、王都に着いたその日にパーティーだ。今日は寝ることにしよう。
筆が乗らないと約3000文字程度になってしまいます。
わりとネットミームなどはちょくちょく入れるつもりです。




